言語が英語でなくても世界でヒットする時代に

 AmazonやNetflixが台頭していることの影響は、制作費だけにとどまらない。番組制作の座組など、コンテンツ制作のさまざまな部分に変革を起こしつつある。カンヌのMIPTVに来場していたフジテレビ国際開発局事業開発部部長職の早川敬之氏は取引現場の様子をこう話す。

 「今、国際ドラマの共同制作は、企画はドイツ、スタジオは英国、キャストはスウェーデン、放送は英BBC、ネット配信は米Netflixというように、複数の国にまたがる案件が増えています。日本のテレビ局としても、グローバル展開するための契約条件などのノウハウを共有しながら、世界ヒットを目指した新たな企画を探っているところです」(早川氏)

 また、これまで日本にとっては大きな障壁だった言語問題にも変化が起こっている。近年、グローバルスタンダードである英語だけにこだわる必要性はなくなっているのだという。

 北米や中南米でヒットしているNetflixのオリジナルドラマ『ナルコス』は、麻薬取引によって莫大な富を築いた実在の人物パブロ・エスコバルと取締捜査官の戦いを描いたものだが、英語版よりもむしろラテン系言語版での視聴が伸びているということだ。

 早川氏は「動画配信サービス勢は、ローカル性の高いドラマにも注目しています。今や多言語対応が求められ、2000年当初の国際共同制作ドラマとはまるで状況が違う。主力のプレーヤーはネット動画配信が中心になり、バックエンドは着実に変わっています」と説明する。

MIPTVの基調講演には、Amazonスタジオのロイ・プライス副社長が登壇。ローカル色の強いオリジナルコンテンツに注力すると話した (C)V. DESJARDINS - IMAGE & CO
MIPTVの基調講演には、Amazonスタジオのロイ・プライス副社長が登壇。ローカル色の強いオリジナルコンテンツに注力すると話した (C)V. DESJARDINS - IMAGE & CO
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 こうした出口の変化は、クリエーティブな部分にも新しい風を吹き込んでいる。「従来のテレビドラマは、分かりやすいものでなければいけなかった。そう教えられて作ってきました。けれども今は、複雑に作られたドラマが世界市場では主流になっています」(早川氏)

 ストーリーや設定が複雑に作られた作品だと、視聴者はより深く理解しようとして2度、3度とリピート視聴するようになる。それが有料モデルであるネット動画サービス勢の狙いなのだという。

 こうした世界市場の変化に日本はついて行っているのか。

 5月17日にリニューアルオープンしたHuluや、『亀田興毅に勝ったら1000万円』生配信で視聴者が殺到し、一時はサーバーがダウンするなど、話題を提供し続けているAbemaTVなど、日本でもようやくネット動画配信サービスに対する関心が高まっているように見える。

 しかし、競争の舞台が世界に移る中で、ドラマ制作コミュニティーに参加している日本の放送局や制作会社はまだまだ少ないのが実態だ。これは、日本が世界第2位のコンテンツ市場規模で居続けたため、内向き志向が根深いことが大きな要因だが、今、起こっている構造の変化に可能性をもっと見出すべきではないか。日本が二の足を踏んでいる間に、中国最大手の動画配信サービスiQYI(愛奇芸)はNetflixとライセンス契約を結び、韓国も新しいドラマ制作コミュニティーに関心を寄せている。グローバル市場において優位性を維持する余裕は決してない。

(文/長谷川朋子)