今年も9月20日から23日まで、千葉・幕張メッセで東京ゲームショウ2018(TGS2018)が開催された。出展社数は668企業・団体、総来場者数は29万8690人といずれも過去最高を記録。多くの新作タイトルやサービスが発表され、eスポーツ大会も活況だった。実際に会場の様子はどうだったのか? TGSから見えるゲーム業界のトレンドとは? 長年、TGSを見てきたライター3人がそれぞれの視点で振り返る。今回は稲垣宗彦。

 今年のTGS2018は9月20~23日の4日間、フルに取材をすることになった。例年に比べ、多くのeスポーツ大会が開催されたからだ。多かったのはeスポーツだけではない。そもそも出展社のブース数が過去最大、全般的に各ブースのステージイベントも多かった。そして、来場者数も。連日にわたって何度も会場を歩いた感覚からも、今年は昨年より明らかに人が多いと実感できた。数字の上でも実感としても「大成功」と表現していい内容だったのではないだろうか。

 今回、TGS2018を振り返る記事を書くことは事前に決まっていたので、会期中は積極的に会場の隅々まで回ることを心がけてみた。そこで得た感想は、端的に言って「横にも縦にも広がりが一層増した」というものだ。

TGSの楽しみ方が広がった

 横方向の広がり、というのは、TGSの楽しみ方についてだ。最新のゲームに関する情報を求め、試遊台やステージイベントの列に並ぶ人、物販コーナーを真っ先に目指す人、コスプレをしてTGSという“お祭り”を体感する人、その人たちを目当てに来る人、そしてeスポーツ大会に出る人、見る人。今年に始まったことではないのだが、TGSの会場を訪れるにしてもその楽しみ方は多様であり、それでいてみんな一様に楽しそうであることに、今さらながら感じ入ってしまったのだ。

 これにはeスポーツの大会を取材したことも大きく影響している。例えば、ゲームとして長年楽しまれてきたことを生かし、「レジェンド」と「新世代」という“世代対決”を打ち立てて開催された「ぷよぷよチャンピオンシップ in TGS2018」。5カ月間もリーグ戦を戦い続けた上位2チームが、賞金総額1000万円をかけて戦った「コール オブ デューティ ワールドウォーII プロ対抗戦」グランドファイナル。

・関連記事:「ぷよぷよ」eスポーツ 新旧世代対決は大連鎖応酬で決着【TGS2018】
・関連記事:「CoDWWII プロ対抗戦」ついに終幕! 優勝はLibalent Vertex【TGS2018】

 前者はまれに見る大連鎖の応酬で優勝が決し、後者は急成長を遂げた2位チームがリーグ戦の覇者を打ち破る劇的な形で終幕。筆者は「コール オブ デューティ ワールドウォーII プロ対抗戦」をずっと取材し、選手たちの姿を間近で見続けてきたので、感慨もひとしおだった。

長寿タイトルならではの特徴を生かし、「世代対決」を打ち出した「ぷよぷよチャンピオンシップ in TGS2018」。若さ=強さではないことが証明された大会だった(写真/志田彩香)
長寿タイトルならではの特徴を生かし、「世代対決」を打ち出した「ぷよぷよチャンピオンシップ in TGS2018」。若さ=強さではないことが証明された大会だった(写真/志田彩香)
[画像のクリックで拡大表示]
勢いあふれる2位のチームがリーグ戦の覇者を打ち破った「コール オブ デューティ ワールドウォーII プロ対抗戦」グランドファイナル。半年にわたる大会で、どのチームも大きな成長が見られた大会だった(写真/加藤康)
勢いあふれる2位のチームがリーグ戦の覇者を打ち破った「コール オブ デューティ ワールドウォーII プロ対抗戦」グランドファイナル。半年にわたる大会で、どのチームも大きな成長が見られた大会だった(写真/加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

単純な楽しみを競技に昇華

 うまい人のプレーは見ているだけで楽しい――。

 はるか昔から知られていたこんな単純なことを、競技として成立させ、しかも選手たちのストーリーを加味することでショーとして昇華したのがeスポーツだ。誰かのプレーを見るためだけに来場した人、あるいは例えば『ストリートファイターV アーケードエディション』の公式大会「カプコンプロツアー ジャパンプレミア」に自分が出場するために来場した人など、今年は「eスポーツ」を来場の目的とした人がすごく増えたのではないだろうか。

 日経トレンディネットのゲストリポーターを務めたゴールデンボンバーの歌広場淳さんは、TGS2018に先立って行ったインタビューで、「数年来言われてきたけど、今年こそが“eスポーツ元年”」とおっしゃっていたが、そのことを筆者もまさに実感した。

・関連記事:金爆・歌広場淳「eスポーツは過渡期だから面白い」(3)

 インディーゲームコーナーの充実も忘れずに触れておきたい。小資本、少人数でゲームを作り、世に送り出す。ゲームを作る楽しみに魅入られた人たちの晴れ舞台だ。ブースは小さいながら、どこも熱意にあふれていて、面白いメーカーばかりだった。9ホールのエリアでは、出展者側の人々もまた、TGSというお祭りを来場者と同じかそれ以上に心から楽しんでいた。

インディーゲームコーナーで「映像のないゲーム」をプレイして感動する歌広場さん。作り手の情熱が感じられるブースがいくつもあった(写真/小林 伸)
インディーゲームコーナーで「映像のないゲーム」をプレイして感動する歌広場さん。作り手の情熱が感じられるブースがいくつもあった(写真/小林 伸)
[画像のクリックで拡大表示]

時間的な厚みがゲームを“文化”にする

 一方で、縦の広がりというのは時間的な厚みを意味する。東京ゲームショウの開催直前にはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から「プレイステーション クラシック」が発表された。過去のゲーム機のミニチュア版に代表作を詰め込んで復刻させるムーブメントは、しばらく前から盛り上がっている。このほかにも、タイトーは懐かしのアーケードゲームが遊べる家庭用ゲームきょう体を出展していたし、セガゲームスではファミコン用カセットのラベルを模した『Steins;Gate』のステッカーを配布したり、物販コーナーではレトロなゲームをモチーフにしたたくさんのグッズが売られたりもしていた。

タイトーの懐かしのアーケードゲームきょう体を3/4サイズで再現した「ARCADE1UP」3製品を展示していた。右は40年前のオリジナルきょう体
タイトーの懐かしのアーケードゲームきょう体を3/4サイズで再現した「ARCADE1UP」3製品を展示していた。右は40年前のオリジナルきょう体
[画像のクリックで拡大表示]

 ゲームの各タイトルは、旬が過ぎれば忘れ去られるだけだ。しかし、それはあくまでも「市場から」というだけ。夢中になった各人の記憶には深く刻まれ続ける。そうした記憶の中の名作が、時を超えて次々と、そしてさまざまな形で復刻している。

 振り返ってみれば、タイトーの『スペースインベーダー』が社会的ブームを巻き起こしたのは筆者が小学3年生のときだ。街にはゲームセンターの前身となる「インベーダーハウス」がいくつも生まれ、今まで見たことのないこの新たな遊びに心を奪われた。

 まさに“侵略”である。親に黙ってインベーダーハウス、後のゲームセンターに通い続け、たったそれだけのことで、中学を卒業するまでに校長室に3回、職員室には数え切れないほど呼び出された。親には迷惑をかけたが、それが今では仕事の種だ。2016年にTGSは20周年を迎えたが、前述の「インベーダーブーム」から数えるなら、その倍、もう40年もの歴史が刻まれてきているのだ。

 まだまだゲームに対する偏見は根強く残る。一方で、TGS2018の会場では、当時を知らないであろう若い世代が「SEGA AGES」の『ゲイングランド』といった復刻されたタイトルで楽しそうに遊んでいたり、小さな子供とともに仲良く会場を濶歩(かっぽ)する親子連れの姿が見られたりした。時代は変わり、そして世代的な厚みがしっかりと出て、ゲームがひとつの“文化”として定着してきていることを強く感じる。

 今まで挙げてきたどのトピックも毎年見られるものではある。しかし、多くの来場者が訪れた今年は、実感としてより強く筆者の身に迫り、「横にも縦にも広がりが一層増した」という感想につながったのだ。

ゲームを知らない人も楽しめるコーナーが登場

 最後にもうひとつ。昨年の「総まとめ」で筆者は「ゲームを知らない人でも楽しめるような来場者参加型のユニークなコーナーをぜひとも用意して」と書いた(関連記事:ゲームショウの魅力は健在 なのに残念だった点とは)。これに対し、思わぬ企業が応えてくれた。グーグルだ。

 TGS2018の会場で開催されていた「Google Play ポイントラリー」は、グーグルが新たに始めるポイントサービス「Play Points」をアピールするためのイベントで、全会場内1~11ホールの各所に点在するチェックポイントで二次元コードを読み込んでポイントを集めると、100ポイントごとに6ホールのGoogle Playブースで巨大ガチャが引ける、というもの。

 ガチャでもらえる賞品はBlue、Yellow、Red、Goldと4段階に分かれている。Blueはその当日に会場内で使える試遊台の優先プレー権、YellowとRedは出展メーカー提供のノベルティーグッズ、Goldはゲーミング用ヘッドセットなどの高級ゲームグッズが当たるのだそうだ。

 ラリー開始の時点で70ポイントももらえるうえ、個々のチェックポイントでは15~25ポイントが加算されるので、抽選の権利はすぐに手に入る。ちなみに全会場のチェックポイントをくまなく回るとトータルで400ポイント以上になる。筆者は取材の合間に全ポイントを回り、最終日の朝イチで4回の抽選に挑んだ。結果はRedが2、Blueが2。取材があるので優先プレー権は辞退し、Redでは『アナザーエデン』のステンレスタンブラーと、『PUBG』のパーカをいただいた。イマドキのノベルティーグッズはセンスが良く、ゲームそのものを知らない人が全く違和感なく使えるものも多いのがいい。

 会場内を隅々まで楽しく回れて、もらえる賞品も豪華。試遊台の優先プレー権がもらえる、というのもTGSならではの試みで、とても素晴らしいと感じた。

 しかし、残念だったのは、午後になるとその抽選に長蛇の列ができてしまっていたこと。90分待ちなんていう事態も生んでいたようで、ここはとても惜しい。次回もあるなら、ぜひここは改善してほしいところだ。

会場内でGoogleの三角形のロゴを見かけたら、そこがチェックポイント。二次元コードを読み込ませると、その場所に応じたポイントが加算される。われながらうれしそう(写真/志田彩香)
会場内でGoogleの三角形のロゴを見かけたら、そこがチェックポイント。二次元コードを読み込ませると、その場所に応じたポイントが加算される。われながらうれしそう(写真/志田彩香)
[画像のクリックで拡大表示]
6ホールにあったGoogle Playブースでポイントを抽選券に交換し、いざ、ガチャを回す。ハンドルの感触はスムーズで「ガチャ」という感覚はないが、そこはそれ(写真/志田彩香)
6ホールにあったGoogle Playブースでポイントを抽選券に交換し、いざ、ガチャを回す。ハンドルの感触はスムーズで「ガチャ」という感覚はないが、そこはそれ(写真/志田彩香)
[画像のクリックで拡大表示]
「Red」のカテゴリから賞品を選ぶ。たくさんありすぎて目移りしてしまう。長蛇の列ができる原因はここか!? (撮影/志田彩香)
「Red」のカテゴリから賞品を選ぶ。たくさんありすぎて目移りしてしまう。長蛇の列ができる原因はここか!? (撮影/志田彩香)
[画像のクリックで拡大表示]
筆者はPUBG Corp.の「PUBGオリジナルパーカー」と、GREEの「アナザーエデン ステンレスタンブラー」をいただいた(撮影/志田彩香)
筆者はPUBG Corp.の「PUBGオリジナルパーカー」と、GREEの「アナザーエデン ステンレスタンブラー」をいただいた(撮影/志田彩香)
TGS2018の会場内で配布されていたステッカー。侵略されて、もう40年
TGS2018の会場内で配布されていたステッカー。侵略されて、もう40年
[画像のクリックで拡大表示]
稲垣 宗彦(いながき・むねひこ)
稲垣 宗彦(いながき・むねひこ) 高校在学中からパソコン雑誌にてゲームレビューやイベントレポートを中心に、ライターとしての活動を開始。趣味であったゲームを仕事にしてしまったことを後悔しはじめた頃に、中学まで熱中していた釣りを再開。近年はアウトドア関連のほか、財布やバッグといった小物の記事など、節操なく手がける

【東京ゲームショウ2018まとめ】

・「昨年から一転、大作ソフトの充実が目立ったゲームショウ」(10/3公開)
・「eスポーツ躍進の年 記録更新尽くしのゲームショウはどうなる?」(10/4公開)
・「広がるゲームの楽しみ方 ゲームショウはどう向き合うのか」(この記事)

この記事をいいね!する