携帯大手3社が共同で発表した新しいコミュニケーションサービス「+メッセージ」。SMSを進化させた新しい技術「RCS」を採用し、電話番号を選ぶだけというSMSの手軽さはそのままに、写真やスタンプも利用できる「+メッセージ」は、携帯大手3社の「LINE対抗策」とみられているが、実際はどうなのだろうか。

スタンプも送信できるSMSの進化版

 4月10日、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社が共同で記者会見を開いた。そこで発表されたのが、3社が共同開発した新しいコミュニケーションサービス「+メッセージ」である。

携帯大手3社が共同で発表した「+メッセージ」。電話番号でメッセージのやり取りができる、SMSの進化系サービスだ
携帯大手3社が共同で発表した「+メッセージ」。電話番号でメッセージのやり取りができる、SMSの進化系サービスだ
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 これは、携帯電話の電話番号を利用して、最大で全角70文字のテキストをやり取りできるショートメッセージサービス(SMS)を進化させたサービス。メッセンジャーアプリと違って、アカウントの取得やログインの必要がないのがメリットだ。

 しかも「+メッセージ」では、テキストのみなら全角で最大2730文字まで送ることが可能。さらに最大100MBまでの写真や動画、音声、位置情報、そしてスタンプの送信もできるようになっている。メッセンジャーアプリの「LINE」のようなコミュニケーションをSMSで可能にしたサービスと考えていい。

「LINE」のように画像やスタンプなどのやり取りも可能で、SMSと比べると表現力が大幅に向上している
「LINE」のように画像やスタンプなどのやり取りも可能で、SMSと比べると表現力が大幅に向上している
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 もう1つ、大きな変化と言えるのが料金体系だ。従来のSMSは1通送信するたびに料金が発生する「通数課金」で、ドコモの場合は1通当たり3円かかる。だが「+メッセージ」では、送信したデータ量に応じてパケット通信料がかかる仕組みなので、定額プランを利用していれば料金を気にする必要がない。

SMSと+メッセージとの比較。機能面だけでなく、料金面でも1通当たりの課金から、送信したデータの容量に応じた料金体系となり、より安価にやり取りができるようになた
SMSと+メッセージとの比較。機能面だけでなく、料金面でも1通当たりの課金から、送信したデータの容量に応じた料金体系となり、より安価にやり取りができるようになた
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 「+メッセージ」の対応機種はドコモ、au、ソフトバンクのスマートフォンおよびタブレットで、OS(基本ソフト)のバージョンはiOS 9.0以上、Android 4.4以上で利用できる。なお、サービス開始は5月9日が予定されているが、当初利用できるのはAndroid端末のみ。iOS端末に関しては、準備ができ次第対応する予定とのことだ。

当面はコミュニケーション機能のみ

 「+メッセージ」はサービス内容や実際の利用シーンを考えると、「LINE」に非常に近い。そのため、携帯大手3社が、「LINE」に奪われたコミュニケーション需要を取り戻すための対抗サービスとみる向きが多い。

 だが実際のところ、「LINE」と「+メッセージ」とでは採用されている技術が大きく異なっている。「LINE」をはじめとする既存のメッセンジャーアプリは、あくまでインターネットを経由してメッセージのやり取りをする仕組みだが、「+メッセージ」は携帯電話標準化団体のGSMアソシエーションが定めたSMSの後継規格であるRCS(リッチコミュニケーションサービス)を用いたもの。あくまで携帯電話サービスの延長線上にあるのだ。

「+メッセージ」はSMSを進化させた国際規格「RCS」を採用したサービスで、携帯電話サービスの延長線上にある
「+メッセージ」はSMSを進化させた国際規格「RCS」を採用したサービスで、携帯電話サービスの延長線上にある
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 先述した通り、アカウントの作成やパスワードの入力といった手間がなく、電話番号さえ分かれば誰とでも手軽にメッセージのやり取りができる点は、メッセンジャーアプリにはない「+メッセージ」の優位性だ。また、連絡先に登録していない電話番号からメッセージが届いた場合は、アイコンで「未登録」であることが分かるなど、簡単に相手を判別できる安心感も大きなポイントだ。

電話番号でやり取りができることから、電話帳などから手軽にメッセージを送信できる。「+メッセージ」非対応の端末にはSMSが送信される
電話番号でやり取りができることから、電話帳などから手軽にメッセージを送信できる。「+メッセージ」非対応の端末にはSMSが送信される
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 一方で、現時点の「+メッセージ」はあくまでコミュニケーション機能のみの提供となるため、ニュースや電子商取引などと連携できる「LINE」と比べると、サービス面が弱い。「LINE」の公式アカウントのような企業と顧客をつなぐ仕組みの導入も検討しているとのことだが、現時点で具体的な内容は決まっていない。

将来的には「LINE」の公式アカウントのような機能の導入も検討されているが、当面はコミュニケーション機能のみにとどまる
将来的には「LINE」の公式アカウントのような機能の導入も検討されているが、当面はコミュニケーション機能のみにとどまる
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 そうした状況を見るに、「+メッセージ」はメッセンジャーアプリではなく、まずは携帯メールの代替として広まるのではないかと筆者はみる。現時点では、「LINE」のユーザーが積極的に「+メッセージ」を利用する理由に乏しいからだ。

 とはいえ、「LINE」を使っていない人にとっては、電話番号だけでコミュニケーションが取れ、かつSMSよりはるかに料金の安い「+メッセージ」は魅力的に映るかもしれない。

 「+メッセージ」が現時点で対応しているのはスマートフォンとタブレットのみだが、携帯大手3社はこれをAndroidベースのフィーチャーフォンにも搭載していくという考えも示している。いまだに携帯メールを使い続けているのは、主としてフィーチャーフォンに愛着がある人たちだ。端末側の対応が進めば携帯メールから「+メッセージ」に乗り換える流れが加速する可能性も高い。

課題は3社協調による意思決定の遅れ

 「+メッセージ」が利用率を「LINE」並みに高めるには、多くの課題があるのも事実だ。最初の課題は利用可能な通信事業者であり、「+メッセージ」はサービス開始当初、携帯大手3社のメインブランドのスマートフォンおよびタブレットでしか利用できない。MVNO(仮想移動体通信事業者)で利用するための準備はまだ整っておらず、MVNO側などの要望を聞きながら検討を進めていくようだ。

 また、世界標準規格のRCSを用いているとはいえ、「+メッセージ」では海外の通信事業者のスマートフォンとメッセージのやり取りができないという。そうした問題は、インターネットを経由するメッセンジャーアプリには起こり得ないものだけに、ユーザーの利便性を高めるためにも、主導する携帯大手3社にはいち早い対応が求められる。

 もう1つ、大きなハードルとなっているのが「iPhone」だ。iPhoneで「+メッセージ」を利用するには、専用アプリをダウンロードする必要があるのだが、実はiPhoneユーザー同士であれば、既に標準アプリの「メッセージ(iMessage)」で、電話番号によるコミュニケーション機能が実現されており、画像やスタンプも利用できるのだ。「+メッセージ」としては、「iMessage」にはない魅力や特徴を伝えていくことも求められるだろう。

 さらに、将来的に大きな課題となりそうなのは、携帯大手3社で「+メッセージ」アプリを管理するという体制である。携帯大手3社は過去、SMSの相互接続や各社で異なる絵文字の共通化などに取り組んできた経緯がある。それだけに「+メッセージ」では、3社が手を組んで開発を進める必要があったというのは理解できる。だがそれは、各社が独自の方針を打ち出せないことの裏返しであり、意思決定の遅れ、ひいてはサービスの停滞にもつながりかねない。

「+メッセージ」は携帯大手3社が共同で取り組んだものだが、各社の利害によって意思決定が遅れてしまう可能性がある
「+メッセージ」は携帯大手3社が共同で取り組んだものだが、各社の利害によって意思決定が遅れてしまう可能性がある
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 先述したように「+メッセージ」をビジネスに利用する動きが本格化した際、各社の利害がサービスの展開に大きく影響してくるのは想像に難くない。3社がいかに協調しながら迅速なサービスを提供できるかが、ユーザーの支持を得る上で大きく問われることとなりそうだ。

(文/佐野正弘)