講談社は、ネット上に自分だけの書店を開設できるサービス「じぶん書店」を5月15日より正式に開始した。同社が販売する電子書籍(漫画を含む)の中から好きな本を集め、推薦文とともに公開して販売できる。

 “自分だけの書店を経営できる”という本好きの琴線に触れるユニークなサービスについて講談社の吉村 浩氏と佐藤敏浩氏にその狙いなどを聞いた。

じぶん書店のトップ画面。スマートフォンに最適化され、ボタンや文字が大きく配置されている
じぶん書店のトップ画面。スマートフォンに最適化され、ボタンや文字が大きく配置されている
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電子書籍の“気づきの場”を作りたい

 じぶん書店は、3月9日に概要が発表され、4月20日に事前登録がスタート。ツイッターやフェイスブックで話題になったことなどから、予想を上回る登録者数になっているという。内訳としては20代から40代が多いようだ。5月15日の時点では、約4000の一般ユーザーの書店がオープンした。

 本好きにとってありそうでなかったじぶん書店を開設するきっかけについて吉村氏と佐藤氏は「個々の作品に気づいてもらうこと」と口をそろえた。その背景には現在の電子書籍の販売方法が抱える問題がある。

 「(講談社が発行する)約3万2000冊の電子書籍のうち、販売する各サイトのトップ画面に並ぶ作品はせいぜい10点が限界です。ユーザーが意図を持ってタイトル名を検索しないと、個々の作品にたどり着けません。そのためユーザーが知らない作品を、そのユーザーに認知して気づいてもらうのが難しい状況です」(吉村氏)

 では、電子書籍の“気づきの場”をどのように作るのか? すぐに思い浮かぶのは電子書籍の書棚や書評のサービスだろう。だが、「書評サービス」というと、どうしてもユーザーが堅苦しく身構えてしまうためなかなか広まらないと考えた。

 「書評ではなく、シンプルに作品を『面白い』と伝えられるサービスを模索しました」と吉村氏。

 その結果、すでに世の中にある販売報酬サービスである「アフィリエイト」を一歩進めた仕組みとして、“書店+アフィリエイト”という形が企画された。それが今回のじぶん書店になった。トップ画面を見てもらうと分かるが、利用者が思い思いの書店名を付けられるなど、本好きなら「ちょっとやってみたい」と思えるサービスに仕上がった。

 「『昔、学校でクラスの誰かが買ってきた面白い本を借りて本を知った』という体験は誰にでもあります。同じような体験ができる場になってもらえたらと思います。無料で使えるので、ぜひ子どもたちにも使ってもらって、本を読むきっかけや新しい本と出会う場にしてほしいです」と吉村氏は語る。

講談社 販売局 局次長(デジタル事業統括担当)宣伝部 部長 ライツ・メディアビジネス局 局次長 吉村 浩氏(左)と、販売局 デジタル第一営業部 佐藤敏浩氏(右)
講談社 販売局 局次長(デジタル事業統括担当)宣伝部 部長 ライツ・メディアビジネス局 局次長 吉村 浩氏(左)と、販売局 デジタル第一営業部 佐藤敏浩氏(右)
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販売報酬は破格の10%!

 じぶん書店でお店を開くのは簡単。自分のアカウントを作成し、講談社が発行する約3万2000冊の電子書籍の中から、自分が推薦したい書籍をピックアップし推薦文を書いて登録するだけだ。

 じぶん書店の一番の魅力は、書籍の販売代金の10%が報酬としてアフィリエイトコインで支払われることだろう。現金ではないにしても10%はかなり高い報酬といえる。この点について吉村氏は「利用者にモチベーションを持って書店を経営してもらいたいため」と話す。

 アフィリエイトコインは、じぶん書店で電子書籍を購入したり、じぶん書店の機能拡張などに使用できる。また、ポイント交換サイト「ドットマネー(.money)」を利用することで、現金やTポイント、JALのマイレージなどとも交換が可能だ。現在の交換レートは10アフィリエイトコインで9マネーとなっており、現金に交換する場合は、10アフィリエイトコインで9円相当になる。

じぶん書店には大きく分けて書店の開設と書籍の購入という2つの機能がある。売る側にも買う側にもなれる
じぶん書店には大きく分けて書店の開設と書籍の購入という2つの機能がある。売る側にも買う側にもなれる
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書店を開く場合には、書店名や書店の説明を設定する
書店を開く場合には、書店名や書店の説明を設定する
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自分の書店に並べたい本を選び、キャッチフレーズの「推しコメタイトル」と推薦文の「推しコメ」を記入する
自分の書店に並べたい本を選び、キャッチフレーズの「推しコメタイトル」と推薦文の「推しコメ」を記入する
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タイトルを追加していくことで、150冊まで自分の書店に並べられる。150冊以上はアフィリエイトコインを使用することで拡張できる
タイトルを追加していくことで、150冊まで自分の書店に並べられる。150冊以上はアフィリエイトコインを使用することで拡張できる
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自分の書店に訪れた訪問者数を見ることもできる。訪問者の動向に合わせたラインアップの変更など簡易ながら本格的な書店運営もできる
自分の書店に訪れた訪問者数を見ることもできる。訪問者の動向に合わせたラインアップの変更など簡易ながら本格的な書店運営もできる
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アフィリエイトコインは「ドットマネー(.money) 」を利用することで、現金やTポイント、JALのマイレージなどとも交換が可能
アフィリエイトコインは「ドットマネー(.money) 」を利用することで、現金やTポイント、JALのマイレージなどとも交換が可能
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公式書店を通じて作家を応援できる

 作家や編集者による「公式書店」があるのもじぶん書店の魅力。ツイッターの公式アカウントのように、講談社が認めた作家本人の書店は「公式書店」という扱いになっており、その作家本人の著作や推薦する本を見ることができる。

 例えば、上田美和氏(ピーチガール)やかわぐちかいじ氏(沈黙の艦隊/ジパング 深蒼海流)、遠山えま氏(わたしに××しなさい!)、弘兼憲史氏(島耕作シリーズ)、藤島康介氏(逮捕しちゃうぞ/ああっ女神さまっ)、みずしな孝之氏(いとしのムーコ)といった著名な作家が既に70名以上も書店を開設している。佐藤氏によると、作家陣からの反応もよく、じぶん書店の書評をツイッターで拡散するなど、精力的に活動している人もいて「予想以上に面白い内容を作ってくれています」とのことだ。

講談社ならではの特徴が、作家や編集者による「公式書店」。画像はかわぐちかいじ氏の書店
講談社ならではの特徴が、作家や編集者による「公式書店」。画像はかわぐちかいじ氏の書店
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試し読みができるリンクをツイッターやフェイスブック、LINEなどに投稿できる機能も搭載している
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 公式書店で購入すると一般のユーザーと同様にアフィリエイトコインが作家に支払われる。自分の好きな作家を直接支援できるわけだ。

 さらに、好きな作家が自著以外でどんな作品を推薦しているのかを見られるのもじぶん書店の面白いところ。よく「本棚を見ればその人が分かる」と言われるが、自分の好きな作家が普段どんな作品を読んでいるかを知ることによって、作家や作品の原点を垣間見ることができるのは、好奇心を大いに満たしてくれるに違いない。

 このほかにもじぶん書店には、他のユーザーの書店をフォローする機能も備えている。好きな作品を紹介することで自分を知ってもらったり、同じ趣味を持つユーザーとつながったりと、「書籍を通したSNS」という側面も大きな魅力だろう。

 今後の展開として注力するのは、書籍の推薦文や「特集」というユーザーが決めた任意のテーマに沿った書籍リストの数を増やすことという。とにかく、作品を知ってもらう機会を増やすのが当面の目標だ。

 その一方で、販売できるコンテンツを拡大する計画も進める。現時点では、講談社の電子書籍だけが販売できるのだが、これをほかの出版社にも広げる。すでにいくつか他社から問い合わせなどもあるという。加えて、書籍だけでなく、動画、音楽の取り扱いも検討しているとのことだ。

 ヤングマガジン編集部に在籍するある編集者はじぶん書店を紹介するツイートで「変態的で偏愛的な書店を作ってください」と語っている。日本でもトップクラスの総合出版社である講談社の電子書籍を自分なりに集めれば、実にさまざまな“本のセレクトショップ”を作れるだろう。今後、どのようなユニークな書店が現れるか楽しみだ。

(文/シバタススム)

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