日本でも少しずつ認知が広がってきたeスポーツ。そんな日本は、世界から見るとeスポーツ後進国と言われている。例えば、韓国ではプロゲーマーが活躍する土壌が整っており、世界で活躍している選手が多い。米国では格闘ゲーム大会の「EVO」や「Dota2」を扱ったeスポーツイベントで賞金総額が過去最多の「The International」など、数々の大型eスポーツ大会が開催されているし、欧州ではサッカーのクラブチームがeスポーツチームを運営している。中国ではアリババやテンセントなど大手IT企業がこぞってeスポーツに参戦しており、eスポーツの授業を必修科目としている学校もある。アジア圏は特にeスポーツに関心が高い。2018年8月にインドネシア・ジャカルタで開催されるアジア競技大会では、eスポーツが公開競技に採用された。

台湾のeスポーツ事情 スポンサー企業には税金軽減も(画像)
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 今後日本でもeスポーツは盛り上がるのか。それを占ううえで参考になるのが、日本より少し進んでいる台湾の状況だろう。台北ゲームショウなどを手がける台北市電脳商業同業公会 副総幹事である黄氏に、台湾のゲーム事情、eスポーツ事情について話を聞いた。

台北市電脳商業同業公会 副総幹事 黄氏(写真中)
台北市電脳商業同業公会 副総幹事 黄氏(写真中)
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 台湾では2018年5月に『モンスターストライク』の4周年記念イベント「眉飛肆舞」でeスポーツの大会が行われた。日本で絶大な人気を誇るスマートフォン向けゲーム『モンスターストライク』は台湾でも人気が高く、ダウンロード数が600万を超えている。台湾の人口が2350万人だから、台湾の4人に1人がプレーしているということになる。

 大会も高雄と台北で予選を行い、50チーム、200人以上が参加した。ちなみに『モンスト』の海外でのeスポーツ大会は今回が初めて。同時に香港でも予選があり、6月30日には幕張メッセで行われる「XFLAG PARK2018」のイベントの1つとして、台湾代表、香港代表、日本代表の三つ巴による対戦大会が開催される。

「眉飛肆舞」ではeスポーツイベント以外にもさまざまな催し物や展示物でお祝いをしていた。フォログラフによるバーチャルアイドルのライブも行われた
「眉飛肆舞」ではeスポーツイベント以外にもさまざまな催し物や展示物でお祝いをしていた。フォログラフによるバーチャルアイドルのライブも行われた
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優勝した高雄代表の「夏夕夏景」。6月30日に日本にやってくる
優勝した高雄代表の「夏夕夏景」。6月30日に日本にやってくる
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台湾のeスポーツ事情 スポンサー企業には税金軽減も(画像)
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eスポーツ大会のスポンサーは税金軽減措置が

 台湾のeスポーツは、中国や韓国ほど先行しているわけではないが、ゲームメーカー主催で月に1~2回はeスポーツ大会が開催されており、優勝で1000万円もの賞金を出している大会もある。学校にはeスポーツの部活や同好会があり、プロ選手は120~150人はいると見られている。

 プロゲーマーの知名度もそこそこ高い。従来のスポーツ選手が国民的スターだとすると、eスポーツ選手はインフルエンサーのような存在。ただし、日本とはマスメディアの事情が違う。台湾のテレビチャンネルは100以上あるため、ネットのインフルエンサーとテレビタレントの境目は日本より曖昧だ。見方によればテレビタレント並みの人気を誇るeスポーツ選手もいる。

 日本では、法律の壁から高額賞金が出る大会が開きにくいという問題があったが、ようやく解決の糸口が見え、今後は風俗営業法や著作権法などをクリアしてeスポーツ施設を増やしていけるかどうかが普及に向けた課題となっている。国や自治体が舵取りをすれば話は早いが、そういった動きはまだ活発ではない。しかし、台湾では国が動き出した。

 「昨年、日本の文化庁に当たる体育省に、eスポーツ部門が開設されました。これにより、今後は政府が動いてくれるようになると思います。現状でもeスポーツ大会のスポンサーになった企業は税金の軽減措置などが行われています。また、台湾には徴兵制がありますが、海外のeスポーツ大会で良い成績を残せば、兵役を務めたとみなされ、徴兵されずにプロ選手として活動ができるようにもなっています」(黄氏)

 民間企業もeスポーツに関心を持ち、投資をしているようだ。その1例が台北市にある三創生活。三創生活は市内のIT関連の店舗がひしめき合うエリアに建っているモールだ。日本の秋葉原を1つのビルに集約することを目標に作られたビルで、IT関連のショップや施設が多数入っている。

 その中にもeスポーツ関連の施設が散見された。1階と6階にはエイスーステック・コンピューター(ASUS)が運営するショップ兼eスポーツ施設があり、筆者が訪問したときはどちらも大会が開催されていた。イベントの様子を動画で配信できる設備が整っており、6階の施設では実況解説用のブースもあって、本格的な動画配信ができるようになっていた。

特徴的なフォルムの三創生活
特徴的なフォルムの三創生活
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12階までさまざまなIT関連のショップが入っている
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1階にあるeスポーツ施設を兼ねたショップ
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6階にある施設は会場が広く、動画映えするように席が設置されている
6階にある施設は会場が広く、動画映えするように席が設置されている
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 他にもVRが体験できるコーナーや台湾のスマートフォンのキャリアショップ、各スマホ機器メーカーのショップなどに加え、親子で遊べるコーナーや飲食フロアなどもあり、家族連れで1日中居ても飽きることなく楽しめるようになっている。

 ここのeスポーツ施設は曜日と時間帯によっては、無料で借りられるので、大学のサークルや中学校高校の部活などで利用することもできる。実際に当日1階の施設で行われていた大会は大学の有志で集めた人々によるもので、今回が初めての大会だった。気楽にeスポーツイベントを開催できる環境は、日本にもぜひとも欲しいところだ。

VRの体験ができる店舗もあった
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飲食も充実している
飲食も充実している
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 韓国や中国に比べれば、日本と同様にまだ発展途上である台湾のeスポーツだが、eスポーツ普及のための施策が官民問わず行われている点は一歩進んでいる。日本ではまだゲームメーカー主導だが、eスポーツを盛り上げるには、自治体や教育機関、民間などが一体となった施策が欲しいところだ。

(文/岡安学)

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