東京ゲームショウ2018の「e-Sports X RED STAGE」では9月23日、「GENERATION(世代)」をテーマにeスポーツ大会「ぷよぷよチャンピオンシップ in TGS2018」が開催された。

「ぷよぷよチャンピオンシップ in TGS2018」が開催されたのは、11ホールの「e-Sports X RED STAGE」
「ぷよぷよチャンピオンシップ in TGS2018」が開催されたのは、11ホールの「e-Sports X RED STAGE」
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レジェンドと新世代の対決

 俗に“落ちもの”と呼ばれるアクションパズル『ぷよぷよ』は、27年もの歴史を誇る長寿の作品。それだけにプロ選手の中にはその活動歴の長さから“レジェンド”と呼ばれる著名な選手がいる。一方で、新作の発売を機にプレーを始め、頭角を現してきた新世代の選手も増えている。

 今回の大会では、「レジェンド」と「新世代」、各9人が参加し、1回戦で必ず新旧世代が激突するように抽選が行われて、組み合わせが決定した。同時にぷよぷよの公式Twitterアカウントでは、どちらの世代が勝利するのかを予想するキャンペーンも行われた。それを表すように「GENERATION WARS」という副題も付けられている。

今大会のトーナメント表。青地に名前が書かれているのが「レジェンド」、赤地が「新世代」の選手だ
今大会のトーナメント表。青地に名前が書かれているのが「レジェンド」、赤地が「新世代」の選手だ
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「レジェンド vs 新世代」が今大会のテーマ。左からMCの椿彩奈さん、実況の齋藤寿幸さん、スペシャルサポーターの橘ゆりかさん
「レジェンド vs 新世代」が今大会のテーマ。左からMCの椿彩奈さん、実況の齋藤寿幸さん、スペシャルサポーターの橘ゆりかさん
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 大会はMCに椿彩奈さん、実況に齋藤寿幸さん、スペシャルサポーターに橘ゆりかさんが登壇して開幕。使用タイトルはPlayStation4版の『ぷよぷよテトリス』で、「ぷよぷよ」VS「ぷよぷよ」の「VS」モード、ルールは『ぷよぷよ通』のものが採用され、2本先取で1セットを獲得、2セット先取で勝利となる。

 一般的にeスポーツの大会では、動体視力や反射神経が求められるため、若いプレーヤーが有利ともいわれるが、ぷよぷよでは自分のフィールドだけを見ていては勝負にならない。いかに大きな連鎖を組み、大量の“おじゃまぷよ”を相手フィールドに降らせるかという技量はもちろん、相手の行動を見据えてタイミングよく小さな連鎖を消し、ジャブを打って相手に思いどおりの行動を取らせないといった、即応性のある戦術も求められる。ここに“レジェンド”が活躍できる理由がある。経験を積んだことで得られる“勘所”がものを言うケースが多々あるのだ。

 今大会でも全般的にレジェンド側の勝利が続いた。1回戦が終了した時点で、レジェンドが6人も残っていたのに対し新世代は2人と、新世代がかなりの劣勢。そうした世代間の格差とは別に、4、6、8月の大会で優勝した、くまちょむ選手(レジェンド)、マッキー選手(新世代)、Kamestry選手(レジェンド)の3人が1回戦で敗退するという波乱も起きた。

 この大会でユニークなのは、会場の大スクリーンに、出場者の心拍数がリアルタイムの計測値として表示されることと、大会に出場している選手たちが交代で実況席に呼ばれ、自分が出ていない試合の解説を担当すること。

 リアルタイムで変化していく心拍数は、個人差があるとはいえ出場者の内面を推し量る一つの材料になるし、自らも出場している大会で“解説者”として語る選手たちの言葉には、ライバルに対する“分析”が現れていて、かなり興味深い。しかも解説に呼ばれた選手はいずれも状況や戦術についての説明が巧みで、分かりやすかった。

こうして実況席に出場選手が呼ばれ、試合の解説を担当する。写真のくまちょむ選手は「ぷよぷよチャンピオンシップ」4月大会の優勝者
こうして実況席に出場選手が呼ばれ、試合の解説を担当する。写真のくまちょむ選手は「ぷよぷよチャンピオンシップ」4月大会の優勝者
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高校生でプロライセンス認定を受けたことでも知られるマッキー選手。間違いなく「新世代」を代表する選手で、優勝したざいろ選手を何度も破っている
高校生でプロライセンス認定を受けたことでも知られるマッキー選手。間違いなく「新世代」を代表する選手で、優勝したざいろ選手を何度も破っている
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決勝戦は10連鎖の応酬で決着

 最終的に決勝戦に残ったのは、“疾風迅雷”の二つ名を持つ、ざいろ選手、そして、今年8月にラスベガスで開催されたeスポーツイベント「AnimEVO」において、ぷよぷよテトリスのスワップ部門とぷよぷよ部門の両方で優勝した、live(りべ)選手。どちらもレジェンドとしてエントリーしている。

1回戦でめいせつ選手と当たったざいろ選手。中央下部に心拍数が表示されるはずなのだが、ざいろ選手は高すぎてグラフが表示不能に
1回戦でめいせつ選手と当たったざいろ選手。中央下部に心拍数が表示されるはずなのだが、ざいろ選手は高すぎてグラフが表示不能に
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準決勝に残った4人。この時点で新世代はMATTYAN選手ただひとり。飛車ちゅう選手とともに、3位となった
準決勝に残った4人。この時点で新世代はMATTYAN選手ただひとり。飛車ちゅう選手とともに、3位となった
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 解説の席に着いたのは、新世代のあめみやたいよう選手。曰く、決勝に出場した選手はどちらも非常に安定感があり、「時の運で決まる」とのこと。ぷよぷよテトリスではシステム面でざいろ選手が持ち味を完全に活かせない部分があるものの、好勝負が期待できるとコメントした。

 実際、決勝戦は一進一退の攻防だった。小さな連鎖でジャブを繰り出しつつ、別に用意した大連鎖を決めるタイミングを見計らうlive選手。対するざいろ選手は、そのジャブを小さな連鎖で相殺し、がっぷり受けながら、これまた大連鎖で返していくという展開だ。

 取って取られてを繰り返し、1セット目はざいろ選手、2セット目はlive選手が取って迎えた3セット目。先に1本を取ったのはざいろ選手。しかし2本目は、暴発気味のスタートながらも12連鎖を決めたlive選手に軍配が上がった。

 そして勝負を決する3本目。ざいろ選手が先に仕掛けて12連鎖を決めれば、live選手も12連鎖で反撃。ざいろ選手はそこへさらに11連鎖で畳みかけた。live選手もさらなる反撃を試みるが、その攻撃は6連鎖で尽きてしまった。スコアにしてざいろ選手は12万点、及ばなかったlive選手でも10万点という結果に、解説のあめみやたいよう選手の声も上ずりがちだった。

大連鎖につぐ大連鎖。ざいろ選手とlive選手で争われた決勝戦は、TGS2018という大舞台に相応しい、劇的なラストで勝負が決まった
大連鎖につぐ大連鎖。ざいろ選手とlive選手で争われた決勝戦は、TGS2018という大舞台に相応しい、劇的なラストで勝負が決まった
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 こうして希に見る大連鎖の応酬というド派手な試合で大会は終結。ざいろ選手が優勝を勝ち取った。優勝したざいろ選手には賞金100万円とトロフィー、副賞として「PS4 Pro」を贈呈。準優勝のlive選手には50万円が贈られた。また、今大会では3位決定戦がないため、飛車ちゅう選手、新世代最高位となったMATTYAN選手にそれぞれ賞金20万円が渡った。

 今回の大会を通じて言えるのは、ぷよぷよがeスポーツ向きのゲームタイトルだと再確認できたということだ。eスポーツとしてのゲーム人口の多さ、規模などはともかく、ぷよぷよは見ている人にも勝負の展開が分かりやすい。しかも、勝ち残るためには若さだけでなく、経験が必要であることも明らかだ。何より決勝戦ラストの一本。本来、勝者側のスコアが10万点を超えるだけでも「スゴいこと」なのに、勝者はそのさらに上の12万点をたたき出した。偶然とはいえ、最後の最後に今大会一番の大勝負が来るという、見応えのある大会となった。

観客が盛り上がる勝ち方ができてうれしい

 優勝を決めたざいろ選手に試合後、お話をうかがうことができた。

――優勝しての気持ちをお聞かせください。

ざいろ選手: とにかくうれしい。これまであまり目立った成績を出せていなかったと思うのですが、コツコツと努力してきた甲斐があったと思います。

巨大なトロフィーと賞状を手にする優勝したざいろ選手。賞金100万円のほか、副賞として「PS4 Pro」も獲得した。
巨大なトロフィーと賞状を手にする優勝したざいろ選手。賞金100万円のほか、副賞として「PS4 Pro」も獲得した。
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――ふだんはどんな練習をされていますか?

ざいろ選手: 特には決めていません。でもこうした大会では「試合」であると意識せずにゲームをすることが重要と思っています。そこで、練習では「何本取れば勝ち」といったことを決めず緩くプレーしています。試合はその練習のようにやろうと考えています。

――TGS2018の今大会に向けて特別な練習はされましたか?

ざいろ選手: 特別にやってるということはないんですね。今週は練習をちょくちょくしていたので、普段通りにやればいいかな、と思って試合に臨みました。

――今大会思い出に残った試合はどれでしょう?

ざいろ選手: やっぱり最後の試合じゃないですかね。点数が高く、観客が盛り上がる勝ち方ができたことはうれしいです。

――10連鎖が行き交う展開は珍しいと思いました。

ざいろ選手: 確かにそうですね。自分はさらにもう1回大きな連鎖を打てるような状態で、なかなかできない勝ち方だったと思います。それを見せることができてうれしいです。

――今日いちばん肝を冷やした試合はどれでしょう?

ざいろ選手: 最初の試合ですね。見てて分かったと思うんですが、心拍数がカンスト(カウンターストップ:この場合は高すぎて計測不能な状態)したらしいんですね。最初はすごく緊張していました。でも続く2試合目も勝てて、だいぶ落ち着いた感じです。

――出場したどの選手も、今までの大会よりも硬さが見られたように思います。

ざいろ選手: お察しの通り、これだけの規模の大会はこれまでありませんでした。プロとはいえ、私も含めてこうした場に慣れていない選手が多かったと思います。

――若い選手ほど影響は大きかったんでしょうか?

ざいろ選手: 特に大会の最初のほうに試合があったmeta選手やマッキー選手はそんな感じでしたね。そんななかで「レジェンド」として勝てたのはよかったと思います。

――『ぷよぷよ』の魅力を改めて聞かせてください。

ざいろ選手: ひとことでは語れないんですよ。ただ連鎖を組んでいるだけでは当然勝てません。落ちてくるぷよを見て瞬時に判断して連鎖を組みつつも、高度な読み合いや状況判断といったすべてをこなさなければなりません。まだ戦術が詰め切れてないんですね。奥の深さが見えないところがあって、そこが魅力かと思います。

――勝負に勝つポイントとなった要素はなんだと思いますか?

ざいろ選手: 今日は相手の動きを冷静に見ることができて、それに対して的確に動けたかと思います。

――今回は優勝できると思われていましたか? また、優勝を阻む選手がいるとしたら、誰だと思っていましたか?

ざいろ選手: もちろん勝てると思っていました。何回かTwitterなどにも書いたのですが、新世代のマッキー選手にはこれまで何度も負けているんです。もし決勝で当たることがあったら面白いとは思っていましたが、それ以外の選手はあまり意識していなかったです。

――プロとして戦ううえで心がけていることはありますか?

ざいろ選手: 簡単に負けてはいけないという思いがあります。今はプロ同士の大会ですけど、もしアマチュアとやることがあったとしても、「この程度」と思われたくはないので、そこは意識しています。

――賞金の使い道は考えていますか?

ざいろ選手: 考えていなかったのですが、とりあえず仲間といっしょに飲みに行きます(笑)。

(文/稲垣宗彦、写真/志田彩香)

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