最近のオーディオ市場では、ワイヤレスイヤホンなどスマートフォンで手軽に音楽を楽しめる製品が多く登場する一方で、高音質ヘッドホンや高音質DAP(デジタルオーディオプレーヤー)といった音質にこだわる製品も人気を集めている。特に若い世代のユーザーには、それらの機器でアニソン(アニメソング)やゲームソング、初音ミクなどのボーカロイド曲を聴く人が多い。

 そういった動きのなか、オーディオメーカー各社はアニメなどとのコラボ製品を数多く発売している。

 オンキヨー&パイオニアは、『ガールズ&パンツァー(ガルパン)劇場版』とコラボしたハイレゾ対応の高音質スマホ「GRANBEAT」を今年7月に期間限定で発売。女性層を中心にヒットしたアニメ『おそ松さん』のコラボヘッドホンやイヤホンなど、さまざまなコラボモデルも販売している。

オンキヨーの『ガールズ&パンツァー劇場版』とハイレゾスマホ「GRANBEAT」のコラボモデル。9万9900円(税込・送料込)の本格モデルとなっている。右の手りゅう弾型Bluetoothスピーカー「PHILIPS SBT30」もガルパンコラボモデルだ
オンキヨーの『ガールズ&パンツァー劇場版』とハイレゾスマホ「GRANBEAT」のコラボモデル。9万9900円(税込・送料込)の本格モデルとなっている。右の手りゅう弾型Bluetoothスピーカー「PHILIPS SBT30」もガルパンコラボモデルだ
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 この傾向は、他社にもある。ソニーは初音ミクや『ファイナルファンタジーXV』、『劇場版ソードアート・オンライン』など、ゲームやアニメ、アーティストとのコラボモデルを数多く手がける。高音質DAPで知られるiriverのAstell&Kernブランドも、昨年『けいおん!』モデルを限定発売した。

ソニーの「ウォークマンAシリーズ 初音ミク10周年記念モデル」(3万2880円)。「鏡音リン・レン」「巡音ルカ」モデルや、「ワイヤレスポータブルスピーカー h.ear go (SRS-HG1)初音ミク10周年記念モデル」の予約も実施していた
ソニーの「ウォークマンAシリーズ 初音ミク10周年記念モデル」(3万2880円)。「鏡音リン・レン」「巡音ルカ」モデルや、「ワイヤレスポータブルスピーカー h.ear go (SRS-HG1)初音ミク10周年記念モデル」の予約も実施していた
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 なぜ今、各社はアニメとのコラボに力を入れているのか。近年、数多くのコラボ製品を販売しているオンキヨー&パイオニア イノベーションズのネットワークサービス事業本部クロスマーケティング課エグゼクティブプロデューサーの亀井隆司氏に聞いた。

コラボでも「本物の音」の製品を届けたい

――今年7月に発売した『ガールズ&パンツァー劇場版』コラボの「GRANBEAT」は9万9900円(税込・送料込)と高価格帯の製品です。出す側も買う側もかなりハードルが高いのではないですか。

亀井: 高いのは、聴いて違いが分かる、価値を納得できる本物の音を出せるということです。

 ベース製品のGRANBEATは、バランス駆動にも対応したハイレゾ対応の高音質DAPです。オーディオにこだわりのある高年齢層にも満足していただける音質で、そのうえでスマホの機能も使える製品です。たしかに高価格ですが、オーディオに興味がある20代、30代以上のファンなら購入できる価格でもあります。実際にハイレゾ楽曲を聴いてもらえれば、音の違いとその価値に満足していただけると思います。

オンキヨー&パイオニア イノベーションズ ネットワークサービス事業本部 クロスマーケティング課エグゼクティブプロデューサーの亀井隆司氏
オンキヨー&パイオニア イノベーションズ ネットワークサービス事業本部 クロスマーケティング課エグゼクティブプロデューサーの亀井隆司氏
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『ガールズ&パンツァー劇場版』とハイレゾスマホ「GRANBEAT」のコラボモデル。特別デザインの本体に、オリジナルレザーケースや液晶保護フィルム、オリジナルを含む壁紙7種、ハイレゾ収録のコンサート演奏楽曲5曲が収録される
『ガールズ&パンツァー劇場版』とハイレゾスマホ「GRANBEAT」のコラボモデル。特別デザインの本体に、オリジナルレザーケースや液晶保護フィルム、オリジナルを含む壁紙7種、ハイレゾ収録のコンサート演奏楽曲5曲が収録される
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本体には作中に登場したⅣ号戦車 H 型(D 型改)のレーザーマーカー彫刻や、ダイヤル部の日本戦車道連盟マークなどをデザイン
本体には作中に登場したⅣ号戦車 H 型(D 型改)のレーザーマーカー彫刻や、ダイヤル部の日本戦車道連盟マークなどをデザイン
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本革レザーケースが付属。スタンドにもなるほか、背面には作中設定の大洗女子学園の校章が型押しされている。コラボモデルは9万9900円だが、このケースの質感やスタンド機能の価値を考えると、GRANBEATユーザーとしては通常モデルの実売価格8万8441円よりもかなりお買い得な印象を受けた
本革レザーケースが付属。スタンドにもなるほか、背面には作中設定の大洗女子学園の校章が型押しされている。コラボモデルは9万9900円だが、このケースの質感やスタンド機能の価値を考えると、GRANBEATユーザーとしては通常モデルの実売価格8万8441円よりもかなりお買い得な印象を受けた
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本物が欲しいという声に応える

――今回のガルパンもそうですが、アニメ作品とのコラボは何をきっかけに決まるのですか。

亀井: ガルパンの場合は、横浜で開催された「ガールズ&パンツァー 劇場版 シネマティック・コンサート」の協賛の依頼をいただいたことがきっかけです。そこからコラボ製品の企画につながりました。2017年2月ぐらいですね。ですので、製品にはコンサートの一部をハイレゾでレコーディングしたものも収録しています。

 コラボ企画は依頼をいただく場合や、われわれから提案する場合もあります。われわれから提案する場合は、作品自体の内容や音へのこだわりを重視してお願いしています。

 例えば「THE IDOLM@STER」(アイドルマスター)シリーズに関しては、交渉に1年ほどの期間をかけました。各種コラボ企画はかなり先までのスケジュールを立てており、現在では20ほどの企画を進めています。

――近年、オンキヨー&パイオニアを含め各社からオーディオとアニメなどのコラボ製品が増えました。低価格なアニメグッズとの違いは何でしょう。

亀井: 私自身、アニメ関連のグッズやコラボなどを手掛けてきた経歴があるので、今のアニメファンが「本物」「本格的」なものが欲しいという思いは分かります。それに応えるため、可能な限り作品のプロデューサー側と相談し、コラボ製品内容から提供方法まで考えています。

――アイマスコラボのヘッドホンはゲーム中に出てきて驚きました。

亀井: それはコラボならではだと思います。『BanG Dream!(バンドリ!)』のRoselia(ロゼリア)モデルのヘッドホンも、声優さんに実際のライブイベントで使っていただいています。バンドリ!はアニメ作品ですが、声優さん自身が楽器を弾くライブイベントもあるからこその展開ですね。

「けもフレ」仕様も登場 オーディオはアニメとコラボ(画像)
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『THE IDOLM@STER』シリーズのコラボヘッドホン「SE-MX9 THE IDOLM@STER」。パイオニアの上位機種で価格は3万2000円(税抜)だったが、2016年10月と2017年1月の2度予約が実施された。バンダイナムコエンターテインメントの「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」作中にも登場している
『THE IDOLM@STER』シリーズのコラボヘッドホン「SE-MX9 THE IDOLM@STER」。パイオニアの上位機種で価格は3万2000円(税抜)だったが、2016年10月と2017年1月の2度予約が実施された。バンダイナムコエンターテインメントの「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」作中にも登場している
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『BanG Dream!』コラボモデル第2弾の、パイオニア SE-MX8-K「Roselia」モデル。2万5000円(税込・送料込)で予約を実施していた。
『BanG Dream!』コラボモデル第2弾の、パイオニア SE-MX8-K「Roselia」モデル。2万5000円(税込・送料込)で予約を実施していた。
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女性ファンへの戦略とは?

――『おそ松さん』※や『Free!』など女性に人気の作品のコラボ製品も数多く出されています。こちらは1万円を切る、手ごろな価格帯のヘッドホンが多いですね。

※おそ松さん:2015年に、女性のアニメファンのあいだでブームとなったギャグアニメ。赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』を原作に、20歳になった6つ子を描く。2017年10月より第2期がテレビ東京系で放送される。

『おそ松さん』コラボの第1弾モデル「おと松さん」。価格は4980円(税込・送料込み)で、2016年の3月と2017年4月の2回予約限定販売された。Pioneerのインナーイヤーヘッドホン「SE-CL522」がベースとなっている
『おそ松さん』コラボの第1弾モデル「おと松さん」。価格は4980円(税込・送料込み)で、2016年の3月と2017年4月の2回予約限定販売された。Pioneerのインナーイヤーヘッドホン「SE-CL522」がベースとなっている
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 競泳がテーマの『Free!』 とコラボした、防滴仕様のスポーツ向けインナーイヤーヘッドホン“E3”。パイオニア「SE-E3」がベースで、4500円(税込、送料込)で2モデルを展開した
競泳がテーマの『Free!』 とコラボした、防滴仕様のスポーツ向けインナーイヤーヘッドホン“E3”。パイオニア「SE-E3」がベースで、4500円(税込、送料込)で2モデルを展開した
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亀井: 女性のアニメファンにヘッドホンやオーディオについて聞くと、音質にはさほどに興味がない人が多いんです。普段、音楽や動画を楽しむのに、100円均一のイヤホンを使っているという声も聞きました。

 そこで、コラボをきっかけに高音質なヘッドホンを手に入れて、音が良いと曲やアニメをより深く楽しめることを知っていただきたいんです。そのため、手にとってもらいやすい価格で、音の違いが分かりやすい製品を中心としています。おそ松さんの第2弾コラボ「おと松さん -The second-」は、アニメの2期の10月開始に合わせて楽しめるよう、9月下旬出荷にしています。コラボだからこその連携ですね。

『おそ松さん』第2弾コラボ「おと松さん -The second-」。価格9000円(税込・送料込)で、7月31日まで予約を実施していた。パイオニアのヘッドホン「SE-MJ722T」がベースとなっている
『おそ松さん』第2弾コラボ「おと松さん -The second-」。価格9000円(税込・送料込)で、7月31日まで予約を実施していた。パイオニアのヘッドホン「SE-MJ722T」がベースとなっている
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――コラボ製品は予約通販が大半です。女性ファンが気軽に試聴できる場所はあるのでしょうか。

亀井: 基本的にはイベントなどの試聴展示、または東京にある「Gibson Brands Showroom TOKYO」で可能です。近くの東京国際フォーラムで『TIGER & BUNNY』(タイバニ)のイベント「THE SOUND OF TIGER & BUNNY 2016」が開催されたときは、タイバニのハイレゾ対応イヤホンを多くの人に試聴していただけました。

◇  ◇  ◇

 アニメコラボといっても、作品ごとにオーディオにこだわる高年齢層や、より若いファン層、オーディオに興味をもたない層などアプローチする年代や性別、属性が異なる。オンキヨー&パイオニアは作品ごとに企画を工夫し、若い世代や女性のライト層などを新しいオーディオ製品へ触れる入り口に導こうとしている。

(文/島徹)