それぞれの利用者層に応じた動画作り

 このように両サービスには、共通点が多い。レシピ動画制作においては、全体を1分ほどにまとめて手順を簡潔に説明。動画の再生回数が重要となるため、再生にカウントされる最初の3秒間に魅力を詰め込み、フル再生を目指しているのも、共通している。半面、利用者層やニーズが微妙に異なるため、制作上の独自の工夫もある。

 DELISH KITCHENの場合、利用者のメインは20~40代の女性。日常的に料理をする人がいる一方で、料理に対して苦手意識がある人も多いという。そんな人たちにとっては、レシピが分かりやすいことに加え、「きちんとできた」という実感も大切だ。そこで、カメラの位置は俯瞰で固定し、演出よりも分かりやすさを優先。ライティングなどで仕上がりを美しく見せることよりも、実際の色に近くなるようなライティングにしている。

 これに対し、Kurashiruの場合、利用者のメインは同じ20~40代の女性だが、ほとんどが普段から料理をする人だという。「(夫や子供など)誰かのために料理を作る人が多いので、レシピ動画では料理への期待感を高めることを意識している」(田中氏)。カット割りを工夫し、映像から“シズル感”を感じられる演出がある。

DELISH KITCHENの動画は俯瞰でカメラを固定
DELISH KITCHENの動画は俯瞰でカメラを固定
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Kurashiruは手順によって、俯瞰にしたり横から撮ったりとカット割りが変わる
Kurashiruは手順によって、俯瞰にしたり横から撮ったりとカット割りが変わる
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Kurashiruでは、利用者を惹きつけるため、編集者が手をかけて動画編集を行う
Kurashiruでは、利用者を惹きつけるため、編集者が手をかけて動画編集を行う
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 レシピ動画サイトの中には、ユーザーが投稿したレシピを企業で動画にして公開しているところもある。だが、両社がこだわるのはプロのレシピ、プロの手順だ。DELISH KITCHENの菅原氏は、「ユーザーが投稿するレシピには、一般の人ならではのアイデアもあるが、具材の分量や手順の書き方がざっくりとしていて、料理をしない人にとっては分かりにくい。失敗すると、料理への苦手意識がより強くなってしまう」と指摘する。Kurashiruの田中氏も「一般の人がレシピを発信するのが当たり前になった今、レシピの質が求められるようになっていると感じる」という。両社とも、人気の背景にはプロによる「きちんとしたレシピ」がほしいというニーズがあると見る。

 これまでは両サービスとも利用者を増やすことに力を注いできたが、今後は、無料のサービスを主体に、いかに利益を出すかを視野に入れている。DELISH KITCHENでは、食材や調理グッズといった商品の販売や、料理教室、イベントなどにもサービスを拡大したいという。また、Kurashiruは、既に始めている有料のプレミアム会員制度にも注力していく考えだ。

(文/大川晶子=スタジオノラ、写真/志田彩香)

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