新規ユーザーにもおすすめ
eSIMやLTEを搭載したことで、Apple Watchはさらに本来アップルが目指していたコンセプトに近づくことができた。
単独で通信が可能になるため、例えば、ジムなどでiPhoneをしまっておいたままフィットネスする際には、Apple Musicでクラウド上の音楽を聴くことができる。Apple Watchだけで電話を着信することも可能なため、iPhoneを持たずにランニングしてもいい。
もちろん、スポーツやフィットネスだけでなく、日常的な場面でスマートフォンをわざわざ持ち歩くのが面倒ということもある。そのようなときでも、Apple Watchだけ身に着けていれば、最低限の電話やメッセージは確認できる。後述するようにキャリアとの契約が必要になるため、追加の料金はかかってしまうが、その価値は十分ありそうだ。既存のApple Watchユーザーにとって買いなだけでなく、これまでApple Watchを使ったことがないiPhoneユーザーにもおすすめできる。
販売競争が激化か
Apple Watchが与えるモバイル業界への影響という点では、キャリアを巻き込んで販売できることのインパクトが大きいだろう。
これまでのApple Watchは、通信事業者にとっては単なる「携帯電話の周辺機器」でしかなかった。単独で通信できないため、いくらがんばって売っても、通信料収入のような、継続的な収益を得られえるわけではない。あくまで副業的な物販の1つにしかならないというわけだ。
これに対し、Apple Watch Series 3は、LTEを内蔵した、文字通りの携帯電話だ。ここには大きな違いがある。通信事業者はApple Watch Series 3を携帯電話――つまりメインの商材として売れる。こうした回線から得られる継続的な収入も、魅力になりそうだ。
日本では、iPhoneに加えてApple Watch Series 3を契約すると、ドコモで500円、KDDIとソフトバンクで350円のサービス料金がかかる。Apple Watch Series 3はあくまで副回線という位置づけにはなるが、ARPU(1人の利用者から得られる平均収入)を上げるための武器にはなりそうだ。3キャリアが同時に扱うことで、iPhoneのときと同様、キャリア間での販売競争が激化し、その結果、普及が進む可能性もある。
(文/石野純也)