写真、文書、メモ書き……まとめて管理できるのが便利

 佐藤監督が映画制作でiPad Proをフル活用するようになったのは、制作の過程でたまっていく写真や文書、メモ書きといった資料をまとめて管理できるツールが登場したことも大きい。

 佐藤監督が使っているのがiPhone/iPadで使えるデジタルノートアプリ「GEMBA Note(ゲンバノート)」だ。GEMBA Noteは、各ページに手書きやキーボードで文字を入力したり、絵を描いたり、写真やウェブページ、PDFを貼り付けたりと多機能なのが特徴。「映画の構想や制作の段階で監督がスタッフやキャストに伝えたいことは、実に多岐にわたっている。演出の8割は、何かのイメージを伝えること。伝えたい内容に応じて、文章や絵、写真など最適なツールをさっと選べるのはとてもありがたい」(同)。

 前述のロケハン写真や絵コンテ発注前の下絵描きのほか、美術や衣装のイメージ案のまとめなどにも、このアプリを使う。さらに、台本作成前に、ストーリーに入れたい要素や順番を検討するなど、従来は情報カードや付箋を使っていた作業も、GEMBA Noteに書き込むようになった。「情報カードや付箋は順番を入れ替えたり、片付けたりするのが面倒だった」(同)。GEMBA Noteは手描きができるので、文字に表情がつけられるのも利点という。「強い要望なら大きな字でグリグリ書けばいいし、逆にちょっとした補足は小さく書いておけばいい」(同)。

写真、手書きのイラストや文字、テキスト入力した文字など、さまざまな情報がまとまっている
写真、手書きのイラストや文字、テキスト入力した文字など、さまざまな情報がまとまっている
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台本作成前、検討段階のメモ。アイデアなどが手書きでびっしりと書き込まれている
台本作成前、検討段階のメモ。アイデアなどが手書きでびっしりと書き込まれている
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『アイアムアヒーロー』の検討段階のメモ。劇中に登場するZQN(ゾンビ)の頭が吹っ飛ぶイメージを描いたもの。「なんとなく描いた絵がよかったので、後で拡大して、スタッフと共有する資料に貼り付け、配ったこともある」(佐藤監督)
『アイアムアヒーロー』の検討段階のメモ。劇中に登場するZQN(ゾンビ)の頭が吹っ飛ぶイメージを描いたもの。「なんとなく描いた絵がよかったので、後で拡大して、スタッフと共有する資料に貼り付け、配ったこともある」(佐藤監督)
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 入力した後の加工が簡単なのも、監督が評価する点。特に、手描きした絵を直感的な操作で編集できるところに使い道があると感じている。映画監督は絵コンテや小道具のイメージなど、絵を描いて説明することも多いが、「絵が下手な人も、描いた後に縦横の比率や各部の位置を修正できるから描きやすいのではないか。絵を写真や文章と組み合わせて使うと、格段に相手に伝わりやすくなる。以前はメールで何かを伝達した後に、補足のために電話をして、それでも伝わりきらず、結局は会って話すなんてこともあったが、無駄がなくなった」(同)。

『図書館戦争』の映画内に登場したポスターのイメージ。これだけの絵でも、ポスターをデザインするデザイナーにイメージを伝えやすいという
『図書館戦争』の映画内に登場したポスターのイメージ。これだけの絵でも、ポスターをデザインするデザイナーにイメージを伝えやすいという
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 入力した絵やテキスト、図などを四角や丸、あるいは自由な図形で囲んで範囲選択し、まとめて拡大・縮小したり、移動させたりもできる。「同じページにもう少し書き足したいと思ったとき、縮小してスペースを作り、追記したり、逆に一部だけを次のページにコピーして展開させたり、順番を入れ替えたり……自由に使えるのでストレスがない。紙は紙で便利だし、今でもたくさん使っているが、デジタルノートにはこれでしか出来ないことがある」(同)。