混雑を緩和する人流予測技術

 NTTグループの取り組みで、一番期待されるのが「人流予測」の技術だろう。空港から電車やバスに乗るまで、最寄り駅から競技場に入場するまでなど、訪日客が行列を作って待たされるシーンは多々ある。待ち時間が長くなると人々のフラストレーションがたまり、無用なトラブルに発展することも考えられる。現在の混雑状況を把握し、そこから未来の混雑状況を予測することは、おもてなしを提供するうえでとても重要なポイントだ。

 そこでNTTの研究所が一丸となって開発しているのが「時空間多次元集合データ分析」。なにやら難しい言葉が並んでいるが、過去の一定期間のデータから、数時間程度未来に起こる事象の発生時間と場所を予測する技術だ。NTTによれば「時間」と「場所」を同時に特定する予測は従来は難しかったという。

 この技術を人の流れに適用して、将来の混雑を予測する。混雑が予測できれば、例えば、空港からの電車の混雑具合を予測し、混雑する時間帯はシャトルバスに誘導する、レストランの行列を予測し、空いているレストランに誘導する、といったことが可能になる。この結果、待ち時間が減り、人々のイライラを少しでも緩和できるわけだ。前述した羽田空港の実証実験でも人流予測から比較的空いている出国手続きの窓口をプロジェクションマッピングを利用して表示するといったことを実験している。

混雑する場所をプロジェクションマッピングを使って、案内する実証実験
混雑する場所をプロジェクションマッピングを使って、案内する実証実験
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 さらにイベントを活用することで人流予測の実証実験は着々と進んでいる。2016年1月には、niconico(ドワンゴが運営する動画サービス)が主催する「闘会議2016」で、会場内の混雑度をリアルタイムに把握。その結果を来場者には、「niconico event+」と呼ぶアプリを通じて混雑度マップとして提供した。自分の現在位置とブースの混み具合が一覧できるので、参加者の安全な回遊を支援できたという。一方、運営会社であるドワンゴには、数十分先の混雑状況を提示し、混みそうなブースにはあらかじめ参加者が流入しないように誘導するといった検証を行った。

混雑度マップ。自分の位置と会場の混み具合を一覧できる
混雑度マップ。自分の位置と会場の混み具合を一覧できる
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 さらに2016年4月に開催され、15万人以上が来場した大規模イベント「ニコニコ超会議」(主催:ニコニコ超会議 実行委員会)でも、会場内の巨大スクリーンに「超混雑度マップ」を設置するなどの検証を実施。新しい人流予測のアルゴリズムを試すとともに、オリジナルグッズの配布告知から人の流れがどのように変化するかなどの実験を行ったようだ。こうした実証実験からさまざまなデータを取得することで、予測精度は順調に向上しており、2017年はイベント全体の人の流れを最適化するためのシナリオを試す計画という。

超混雑度マップ。数分後の混み具合などを表示
超混雑度マップ。数分後の混み具合などを表示
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