ロケハンではiPadで画像に人や車を描き入れる

 近年、アイデア出しから進行管理まで、映画制作の全過程でフル活用しているのがタブレット端末「iPad Pro」とタッチペン「Apple Pencil」だ。「iPadが出てきた10年ほど前から現場で使えないかと試行錯誤してきた」という佐藤監督だが、iPad ProとApple Pencilが登場し、ノートに近い感覚で手書きできるようになって利便性が一気に向上した。「使っていなかったころにはもう戻れない」と話す。

 例えば、ロケ地探し(ロケハン)で撮った写真をiPadに取り込み、Apple Pencilを使って手描きでシネマカメラの画角を想定した枠線を引いたり、本番で配置する人物や車、大道具などを描き込んだりする。そのほうが、ただ写真を見るよりも、その場所が撮影に適しているか判断したり、撮影のイメージをスタッフと共有したりしやすいのだという。「写真に書き込むことはパソコンでもできるが、現場で立ったまま使うのには適さない。その点、タブレットとタッチペンなら、ちゃっちゃと手書きできる。スタッフと共有するときも、画像ファイルにして送信すればいいので簡単」という。

『図書館戦争』の際、スタッフ間で実際に共有した画像。「必要なエキストラが50人なのか、80人なのか。写真に絵を描いて検討するとかなり正確に分かる」(佐藤監督)
『図書館戦争』の際、スタッフ間で実際に共有した画像。「必要なエキストラが50人なのか、80人なのか。写真に絵を描いて検討するとかなり正確に分かる」(佐藤監督)
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 この方法は、絵コンテを作るときも重宝するそうだ。佐藤監督が映画を撮るときは、映画のシーンをスタッフなどに仮で演じてもらって撮影する「ビデオコンテ」を最初に作り、それを絵コンテに起こす。「映像で1回作った方がイメージが伝わりやすいし、映像の勢いも消えないから」(同)。ビデオコンテの映像をキャプチャーし、その画像にApple Pencilで壁や建物のイメージを描き入れたり、足りないシーンだけを絵で書き起こしたりして、絵コンテの下書きを作る。それをプロの職人(コンテマン)に渡して、絵コンテに仕上げてもらうという。

『図書館戦争』の際、スタッフ間で実際に共有した画像。「必要なエキストラが50人なのか、80人なのか。写真に絵を描いて検討するとかなり正確に分かる」(佐藤監督)
『図書館戦争』の際、スタッフ間で実際に共有した画像。「必要なエキストラが50人なのか、80人なのか。写真に絵を描いて検討するとかなり正確に分かる」(佐藤監督)
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『アイアムアヒーロー』の絵コンテの下書き。ビデオコンテからキャプチャーした画像に壁や廊下の様子を手描きしてある
『アイアムアヒーロー』の絵コンテの下書き。ビデオコンテからキャプチャーした画像に壁や廊下の様子を手描きしてある
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こちらは手描きした絵コンテの下書き
こちらは手描きした絵コンテの下書き
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