8万通りに作品を分類してリコメンド

 このように、Netflixには多彩で興味をそそられるコンテンツがてんこ盛りだ。筆者はかなり早い段階からNetflixに加入し、随分多くのコンテンツを観たが、それでも到底追いつけず、毎晩何を観ようか迷うほどである。

 そんなメンバーにうってつけで画期的なシステムが、Netflixならではのアルゴリズム“レコメンデーション機能”だ。現在2500人以上いるNetflixの社員のうち、6割が米国本社カリフォルニア州ロスガトスにいる技術系のエンジニアたちで、彼らが生み出したアルゴリズムは、なんと8万通りに作品を分類する。Netflix全作品の監督・出演者・制作者・制作国・制作年・受賞歴、さらには、主人公の職業、主人公のバックグラウンド、物語の舞台、時代背景、物語の終わり方、ストーリー展開等、考え得る分類項目の「全て」をデータに入れ、分類している。

 それをメンバーの視聴行動(どのくらい続けて観たかなども細かく記録される)に合わせて、最適な作品を紐づけていく。このため、AさんとBさんがそれぞれ観ているNetflixのトップ画面は全く異なる。それだけではない。パナソニックやソニーなど、各メーカーのテレビのモニターに合わせて、クリックしやすい最適な画面構成を提供する仕組みもあるというから驚きだ。

 日々成長を遂げ、着実にメンバーを増やしているNetflix。一体、何億人までメンバーを増やすことを目指しているのかと中島氏に尋ねた。

 「実は、Netflixのユニークなところは、数を目標にしないことです。目指せ○万人!という目標を立てると、その結果に一喜一憂して振り回されてしまう。そうではなく、とにかく長時間観てもらうためのいい作品を作ろうというのが、Netflixの考えです」(中島氏)。目指すのは目先のメンバーの数でなく、永続的な“太くて長い”メンバーだ。とはいえ、予想以上に早く1億人を突破したときには全社を挙げて喜びお祝いしたという。

 快調に動画配信サービスの先頭を走るNetflixだが、先日米ウォルト・ディズニーが2019年から独自の配信サービスを始めると発表したように、今後、同社を追いかける動画配信サービスはますます増えることだろう。加入者の満足に応えるクオリティーのコンテンツを提供し続けられるか。競争はさらに激化しそうである。

 幼いころからテレビが大好きな“テレビっ子”で、ついにはテレビの仕事を手掛けるまでになった筆者には、かつて夢中になってテレビの前にかじりついた体験が数多くあった。それはクリエイターたちが「自分が本当に面白いと思える番組、心から観たい番組」を日夜必死に創り出していたからだ。だが、今は結果の出た視聴率グラフをもとに、数字の取れる内容を“こする”ことに躍起になっている。地上波のテレビには“どこかで見たもの”があふれてしまった。それらは、その時間にわざわざテレビの前に拘束されて観るほどのものではない。であれば、好きな時間に好きなだけ観られる “まだ見たことのない”ものにどうしても魅かれてしまうだろう。

 “見たことのない”ものを創る。シンプルだけどもっとも難しいことに挑み続けるNetflix。守りに入ってしまっている既存のメディアに喝を入れるごとく、攻め続けてほしい。

(取材・文/カニリカ)