街中に複数の自転車貸出拠点(ポート)を設置し、利用者が必要なときに自転車を貸出・返却できるようにするシェアサイクルの利用者が増えている。従来は地元の自治体が観光目的などで実施していたが、最近ではその仕組みを事業化し、シェアサイクル事業に参入する企業も増えてきた。

 シェアサイクル事業の最大手といえるのは、NTTドコモ傘下のドコモ・バイクシェア(東京・港)だ。ドコモ・バイクシェア広報担当の山口恵さんによると、現在会員数が急速に伸びており、2017年3月末の時点で20万人だったが、2017年3月末では34万人に増加したとのこと。「特に、朝夕の通勤に使う人が多く、1回30分以内の利用がほとんど」(山口さん)だという。

ドコモ・バイクシェアの電動アシスト自転車。赤と黒のツートンカラーが特徴的だ
ドコモ・バイクシェアの電動アシスト自転車。赤と黒のツートンカラーが特徴的だ
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バッテリー切れや故障は手作業で対応

 ドコモ・バイクシェアは地方自治体と共同でサービスを運営し、東京や横浜、大阪、仙台、沖縄など全国で展開しているサービスだ。このうち東京都内の千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区、練馬区の10区では、「自転車シェアリング広域実験」を実施。練馬区を除く9区では、区をまたいだすべてのポートで自転車の貸出・返却ができる。利用料金は30分150円(税別)。専用駐輪場は9区を合計すると470カ所設置されており、自転車数は5600台に及ぶ(2018年6月末時点)。筆者は実際に利用してみたが、提供する自転車にはすべて電動アシスト機能が搭載されており、通常の自転車以上に快適だった(関連記事:バイクシェアってどう使う? 快適? 実際に乗ってみた)。

 ただ、サービスの利用者が増えるに伴い、懸念されるのが、ポートによって自転車台数のバランスが崩れることだ。利用者数が多いと、利用頻度の高いポートと少ないポートでは台数に偏りが出てしまい、いざポートに行ってみたら自転車がなかったという事態になりかねない。そのため、「自転車専用の配送トラックを24時間走らせ、台数の多いところで自転車を回収し、少ないところに配置する工夫をすることでバランスをとっている」(山口さん)という。

 また、電動アシスト機能が付いているからこそ起こりうる問題がバッテリー切れだ。これについては、定期巡回する中で、バッテリー残量が少ない自転車は電池パックを入れ替え、パンクしている自転車は交換するなど、手作業で対応している。さらに、年に2回は倉庫ですべての自転車を集めて解体し、故障している部品を交換しているとのことで、メンテナンスは万全だ。

自転車のバッテリーパック
自転車のバッテリーパック
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 以上は自転車側の問題だが、ユーザー側に起こりうるトラブルとして利用中の事故がある。ドコモ・バイクシェアでは、自転車を利用する時点で自動車保険が自動的に付保される。自身のけがについては、死亡・後遺障害の際に1000万円、入院保険が日額5000円、通院保険が2500円、第三者への賠償としては、対人・対物とも2億円の保険金額が保証されている。

 「最近では個人会員だけではなく、法人会員も増えている」と山口さん。営業などで自転車を利用する企業は、最寄りのポートからシェアサイクルサービスを利用することで、自社で自転車や駐輪スペースを確保する必要がない。メンテナンスも不要だ。また、先述した保険が付保されているので、万一の事故への対策にもなる。法人プランの利用料は1台に付き月額2000円から(別途1契約に付き500円のICカード発行手数料が必要)。

増えるシェアサイクル事業への参入企業

 こうしたシェアサイクルのニーズを見据えて、参入する企業も増えてきた。2017年2月には、大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパン(東京・千代田区)がドコモ・バイクシェアと共同でシェアサイクルサービスを開始。ドコモ・バイクシェア側がセブン-イレブンの敷地内にポートを設置する形で展開しており、現在都内には約40か所のセブン-イレブンにポートが設置されている。セブン-イレブン店舗内のマルチコピー機では1日パス券の発行もでき、気軽に貸出・返却ができるのが魅力だ。

 セブン-イレブンに次ぎ、2018年3月には賃貸斡旋などを行うAPAMAN(東京・千代田)もシェアサイクルに参入した。こちらはソフトバンク系のOpenStreetが運営するシェアサイクルサービス「HELLO CYCLING」と提携し、「ecobike(エコバイク)」のブランド名で 2018年5月から福岡エリアでサービスを開始した。

 また、フリマアプリの「メルカリ」を軸に事業を展開するメルカリが「メルチャリ」というブランド名でシェアサイクル事業を始め、福岡県などでサービスを開始(関連記事:メルカリがシェアサイクル参入、駐輪場もシェアリング)。LINE(東京・新宿)も2018年に中国系のモバイクと提携して、シェアサイクル事業を開始する方針を示している(関連記事:LINE参入のシェアサイクルに待ち受ける試練)。各サービスとも現時点では利用エリアが限られているが、企業参入が活発化することで、今後全国に広がっていきそうだ。

メルカリもシェアサイクル事業に参入
メルカリもシェアサイクル事業に参入
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(文/吉成早紀=アバンギャルド)

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