撮影現場で絵コンテをササッと書き換え

 佐藤監督は、『図書館戦争』や『アイアムアヒーロー』など、過去の映画の撮影現場でiPad ProとGEMBA Noteを使い、監督業務を効率化してきた。だが、2018年に公開予定の新作『いぬやしき』の制作では、初めてGENBA Noteのビジネス版を導入した。ビジネス版の最大の特徴は、文書をメンバーのiPad間でリアルタイムに共有できること。同じファイルを開いて、それぞれが編集もできる。実際に『いぬやしき』の撮影中は、監督とスクリプター(撮影内容の記録など、監督の秘書的業務を担うスタッフ)、編集部の3者でGEMBA Noteを利用した。

 例えば、こんな使い方だ。撮影現場で、GEMBA Note上の絵コンテなどに監督が走り書きしておくと、監督がキャストやスタッフと話している間に、スクリプターが見やすく“清書”しておく。「こういう映像を撮っておきたい」「このコマとこのコマの間にもう1カット差し込みたい」という意向を監督が絵や矢印などで簡単に書き示しておけば、スクリプターが絵に枠線をつけたり、元の絵コンテに挿入したりしてくれるので、最初からそのコマが存在していたかのように整理されるのだという。しかも、整理後の状態を監督がその場で見られるので、伝達ミスが起こりにくく、双方のコンセンサスが取れた文書がその場で出来上がっていく。

追加したカットや削ったカットが赤字で書き込まれている『アイアムアヒーロー』の絵コンテ。『いぬやしき』では絵コンテもGEMBA Noteでスタッフと共有したので、こうしたメモもスクリプターが清書しておいてくれるようになったそうだ
追加したカットや削ったカットが赤字で書き込まれている『アイアムアヒーロー』の絵コンテ。『いぬやしき』では絵コンテもGEMBA Noteでスタッフと共有したので、こうしたメモもスクリプターが清書しておいてくれるようになったそうだ
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 整理された文書をすぐに使えるため、他のスタッフやキャストへの伝達も格段にスムーズになる。さらに、現場が撮影の進捗状況を書き込んでおくことで、離れた場所で作業している編集部も、リアルタイムで撮影の状況を把握できる。従来は、スクリプターがその日の撮影が終わった後、情報をまとめて紙に出力し、編集部へFAXで送信したり、PDF化してメールしたりする必要があったが、その手間も省けた。

『図書館戦争』佐藤信介監督「iPadで映画史が動いた」(画像)
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 GEMBA Noteで情報共有していないスタッフやキャストに資料を送る場合も、GEMBA NoteのページをキャプチャしてLINEなどで送信すればいい。従来は紙に出力していた資料のほとんどがタブレットで扱えるようになったことで、現場に持ち込まれる紙束も激減した。佐藤監督は「端的に言って仕事がかなり楽になった。僕らにとっては“映画史が動いた”というほどのインパクトかもしれない」と笑う。