大画面を投影するプロジェクター。その利用シーンを思い浮かべてみると、ビジネスのプレゼンで利用する以外では、一部の人が映画を楽しむときに使うというのが一般的なイメージだろう。

 しかし、2016年2月にソニーが発売したポータブル超短焦点プロジェクター「LSPX-P1」は、多くの人がプライベートで気軽に利用でき、さらに新しい使い方を提案している、画期的な特徴を持つ製品だ。

 ソニーによれば、その反響は予想をはるかに上回るものだったとのこと。事前予約の段階から注文が殺到したばかりか、その勢いは今も衰え知らず。発売から1カ月以上たった3月下旬でも、数カ月の入荷待ちという状況だそうだ。

 多くの人を引き付けるLSPX-P1は、一般的なプロジェクターとどう違うのか。そしてライフスタイルをどう変えるのか。その使い勝手を探ってみた。

ポータブル超短焦点プロジェクター「LSPX-P1」(右が本体で、左がワイヤレスユニット)。正方形のシンプルなフォルムで、側面部にはレザー調のテクスチャーが施されている。価格は9万2500円(税別)
ポータブル超短焦点プロジェクター「LSPX-P1」(右が本体で、左がワイヤレスユニット)。正方形のシンプルなフォルムで、側面部にはレザー調のテクスチャーが施されている。価格は9万2500円(税別)
[画像のクリックで拡大表示]

テーブルや床にも投影できる

 LSPX-P1は「超短焦点」といわれているように、焦点距離の短さが最大の特徴だ。

 通常のプロジェクターは、映像を映す際にスクリーン(もしくは壁)との距離を数m取る必要がある。距離は機種によってさまざまだが、例えば40型サイズで1〜2m、80型だと2〜4mといった具合になる。

 一方、短焦点プロジェクターは1m以内の距離で80型の投影が可能だが、「超」が付くLSPX-P1ではスクリーンとの距離を約28cm取るだけで、80型サイズの映像を投影できる。さらに、壁に密着した状態でも22型の映像を映すこともできる。

 投影距離が短いことのメリットは、プロジェクターの設置場所を容易に確保できる点だ。通常のプロジェクターをリビングで利用する場合、部屋の真ん中あたりに設置する必要があるが、LSPX-P1であれば投影する壁近くの棚の上に置いても利用できる。例えばワンルームの部屋でも気軽に大画面を楽しめるようになるわけだ。また、本体を置くだけですぐ近くの床やテーブルに映像を映し出せる、他に類を見ない使い勝手の良さだ。

壁に投影したときのイメージ
壁に投影したときのイメージ
[画像のクリックで拡大表示]
床に投影したときのイメージ
床に投影したときのイメージ
[画像のクリックで拡大表示]

コンパクトさが魅力、ワイヤレス送信も

 「ポータブル」と付いている点からもわかる通り、そのコンパクトさもLSPX-P1の魅力のひとつ。片手で持ち運べるサイズなので移動も簡単だ。

 ACアダプターでの利用に加え、約2時間利用できるバッテリーも内蔵する。リビングに限らず寝室などで気軽に利用でき、場合によってはアウトドアでの利用もできる。

 さらに、ブルーレイディスクレコーダーやゲーム機などをHDMIで接続できるワイヤレスユニットも同梱。リビングなど離れた場所にあるブルーレイディスクレコーダーの映像をプロジェクター本体へワイヤレス送信すれば、自室や寝室でも映像を大画面で楽しめるのだ。

本体サイズは幅81×高さ131×奥行き131mm、重さは約930g。女性でも片手で簡単に持ち運べる
本体サイズは幅81×高さ131×奥行き131mm、重さは約930g。女性でも片手で簡単に持ち運べる
[画像のクリックで拡大表示]

利用にはスマホが必須

 実際にLSPX-P1の使い勝手を見ていこう。この使い勝手を語るうえで、大きなポイントとなるのが「スマホとの連携」だ。

 そもそも、LSPX-P1の本体には電源ボタンしかボタンがない。各機能の操作は、スマホ専用アプリ「ポータブル超短焦点プロジェクターアプリケーション」を利用する仕様になっている。これはつまり、LSPX-P1を利用するにはスマホが必須だということだ。

 スマホからはワイヤレスでさまざまな操作ができるほか、スマホに保存してある写真や動画もスムーズに再生できる。また、「Miracast」など、スクリーンミラーリング対応のスマホであれば、スマホの画面をそのまま投影することも可能。YouTubeなどの動画コンテンツを簡単に大画面で楽しめる点も魅力的だ。

スマホ専用アプリ「ポータブル超短焦点プロジェクターアプリケーション」のメイン画面。アプリはiOS版とAndroid版を用意する
スマホ専用アプリ「ポータブル超短焦点プロジェクターアプリケーション」のメイン画面。アプリはiOS版とAndroid版を用意する
[画像のクリックで拡大表示]
アプリでは電源のON/OFFやバッテリー残量の確認、映像コンテンツの選択以外にも、音量や明るさ、フォーカス、台形補正などを調整できる
アプリでは電源のON/OFFやバッテリー残量の確認、映像コンテンツの選択以外にも、音量や明るさ、フォーカス、台形補正などを調整できる
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、その半面、スマホがないと何も操作できないのが利用のネックとなっている。操作するときに毎回アプリを立ち上げる手間もあるので、利便性という観点からも「リモコンを付属してもよかったのでは?」と個人的には感じた。

投影はスムーズだが……

 映像の投影については非常にスムーズで、何より手間がかからないのがいい。ピントは自動調整してくれるので、ユーザーは映像が見やすいように本体の向きを調整すればOK。前後に移動させて画面サイズを変えても、スピーディにピントを合わせてくれる点はちょっと感動した。

 一方で、一般的なプロジェクターと比較すると、明るさ(輝度)が100ルーメンの映像はやはり暗め。部屋が暗ければ違和感なく見えたが、電気のついている部屋での利用はかなり厳しいというのが正直な感想だ。ただ、最小サイズの22型であれば、部屋に多少明るさが残っていても実用可能なレベルという印象だ。

映像の解像度は1366×768ピクセルで720p相当、明るさ(輝度)は100ルーメン、コントラストは4000:1。独自デバイス「SXRD」や小型レーザーエンジンの採用により、発色やコントラストは良好に感じた
映像の解像度は1366×768ピクセルで720p相当、明るさ(輝度)は100ルーメン、コントラストは4000:1。独自デバイス「SXRD」や小型レーザーエンジンの採用により、発色やコントラストは良好に感じた
[画像のクリックで拡大表示]
部屋の電気をつけた状態だと見え方はかなり落ちる。残念ながらイメージ画像のような見え方にはならない
部屋の電気をつけた状態だと見え方はかなり落ちる。残念ながらイメージ画像のような見え方にはならない
[画像のクリックで拡大表示]

 ちなみに、LSPX-P1は映像を斜めに投影する特殊な仕組みを採用しているため、壁に凹凸などがあると映像に影響が出るので注意したい。

 例えば、筆者の自宅の壁は、見た目こそ真っ白だが、実はエンボス加工の模様がある。そのため、風景写真を映した際に壁面に細かい影ができてしまい、絵画のような雰囲気になってしまった。

 また、投影面に起伏があるとそれにあわせて映像が歪む。よりクリアな映像を楽しみたいのであれば、凹凸のないボードやたるみの出ないスクリーンなどを用意したほうがいいだろう。

見た目は真っ白でも、壁に模様があると映像のイメージが変わってしまう
見た目は真っ白でも、壁に模様があると映像のイメージが変わってしまう
[画像のクリックで拡大表示]
壁に凹みなどがある場合も、映像にゆがみが出てしまう
壁に凹みなどがある場合も、映像にゆがみが出てしまう
[画像のクリックで拡大表示]

新しい使い方を提案

 ワイヤレスユニットは、本体と直接無線LANで接続するため、それぞれの距離が離れすぎると通信できなくなる。しかし、筆者が自宅で利用したときは、リビングにあるブルーレイレコーダーの映像を、一部屋先にある寝室でも問題なく楽しめた。離れた場所からAV機器のリモコンを利用できるAVマウスも付属するので、利用価値は十分ありそうだ。

 また、PlayStation 4を接続し、同様の条件でゲームを楽しんだ際も、画面が停止するなどの致命的な遅延は感じなかった。もちろん遅延がまったくないわけではないが、シビアなタイミングを要求される格闘ゲームや音楽ゲームでなければ、こちらも問題なく遊べる範囲だろう。

ワイヤレスユニットの背面。HDMI入出力とAVマウス出力を各1基備え、パススルーにも対応する
ワイヤレスユニットの背面。HDMI入出力とAVマウス出力を各1基備え、パススルーにも対応する
[画像のクリックで拡大表示]

 そしてプロジェクターの新しい使い方を提案しているのが、スマホアプリで選べる「ポスター」という機能だ。

 これはLSPX-P1の本体に保存されている映像コンテンツを映し出すもの。「天気」「A-Day」「Journey」「Night dreams」「Window」などのジャンルを選ぶことができ、選んだジャンルに応じた映像をポスターやちょっとした小窓のように、部屋の壁に投影できるわけだ。さらに現在の時刻を、時計として投影できる。

 部屋のイメージを変えたり、狭いスペースを有効活用できるなど、これまでとは一味違うプロジェクターの使い方ができるのは面白い。手軽に持ち運べて置き場所も選ばないLSPX-P1らしい使い方といえる。

ポスター機能の「Window」の一例。窓枠まで再現される凝りようだ
ポスター機能の「Window」の一例。窓枠まで再現される凝りようだ
[画像のクリックで拡大表示]
ポスター機能の「時計」の一例。アナログだけでなくデジタル表示もある
ポスター機能の「時計」の一例。アナログだけでなくデジタル表示もある
[画像のクリックで拡大表示]

 LSPX-P1を実際使ってみて一番感動したのは、どこでも気軽に使える利便性の高さだ。場所を選ばず、好きな場所で簡単に大画面が楽しめるのはかなり魅力的。プロジェクター導入のハードルがぐっと下がり、狭い部屋でも大画面を楽しめる。少なくとも、自分のライフスタイルにプロジェクターを組み込めるイメージが湧いてきたことは確かだ。

 こうした点を踏まえると、やはり明るさ不足はもったいない。特にポスター機能は新しい使い方を提案する画期的な機能だと思うので、明るい部屋でも問題なく利用できるような改善を次期モデルに期待したい。

(文/近藤 寿成=スプール)