今年も9月20日から23日まで、千葉・幕張メッセで東京ゲームショウ2018(TGS2018)が開催された。出展社数は668企業・団体、総来場者数は29万8690人といずれも過去最高を記録。多くの新作タイトルやサービスが発表され、eスポーツ大会も活況だった。実際に会場の様子はどうだったのか? TGSから見えるゲーム業界のトレンドとは? 長年、TGSを見てきたライター3人がそれぞれの視点で振り返る。2回目は岡安学。
昨年の東京ゲームショウはカプコンの『モンスターハンター:ワールド』の一強でしたが、今年は人気タイトルが分散してました(関連記事:“モンハン一強”のゲームショウ 海外勢減少が気がかり)。話題としては“キムタクが如く!”の異名を持つセガゲームスの『JUDGE EYES:死神の遺言』がダントツでした。それにカプコンの『バイオハザード RE:2』、スクウェア・エニックスの『キングダムハーツIII』、コーエーテクモの『無双OROCHI3』などが目立っていました。他にも人気のタイトルは多く、粒ぞろいな印象です。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のブースでは、ゲームタイトルではありませんが、「プレイステーション クラシック」が人気を集めていました。ここ数年の旧作ハードの複数ソフト内蔵タイプのミニチュア化は、PlayStationにも波及しているようです。タイトルの全貌が明らかになる前にこの人気は大したものです(関連記事:「プレイステーション クラシック」実機にヤバいほどの人だかり【TGS2018】)。
個人的に面白いと思ったのは、Google Playブース。会場に点在しているGoogle Playの三角形のアイコンを探し、そこにある二次元コードをスマホで読み取って、グーグルのポイントサービス「Google Play Points」を獲得。一定のポイントがたまると巨大ガチャを回せるというもの。探すといっても、スマートフォンで設置してある場所は確認できるうえ、数カ所回るだけでポイントはたまります。それでいて、パーカや人気ゲームのぬいぐるみ、試遊台の優先試遊券など、獲得できる景品はなかなかのもの。しかも、かなりの高確率で高価な景品が当たりました。
eスポーツが大躍進の年
近年、東京ゲームショウはゲームの複合イベントとしての立ち位置を確立しています。ゲームの見本市、物販、声優などのイベント、コスプレなど、来場者が訪れる目的はさまざまですが、特に躍進したのはやはりeスポーツでしょう。東京ゲームショウにeスポーツの特設会場「e-Sports X(クロス)」を設置して既に数年たちますが、これまでは何かの目的のついでに見てみようという人がほとんどでした。
それが今年は、eスポーツイベントを目的に来場した人が激増し、タイトルによっては用意した席数が圧倒的に足らず、立ち見席すら入りきれない状況になっていました。中でも『ストリートファイターV アーケードエディション』の大会である「カプコンプロツアー ジャパンプレミア」は、オープン参加の大会ということもあり、700人を超える参加者が集まりました。他のタイトルの大会も参加人数は少ないものの、参加者を厳選した大会だったり、プロ選手やプロチーム限定の大会だったりと、大会自体のクオリティーは、例年にないものでした。
今後もeスポーツの大会などを行うタイトルは増えると見られています。東京ゲームショウ2018には「e-Sports X BLUE STAGE」と「同RED STAGE」の2つのステージがありましたが、これではまかないきれなくなるのは火を見るより明らかです。将来的には、従来のゲームショウと切り離して開催すべき案件になるかもしれません。東京ゲームショウが冠となる一大eスポーツイベントとして昇華できれば、東京ゲームショウの新たな発展の足がかりになるとも言えそうです。
混みすぎのTGS、これからどうする?
eスポーツも加わって東京ゲームショウが著しい発展を遂げる一方、だからこそ抜本的な対策が必要とも感じました。
それというのも、今年のTGSの来場者数は過去最高の29万人超で、もはや会場のサイズ、会期を考えても飽和状態だからです。ゲーム業界として盛り上がるのは良いことですが、来場者にとってみれば、どこに行っても長蛇の列で、さまざまなゲームの試遊台があるといっても、多くは触れずじまいだったのではないでしょうか。
対策の方法はいくつか考えられます。例えば、米国で開催されるゲーム関連の見本市「E3」は、一般客を入れないイベントでしたが昨年から解放し、イベントとしての性質が変わりました。その結果、E3への参加に利点を見いだせなくなり、E3会場の周りで独自イベントを開催していたパブリッシャーもあったといいます。実際、最も集客したのはE3の外で開催された『FORTNITE(フォートナイト)』のイベントでした。
今の形で十分に集客し、市場へのアピールもできているTGSとE3では事情が違うので、幕張の他の場所で独自イベントを行う必要は必ずしもありません。ですが、ここまで混んでくると、メーカー独自のイベントを開催するのもありでしょう。
会期を1週間程度に延ばしてしまう方法もあります。当然、一般公開日も平日開催になってしまいますが、それでも来場する人はいるはずですし、土日の混雑を避けて、平日に来る人も考えられます。ただ、期日を延ばしてまで参加するメーカーがどれだけいるのかは分かりませんし、現実味があるかというと疑問は残ります。
優先入場チケットを新たに作るという方法もあるかもしれません。前述のE3の入場チケットは1万5000円超と高額なうえ、優先的に入場し、VIPエリアに入れる10万円を超えるチケットも販売されています。これに対して、東京ゲームショウは前売り券が1000円、当日券が1200円。収益よりも来場者の見込み確認のためのチケットと言ってよい状態です。これだけ人が入るなら、E3のように優先チケットの販売を考えてみてもいいと思います。来場者からしても、時間をお金で購入したい人はいるでしょうし、そこで出た収益をサービスに反映してくれれば、通常チケットで入場した人たちも恩恵を得られます。
今後、ゲームショウはどのように運営していくべきか。一つの転換点にもなり得るのが今年のゲームショウだったと言えそうです。
【東京ゲームショウ2018まとめ】
・「昨年から一転、大作ソフトの充実が目立ったゲームショウ」(10/3公開)
・「eスポーツ躍進の年 記録更新尽くしのゲームショウはどうなる?」(この記事)
・「広がるゲームの楽しみ方 ゲームショウはどう向き合うのか」(10/5公開)
