9月21~24日まで、千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2017。国内外のゲーム関連企業が出展するアジア最大級の同イベントは、ゲーム業界の今を占う上でも重要なイベントだ。長年、ゲームショウを見てきたライター3人が、それぞれの視点で今年のゲームショウを総括する。トップバッターは、野安ゆきお氏。

 東京ゲームショウ2017で、もっとも気になったのは、例年と比べ、小さな子どもをつれたファミリー層の来場者が減っていたことだ。

 今年、実際に会場に足を運んだ人は、小さな子どもたちが周囲にたくさんいて、この子どもたちにぶつからないように注意しなければならなかった――という経験を、ほとんどしなかったと思うのだが、いかがだろう? 一般公開日の初日が悪天候だった影響もあるだろうが、今年は、明らかにファミリー層が少なかった。

 とはいえ、これは、けして悪いことではない。1996年から開催されてきたゲームショウは、もともと若く熱心なゲームファンたちが多く集まるイベントだった。しかし時代とともに来場者は多彩になり、家族連れの姿も見られるようになった。とりわけ近年は、スマートフォン向けアプリの出展も増えたためか、さほど熱心なゲームファンでない、ごく普通のファミリー層が増加。幅広い来場者が訪れるイベントになっていたという経緯がある。

 そのせいか、ここ数年は「とにかく幅広いお客様に楽しんでもらおう! そのためには大量の販促用グッズを配ろう! 来場者にはいろいろなプレゼントを用意しよう!」といった方向の催しが目立っていた気がする。

 しかし今年は、各社ともその姿勢を控えめにし、ゲームショウ本来の形であるゲームファンに新作をアピールするスタイルに戻してきたように感じた。各社のブースには話題の新作タイトルの試遊台が並び、「とにかく新作ゲームを体験してくださいね!」と叫ぶかのような、ゲームショウ黎明期にも似た空気が漂う展示会になったのである。ファミリー層の姿こそ減ったものの、昔からゲーム市場を支えてきた人たち(現役ゲーマー、そして古参のゲーム愛好者たち)が、いち早く最新ゲームを堪能できる“質実剛健”なイベントになった。これが、今年のゲームショウの最大の特徴といっていい。

今年の東京ゲームショウは、質実剛健という言葉が似合う展示会だった。ゲームファンは大満足(写真/中村宏)
今年の東京ゲームショウは、質実剛健という言葉が似合う展示会だった。ゲームファンは大満足(写真/中村宏)
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任天堂「Switch」を呼び水にした、据え置きゲーム機の復権

 そんな“質実剛健”を象徴していたのが、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのPlayStation(PS)ブースだろう。PS4の大作ソフトをズラリと並べ、さらにはPS VRのタイトルも拡充。「能書きは不要。とにかく高性能なゲーム機による映像を堪能してください」と主張するかのようなブース構成だった。携帯ゲーム機であるPS Vitaの存在感すら、ほとんど感じられないものになっていた。

現在の王者として、大量のソフトを用意してきたPlayStationブース。質・量ともに存在感は圧倒的だった(写真/赤坂麻実)
現在の王者として、大量のソフトを用意してきたPlayStationブース。質・量ともに存在感は圧倒的だった(写真/赤坂麻実)
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 これは他社ブースも同様だ。多くのメーカーが、据え置きゲーム機で大画面を楽しむタイプのゲームを多く並べていた。去年までは多くのタイトルが用意されていたニンテンドー3DS用タイトルの展示には力を入れず、スマホゲームコーナーも、極めて小さくなっていた。

 このような変化をもたらした要因のひとつが、Nintendo Switchの存在だろう。3月に発売されて以降、半年にわたって全世界で極度の品薄状態が続くという人気ぶり。任天堂が7月に公表した決算短信によると、全世界出荷台数は470万台に達した。その結果、2017年という年は、近年では珍しいほど、ゲームファンが据え置きゲーム機に注目する1年になったといっていい。

 だからこそ、PS陣営としては、既に全世界6000万台の普及を達成しているPS4用のタイトルを大々的に押し出したのかもしれない。一般的な話題はNintendo Switchに持っていかれているものの、販売台数を見ても、現在の“王者”はPS4。ゲームファン向けの“硬派”なブース構成で、Nintendo Switchという最強の挑戦者を正面から受けて立った。そして他のメーカーも、歩調を合わせるように据え置きゲーム機用ソフトの展示に注力していたように思われる。

VRコーナーでは、未来の勝ち組の座が激しく争われた

 Nintendo SwitchやPS4と同様に、近年、話題を集めているのがVR(仮想現実)だ。率直に言って、VRが家庭用ゲーム機の1ジャンルとして普及するには、まだ時間がかかるだろう。一般家庭に広がるためには、まだまだ値段が下がる必要があるし、誰もが楽しめる「VRならではの傑作ソフト」も、まだ登場する気配を感じられない。

 とはいえ、いずれ到来する「VRが大ヒットする時代」を見据えて、各社ともにさまざまなチャレンジをしている様子が、今年のゲームショウでは確認できた。とりわけ「VR/ARコーナー」と呼ばれるエリアでは、VR黎明期ならではの、野心と熱気に満ちた展示が立ち並んだ。近い将来、ここから次世代のデジタル・エンタテインメントの勝ち組が登場する――そんなワクワクする未来を感じられたのは、今年のゲームショウの収穫のひとつである。

今年のゲームショウには、多彩なVR用タイトルが展示されていた。この中に、未来の勝者がいる予感あり(写真/野安ゆきお)
今年のゲームショウには、多彩なVR用タイトルが展示されていた。この中に、未来の勝者がいる予感あり(写真/野安ゆきお)
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(文/野安ゆきお)

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