旧態依然としていた現場の仕事をデジタルで効率化

 映画のデジタル化自体について、佐藤監督は「フィルムが素晴らしいのはもちろんだけど、デジタルなら(低予算の)小さな現場でも映画が作れる。デジタルになったことで何が出来るだろうと考えると、僕はワクワクするほう」だ。だからこそ、現場にiPadを持ち込んだのも約10年前と映画業界では早かった。

『図書館戦争』佐藤信介監督「iPadで映画史が動いた」(画像)
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 「iPad導入したてのころは、iPadしか持っていないと『信用ならないやつ』と思われそうで、紙の台本も手に持っていた。今は現場に持参してもほとんど開かない」(同)。キャストと現場でセリフを練るときは、Wordファイルで保存されている台本をiPadに表示して話す。「台本のセリフやト書きを書き換えたいとき、紙の台本やPDFだと書き込める量が物理的に制約されるが、Wordならいくらでも書き換えられる。台本は生ものなので、自由に書き換えがきくことは大切」(同)。

普段からワイヤレスのキーボードと小さなiPadスタンドも持ち歩いている。「台本もすぐに書き換えられる」(佐藤監督)
普段からワイヤレスのキーボードと小さなiPadスタンドも持ち歩いている。「台本もすぐに書き換えられる」(佐藤監督)
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 制作現場のデジタル化は、カメラをデジタルに替える、最新のCG技術を取り入れる、といった動きに比べると地味で注目されにくい。だが、「旧態依然としていた僕らの手の先、目の先の仕事」(同)を、Apple PencilやGEMBA Noteを使って効率化できる時が来た。「これまでのやり方を変えることに怖さは感じたが、思い切って変えてみた結果、目からウロコが落ちるようなこと、プラスになることがたくさんあった」と佐藤監督。写真に手描きで情報を書き込む説明方法や、図版、テキストをまとめる管理術など、監督の取り組みは、業種・職種を問わず、“現場”の仕事を持つ人への示唆に富むものと言えそうだ。

(文/赤坂麻実 写真/志田彩香)

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