余裕があればで終わらせないために

――目的について質問します。先生によっては、創造的思考力が大切なことには合意しているのですが、まずは授業で「ここまではとにかく終わらせる」というのが大前提になっていて、そのうえで「余裕があれば」創造的思考力の育成にも取り組みましょうというかたちになりがちのようです。

レズニック氏:確かに、クリエイティブ・ラーニングを現在の学びに追加されるものとして捉える傾向はあるでしょう。現在の学びとクリエイティブ・ラーニングを分けて考える人に時々出会いますから。そうではなく、通常の学びのプロセスそのものがクリエイティブ・ラーニングになるべきです。

Scratchは創造的に学ぶためのツールだ(画像)
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 例えば、算数を学ぶとき、変数を学んでから、クリエイティブ・ラーニングで作品をつくろうとする先生がよくいます。そうではなく、クリエイティブ・ラーニングでの作品づくりを通して、変数というコンセプトを学ぶのです。こうすることにより、自分の好きなこと、興味のあることにつながったかたちで学ぶことができ、コンセプトをより深く理解することができます。

 日本では教科のなかにプログラミングが取り入れられますね。Scratchがいろんな教科で活用されるのは、とてもよいことです。そのうえで、子どもたちにとって意味のあるプロジェクトで使われるようになれば、よりよいでしょう。単に図形を描くことだけにScratchが使われるのだとしたら、子どもたちの興味をひくことは難しいと思います。

 その代わりに、2匹の動物が競争するゲームを作るのはどうでしょうか。ゲームを作るためには、動物が動くスピートを決めたり、計算したりする必要があり、算数の要素が入ってきます。これにより、子どもたちにとって意味のあるかたちで、プログラミングのプロジェクトを教科に取り入れることができます。

 こうしたやり方には、先生にとってのメリットもあります。子どもたちのやる気を引き出すための労力を減らすことができるのです。その分の労力を、子どもたちをサポートする方に向けることができるわけです。

 実践方法にも関係しますが、もう1つの例を挙げましょう。子どもたちに言語を教えるとき、文法や発音の仕方、綴り(スペル)を教えるとします。ドリルやテストで、その知識が身に付いたかどうかを確認できるでしょう。でも、文法や発音や綴りを身に付けただけでは、自分の考えを文章できちんと表現したり、コミュニケーションしたりすることは難しい。文法や発音、綴りを覚えるのは、もちろん大切なことです。そして、自分の考えを表現したり、コミュニケーションしたりすることも大事であり、わたしは子どもたちがプログラミングを通じてこうした能力を高めてほしいのです。