今、中国の若者に刺さるのはトレンディードラマ

 では、「90後」世代の若者はどのようなコンテンツを欲しているのだろうか。Weidong氏は先のキーノートで、「90後」世代の視聴トレンドについても触れていた。

 「90後世代は常に新しい番組を求めている。これまで知らなかった世界を広げるストーリーが特に人気だ。ハリウッドのドラマよりも自分たちの文化になじんだものをより好む傾向が強く、それに応えるため、Youkuでは5年前からオリジナルコンテンツを制作し始めた。この2年間でドラマやバラエティーなどオリジナルコンテンツのラインアップは一気に増えている」(Weidong氏)

アリババ・メディア&エンターテイメント・グループのYang Weidong氏(右)
アリババ・メディア&エンターテイメント・グループのYang Weidong氏(右)
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 Netflixなど動画配信サービスの多くと同様、人気があるのはやはりドラマだ。過去1年間で、中国本土で制作されたドラマの数は約1万6000本。配信ドラマの数は既存のテレビ局が制作する本数を上回るほど伸びている。

 人気のジャンルは主に歴史、サスペンス、ラブロマンスの3つ。中国で2017年に最も話題になったドラマは『人民的名義』というもので、Netflixで配信され、プライムタイム・エミー賞を受賞した『ハウス・オブ・カード 野望の階段』に影響を受けたのか、政治汚職を描いたものだった。また2018年の注目作は、過去にヒットした『我的男神』のスピンオフ版。日本で1990年代に多く作られたトレンディードラマのような、都心を舞台にした男女のラブストーリーが「90後」世代の中国の若者に刺さるという。

 バラエティー番組も定着しつつある。世界中でヒットしているオランダ発の音楽オーディション番組『The Voice』の中国版が火付け役となり、海外テイストの番組が次々と「90後」世代に向けて作られるようになった。Youkuでは、米NBCのダンスバトル番組の中国版の注目度が急上昇。参加希望者が殺到している。

 日本では若者の支持を得にくいドキュメンタリーに、中国の「90後」世代が注目していることも分かった。特に経済や人物にフォーカスした内容が人気だ。北京発の『DOCO』というドキュメンタリー専門プラットフォームは、あえて若い女性層を狙い、女性受けするブランディング戦略で攻めている。

 さらに、有料会員向けには「ネット映画」といわれる新たなジャンルも流行し始めた。ネット限定で配信され、YouTuberのようにネット上で顔が売れている出演者がキャスティングされることが多い。映画館では配給されないが、映画並みの2時間程度のオリジナル作品で、日本を舞台にした任侠ものまである。日本のマンガで育った「90後」世代の一定層にニーズがあるという。

「90後」世代の興味を引く仕組みを採用

 中国の動画配信サービスでは、サイトのトップに「90後」世代の興味を引くようなショートビデオクリップを並べ、それが気に入れば、フル尺を有料でダウンロードできるスタイルが増えている。気に入った番組をSNSなどで手軽にシェアできる仕組みも若者の心をつかんだ要因だろう。

 一方で、見せかけだけのショートクリップが多く出回っていることやドラマ人気によって出 演者のギャラが高騰していること、常につきまとう中国政府の規制方針変更など、問題を指摘する声もある。だが、目が肥え始めた中国「90後」世代は量より質への転換も早いはずだ。

 Weidong氏は「オリジナルコンテンツの制作クオリティーを上げたい。海外パートナーを広く求めている」と公言している。このことからも、日本を含む海外企業の中国市場進出の動きは、今後一層活発化するだろう。

長谷川朋子
長谷川朋子 テレビ業界ジャーナリスト、コラムニスト。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した記事を多数執筆。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIPを約10年にわたって現地取材し、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界権威の「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、行政支援番組プロジェクトのファシリテーターなども務める。