昨年の米大統領選で有名になった「フェイクニュース」。「フェイク」(fake)は模造品、まやかし物といった意味の英語。報道記事に似せたフェイクニュース(偽情報)を掲載するサイトは以前からあったが、今回の大統領選を経て、その弊害が本格的に問題視されるようになっている。
フェイクニュースは大きく4つに分類できる(図1)。まず、政治的な意図があって、特定の候補や政党への支持を集めようとするもの。先の米大統領選では、特定の候補が「不正な行為をしている」という偽ニュースが出回り、大きな問題になった。
次に、読者を特定の宗教や思想に傾倒させることを目的としたサイトもフェイクニュースの一種だ。広告収入のために、ページビュー(閲覧数)を増やすことだけを考えているサイトは、事実確認をおろそかにした、いいかげんな記事の温床だ。さらに、ジョークや風刺サイトも本来は、それとわかって読むユーザーに楽しまれてきたが、偽ニュース批判のとばっちりを受け、今や同列として問題視されるようになってしまった。
大手のウェブサービスも退治に乗り出す
こうした動きを受け、フェクニュース対策が活発化してきた。非営利の団体がニュースサイトの政治的な偏りや情報の信ぴょう性を調査し、結果を公開していたり、開いたページの“フェイクニュース度”を自動で表示するクロームアプリ(クローム専用の拡張機能)が開発されたりといったように、ユーザーが偽ニュースにだまされるのを防ぐ仕組みが実現し始めている(図2、図3)。

大手のウェブサービスもフェイクニュース退治に乗り出した。フェイスブックはユーザーからの報告や外部組織による審査を通じて、怪しい内容のニュースフィードには警告を表示する機能を実装(図4)。グーグルも、検索結果についてユーザーがフィードバックを送れるようにしたり、疑わしい内容のサイトには警告を表示したりといった機能を提供し始めている(図5)。
(文/瀧口 範子=米国在住)