時間的な厚みがゲームを“文化”にする
一方で、縦の広がりというのは時間的な厚みを意味する。東京ゲームショウの開催直前にはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から「プレイステーション クラシック」が発表された。過去のゲーム機のミニチュア版に代表作を詰め込んで復刻させるムーブメントは、しばらく前から盛り上がっている。このほかにも、タイトーは懐かしのアーケードゲームが遊べる家庭用ゲームきょう体を出展していたし、セガゲームスではファミコン用カセットのラベルを模した『Steins;Gate』のステッカーを配布したり、物販コーナーではレトロなゲームをモチーフにしたたくさんのグッズが売られたりもしていた。
ゲームの各タイトルは、旬が過ぎれば忘れ去られるだけだ。しかし、それはあくまでも「市場から」というだけ。夢中になった各人の記憶には深く刻まれ続ける。そうした記憶の中の名作が、時を超えて次々と、そしてさまざまな形で復刻している。
振り返ってみれば、タイトーの『スペースインベーダー』が社会的ブームを巻き起こしたのは筆者が小学3年生のときだ。街にはゲームセンターの前身となる「インベーダーハウス」がいくつも生まれ、今まで見たことのないこの新たな遊びに心を奪われた。
まさに“侵略”である。親に黙ってインベーダーハウス、後のゲームセンターに通い続け、たったそれだけのことで、中学を卒業するまでに校長室に3回、職員室には数え切れないほど呼び出された。親には迷惑をかけたが、それが今では仕事の種だ。2016年にTGSは20周年を迎えたが、前述の「インベーダーブーム」から数えるなら、その倍、もう40年もの歴史が刻まれてきているのだ。
まだまだゲームに対する偏見は根強く残る。一方で、TGS2018の会場では、当時を知らないであろう若い世代が「SEGA AGES」の『ゲイングランド』といった復刻されたタイトルで楽しそうに遊んでいたり、小さな子供とともに仲良く会場を濶歩(かっぽ)する親子連れの姿が見られたりした。時代は変わり、そして世代的な厚みがしっかりと出て、ゲームがひとつの“文化”として定着してきていることを強く感じる。
今まで挙げてきたどのトピックも毎年見られるものではある。しかし、多くの来場者が訪れた今年は、実感としてより強く筆者の身に迫り、「横にも縦にも広がりが一層増した」という感想につながったのだ。