2020年の実用化を目指し、各社が開発を進める高速・大容量モバイル通信規格「5G(第5世代移動通信方式)」。NTTドコモは、5Gのエンターテインメント分野での有効性を検証すべく、8月4日から6日まで開催されたアイドルライブイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL 2017」(以下、TIF2017)で実証実験を行った。

 実証実験の主役は、フジテレビとドコモが共同で開発した新サービス「JidorAR(ジドラー)」。JidorARは、「自撮り+AR(拡張現実)」を意味する造語で、高速・大容量、低遅延が特徴の5Gを活用することで実現可能になったコンテンツだ。

 JidorARを使うと、あらかじめ3Dスキャナーで撮影した3Dアバターを、スマホのカメラからの背景映像に、AR機能を通じて合成表示できる。TIF2017では、ユーザーがあたかもステージ上でアイドルと共演しているかのような映像をスマホで楽しめる。スマホのキャプチャー機能で好みのシーンの“自撮り”も可能だ。

 TIF2017の会場では、JidorARの体験会が3日間にわたり「NTTドコモ×フジテレビ 5Gステージ」で行われた。初日は、今年6月にメジャーデビューを果たし、人気急上昇中のアイドルグループの「まねきケチャ」と、事前に応募した約100人のファンが“AR共演”を果たした。

まねきケチャは2015年8月にお披露目された4人組のアイドルグループ
まねきケチャは2015年8月にお披露目された4人組のアイドルグループ
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息の合ったダンスを見せるメンバーと3Dアバター

 体験に参加したファンは、事前に自分の顔を3Dスキャンしており、専用アプリをインストールしたスマホをステージにかざすと、自分の3Dアバターが表示されてビックリしていた。ステージ全体がARマーカーになっているので、スマホを多少動かしても3Dアバターが消えることはない。

 この日、まねきケチャが演奏した4曲のうち、3曲目の『冗談じゃないね』が“AR共演”の対象曲。曲が始まると、カメラ越しに映っているメンバーに合わせて、3Dアバターが同じ振り付けでダンスし始めた。

「JidorAR」の体験会では、専用アプリをインストールしたスマホが一斉にステージに向けられた
「JidorAR」の体験会では、専用アプリをインストールしたスマホが一斉にステージに向けられた
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 手足を上下するタイミングなどでも動きのズレはほとんど気にならない。息の合ったダンスを見せるメンバーと3Dアバター。途中、メンバー4人が1列に並んで前の人の肩を持ちながらステージを1周するシーンでは、アバターが最後尾からメンバーを追いかけていた。

 アバターがメンバーと同じ振り付けで踊れるのは、ライブ中にスピーカーから流れてくる音声を認識し、アプリ内で3Dアバターの動きを細かくコントロールしているためだ。また、アバター向けの衣装は、ステージ上のメンバーと同じデザインのコスチュームが用意されたほか、プロレスラーや着ぐるみなど遊び心があるデータも用意されており、タッチひとつで次々に変更できた。

「JidorAR」のiPhone向けアプリの画面。メンバーの右に登場しているのが3Dアバター
「JidorAR」のiPhone向けアプリの画面。メンバーの右に登場しているのが3Dアバター
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会場では5Gの通信速度がモニターされていた
会場では5Gの通信速度がモニターされていた
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 専用アプリにはSNSとの連携機能も用意されており、ツイッターなどでの情報発信も容易。この日のステージのMC中にメンバーの宮内凛は、「あまりステージにスマホを向けられることがないので緊張します」と話しながらも、「撮った画像はぜひ拡散してください!」と、ファンに向かって呼びかけていた。

アイドルイベントが5Gの実証実験に選ばれた理由

 今回、5Gを活用した新サービスの体験会が、TIF2017で行われた理由について「お台場周辺が5G総合実証試験の実施場所に選ばれているのが大きな理由の1つ。またアイドルファンは、(普段からSNSを活用するなど)ITリテラシーが高いうえ、画面上で一緒に踊れるといった目新しい点に興味を持ってもらえるのではないかと考えた」とNTTドコモ関係者は話す。

 NTTドコモは、5Gの特徴を生かす応用分野のなかから「スマートシティ/スマートエリア」や「医療」と合わせて「エンターテインメント」に着目しており、今後もアプリケーション・サービスを想定した実証試験を行う予定という。

 今回の体験会では、ファンに加えて関係者など合計200人弱が一度にネットワークに接続し、3Dアバターをリアルタイムで制御することにほぼ成功していた。フジテレビとドコモは、「JidorAR」の改良を進めるほか、今後も5G技術を生かした新しい体験、サービスを共同で創出する計画だ。

(写真・文/上原太郎=イベント企画部)