体感系のエンタメは今のトレンド

 「今のエンターテインメントにおいて、体感型は1つのキーワード」と松村氏は話す。前述のVR、4DXはもちろん、最近は一般的な映画館でも、映画に合わせて観客がケミカルライトを振ったり声を出したりする「応援上映」を実施したり、ライブ会場でみんなでLEDライトを点灯させる演出をしたりしている。「観客が参加している感覚を味わえる、これもある種の体感型エンターテインメントでは」と松村氏は指摘する。

TBSテレビ事業局事業部担当部長で、IHIステージアラウンド東京の支配人を務める松村恵二氏(撮影/志田彩香)
TBSテレビ事業局事業部担当部長で、IHIステージアラウンド東京の支配人を務める松村恵二氏(撮影/志田彩香)
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 IHIステージアラウンド東京で上演が始まって、約半年が経つが、チケットはほぼ完売。実際に来場したお客さんの反応も「全く新しい体験ができた」と上々だ。

 それらに加えて多い意見が「初めて劇団☆新感線のお芝居が観られた」というもの。一般に、コンサートに比べて収容人数が少なく、上演が東名阪などの一部都市に限られがちな演劇は、チケットが取りにくい。人気の劇団、演出家、俳優による公演となればなおさらだ。それなのにこういった声が聞かれるのは、「この劇場のキャパシティーが1300席と大きく、ロングラン公演であるからこそ、チケットが取りやすくなっているのではないか」と松村氏は話す。

 「髑髏城の七人」の公演にあたっては、はじめから1年間のロングラン公演を前提に計画していた。元々の劇場のコンセプトに加え、かなり大がかりな演出、製作費の都合上、採算をとるには1年は同じ演目を上演したいという理由もある。

 ここで気になるのは、今後、この劇場でこれだけの公演が打てる劇団、演目は限られるのではないかということだ。どんな演目を想定しているのか。松村氏は「客席が回転するという機構の特性上、ミュージカルなどが合うと思う。走る・踊る・歌うと相性がいいと感じる」と話す。ミュージカルのように、歌や音を使う演出は段取りがきっちり決まっており、拍と機構が動くタイミングを合わせやすい。

 また、「髑髏城の七人の公演は、一般の公演以上に多くのアーティストが観劇してくれている。『ここで何かできそう』と言ってくれる人も多く、ライブにも向いているのでは」と期待を込める。

 「IHIステージアラウンド東京は、演劇の新しい形を提供できていると感じている。ここが一番ということではなく、この劇場ならではの、ここでならできることが選択肢のひとつになれば」と松村氏。この新しい劇場から、新しいエンターテインメントが生まれる可能性を感じさせられた。

(文/志田彩香)