2018年6月20日から23日まで、米アナハイムのコンベンションセンターで、ユーチューバーの祭典「VidCon(ビドコン)」が開催された。100万以上のフォロワーがいる著名なユーチューバーだけでなく、動画に関係するクリエーターや企業、マーケターまで、幅広い出席者が約3万人集まった。

 ユーチューバーの祭典「VidCon(ビドコン)」は、動画共有サイトの「YouTube」で100万超や1000万超のフォロワーがいる有名ユーチューバーとそれを目当てとする若者でにぎわった。いち早く生の情報を得ようと集まった、動画の撮影や編集のクリエーターたちも多く目についた。

多くの若者でにぎわったビドコンの展示スペース
多くの若者でにぎわったビドコンの展示スペース
[画像のクリックで拡大表示]

 ユーチューバーは著名になっても基本的に自身のカメラで撮影し、パソコンで自ら編集している。そうした彼ら、彼女らの投稿する動画を見ると、驚くほどいい画質でしっかりと編集されていることに気づく。プロと同等かそれに準じた機材を使用して撮影や編集を行う様子もしばしば動画に映り込む。

 多くのフォロワーを獲得し見続けてもらうには、投稿する内容が興味を引くものであるのはもちろんのこと、映像や音声の品質も問われるからだ。スマートフォンやパソコンだけでなく、家のリビングの大画面ディスプレーでYouTubeを見る視聴形態も増えている。

 ビドコンにはこうした「ユーチューバー市場」に次のビジネスチャンスを見いだしたり、ブランディングをしたりしようとする企業が多く出展した。

キッズユーチューバーの反応探るキヤノン

 キヤノンはビドコンではユーチューバー向けに一眼デジタルカメラのボディーやレンズを展示してきたが、今年は若者向けの市場にフォーカスしたコンセプトを打ち出した。

 なかでも注目を集めていたのが、スマホを持たない小学生などのキッズ向けのデバイスだ。小型かつシンプルな本体で動画を撮影し、Wi-Fi経由で動画をYouTubeに容易にアップロードできるようにするものだ。現時点で本体はモックアップだが、その日の気分でボディーのデザインを変えることができる。

キヤノンが展示したキッズ向け動画撮影デバイス
キヤノンが展示したキッズ向け動画撮影デバイス
[画像のクリックで拡大表示]

 キヤノンの説明員は「動画のマーケットが盛り上がっているので、活用する層を広げたい。ビドコンでは意見を聞いたり、反応を見たりできればと思っている。できれば製品を2018年中に投入したい」と話してくれた。

 このほか対象物を追跡して撮影ができる小型カメラも披露した。業務用監視カメラの小型版のイメージである。動きのあるスポーツシーンを撮影したり、自撮りの際に移動しながらレポートしたりすることを想定している。

被写体を自動で追跡する小型カメラ
被写体を自動で追跡する小型カメラ
[画像のクリックで拡大表示]

 キヤノンブース近くのオーディオテクニカはヘッドフォンやマイクを展示していた。

 同社はユーチューバーに評価されているマイクメーカーの1つで、来場者がその場で音質をチェックできるようにしていた。また、撮影するインタビュー対象などにつけたピンマイクの音声を、ワイヤレスで一眼レフなどの音声入力に転送できる無線システムの説明にも力を入れていた。

マイクメーカーとしても知られるオーディオテクニカ
マイクメーカーとしても知られるオーディオテクニカ
[画像のクリックで拡大表示]

 有名ユーチューバーの多くは、一眼デジカメにさまざまな装備を追加して撮影している。そうした仕事道具を支えるのが三脚だ。三脚メーカーの米JOBYはたくさんの製品を展示し、ユーチューバーは自分のカメラを付けて試すなどしていた。JOBYはデジカメだけでなく、スマホやタブレットなど多様なデジタル機器を取り付けて動画が撮影できることを訴求し、購入層の拡大を図っていた。

三脚メーカーの展示も多くのユーチューバーが注目していた
三脚メーカーの展示も多くのユーチューバーが注目していた
[画像のクリックで拡大表示]

ユーチューバーとコラボしたスマホ向け新ツール

 米アドビはビドコンに合わせて、YouTubeなどオンライン動画向けの編集ツールの新製品を発表した。「Project Rush」と呼ぶプロ向けのツールで、スマートフォンでもデスクトップと同様の機能で動画を編集できるようにしたものだ。コンテンツはクラウドで同期しており、パソコン上のデスクトップ版でも編集を引き継ぐことができる。

 アドビのProject Rushの製品責任者は「ユーチューバーはあらゆる場所で撮影したコンテンツを独自のストーリーで編集し、YouTubeやInstagramなどさまざまなチャネルに投稿している。こうしたユーチューバーにインスパイアされて開発したのがRush。外出先にもコンテンツを持ち歩いているようなもので、どこでも気づいたときにちょっとした時間でも使ってもらいたい」(ダニエル・ダービー プロダクトマネージャー)とコンセプトを説明する。

アドビは著名ユーチューバーの「Shameless Maya」(右)とコラボして動画編集の新製品を発表した
アドビは著名ユーチューバーの「Shameless Maya」(右)とコラボして動画編集の新製品を発表した
[画像のクリックで拡大表示]

 アドビはProject Rushをビドコンでお披露目するにあたり、著名ユーチューバー「Shameless Maya」とコラボした。Shameless Mayaはファッションやコスメの分野のライフスタイルコンテンツを得意としており、さまざまなファッションスタイルや化粧中の様子を動画で公開。YouTubeで110万以上のフォロワーを集めている。

 Shameless Mayaはカメラマンとしてのスキルも持っており、動画の扱いも得意だ。YouTubeで編集作業の様子を公開するなどしている。アドビ製品も使いこなしている。今回、Rushを利用して、デスクトップで扱っていた動画をスマホに引き継いで編集するデモを披露した。

Shameless Mayaの動画をスマホで編集しているところ
Shameless Mayaの動画をスマホで編集しているところ
[画像のクリックで拡大表示]

 Shameless Mayaはアドビの展示ブースにも登場。小中学生と見られるファンなどから寄せられる、「YouTubeで見てもらえる動画の作り方は?」などの熱心な質問に答えていた。

 ビドコンを動画関連の各社が重視するのは、新たな成長市場であるのと同時に、そこに有名ユーチューバーとそれを目指す若者らが参加しているからだ。実際に使ってもらってよさを知ってもらうことで、それがインフルエンサーである彼ら、彼女らのチャンネルで拡散していく可能性がある。

(写真・文/市嶋洋平=シリコンバレー支局)