小学校で「創造的な学び」を行うには

――日本では2020年から小学校においてプログラミングが必修化され、Scratchもより幅広く活用される見通しです。Scratchを活用するうえで大切な要素として、今回のScratch Conferenceでは、レズニック教授の著書『ライフロング・キンダーガーテン』で述べられていた、創造的思考力を育む「4つのP」(編注1)を強調されていました。この「4つのP」を学校教育の現場、言い換えれば小学校で実現するためには、どうしたらよいでしょうか。

編注1:4つのPとは、子どもたちが創造的な学習体験を得て「創造的思考者(Creative Thinker)」として成長するために、レズニック教授の研究グループが提唱する4つの基本原則。プロジェクト(Projects)、情熱(Passion)、仲間(Peers)、遊び(Play)からなり、「情熱に基づくプロジェクトに、仲間と共に遊び心に満たされながら取り組むことを支援すること」(『ライフロング・キンダーガーテン』から引用)である。

レズニック氏:4つのPは、「クリエイティブ・ラーニング(編注2)」を採り入れていくための原則、ガイドラインとしてとても重要だと考えています。まず、クリエイティブ・ラーニングの重要性からお話ししましょう。

編注2:創造的な学びのことで、これを促進するためにレズニック教授らは、発想(Imagine)、創作(Creative)、遊び(Play)、共有(Share)、振り返り(Reflect)を繰り返すスパイラル(らせん状の学習プロセス)を提唱している。

Scratchは創造的に学ぶためのツールだ(画像)
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 今、世の中の変化するスピートはとても速くなっています。変化が素早い社会で生きていくためには、創造的に考えて柔軟に対応していく能力、言い換えれば「創造的思考力(Creative Thinking)」がとても大事だと考えています。すでに定まっている事実や考え方を子どもたちに紹介していくだけでは、これからの時代を生き抜くための準備にはならないのです。

 この創造的思考力を伸ばすためには、クリエイティブ・ラーニングが有効であり、そのための原則あるいはガイドラインとしてとても重要なのが4つのPなのです。

 この4つのPは子どもたちがクリエイティブに考えられるようになるためのガイドラインだと思っています。興味を持ったプロジェクトに、友達と一緒に楽しく取り組む――これにより、創造的思考力が身に付くと考えています。

――4つのPの重要性は、ワークショップを実践されている方々、例えば、このScratch Conferenceに参加している人々には理解されると思います。ただし、これから小学校で幅広く実践されるかというと、難しい面があるのではないでしょうか。これについてはどのようにお考えですか。

レズニック氏:4つのPの実践に向けては、2つのポイントがあると考えています。1つは「目的の共有」、もう1つは「実践方法」です。

 特に、1つめとなる目的の共有は重要です。クリエイティブ・ラーニングの目的を、関係者の皆さんに理解してもらうことが大事です。すべての関係者が、創造的思考の重要性を理解し、それを身に付けてもらうことに賛同する。これができて初めて、その実践方法にきちんと取り組むことができます。逆にいえば、目的が共有できていなければ、実践方法を考えても意味がありません。実践方法がうまくいかない大きな理由は、実は目的の共有ができていないことが多いのです。

 2つめとなる実践方法については、学校の仕組みが障害になっていると思います。例えば、子どもたちにプロジェクトに取り組んでもらおうとしても、50分程度の1時限では難しい場合があります。時限や授業時数などといった学校の仕組みが、実践に向けての制限になっているのが現状でしょう。