現地時間の2017年3月10日にスタートした世界最大級の見本市のひとつ「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」。1987年に米国テキサス州オースティンで音楽祭として開催されたSXSWは、94年に映画、98年にIT関連を扱うインタラクティブが加わり、総合的なイベントとなった。いまや三本柱のひとつになっているインタラクテイブは当初、インターネット関連の技術を紹介する見本市だったが、現在は創造的な製品、サービス、ビジネスモデルを包括的に扱う見本市に成長。ここ最近は日本の有名企業も積極的に参加するようになった。

テキサス州オースティンのダウンタウンはSXSW一色に
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街角もお祭りムードだ
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 現地では12日、いよいよメーンの企画のひとつであるTRADE SHOW(展示会)が始まった。TRADE SHOWはAustin convention Centerが主な会場となるのだが、有名企業のなかには、倉庫やレストランを期間中だけ改装して展示するケースも多い。ここでは、Austin convention Centerの外で大規模な展示を披露したソニーとパナソニックのブースを紹介しよう。

VRの楽しさをとことん追求するソニー

 日本を代表する企業として比較されることも多いソニーとパナソニック。SXSWの展示を比較するとソニーのAVに対してパナソニックが家電と対照的でなかなか面白い。展示場の名前もソニーが「The WOW Factory」、パナソニックが「Panasonic House」と、最新の技術で人々の生活を豊かなものにするというコンセプトは同じとはいえ、両社のキャラクターの違いが如実に表れている。

 ではソニーの展示を見ていこう。同社はAV関連の最新技術を中心に13テーマの展示を用意。このうち、SXSWで初めて披露されたのが「IMMERSIVE SPACE ENTERTAINMENT」と「POWERFUL EXPERIENCE USING YOUR BODY AND BRAIN!」という2つのVR(仮想現実)だ。

 IMMERSIVE SPACE ENTERTAINMENTは、ヘッドセットを使わないVRの体験システム。視界を覆うように利用者の前に設置したドーム形のスクリーンを使って没入感を高めている。利用者は椅子に座ったリラックスした状態でVR映像を視聴する。椅子にはセンサーが組み込まれており、椅子の向きを変えると、映像も向いた方向に変化する。人間の体の自然な動きにVR映像が追従する点が新しいという。また椅子ではなく自転車(もちろんその場でこぐもの)を使ったデモでは、ハンドルの方向やスピードで映像が変化する。ジムなどでの応用も考えているという。

利用者の目の前に設置されたドーム形のスクリーン
利用者の目の前に設置されたドーム形のスクリーン
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椅子に座ってVR映像を鑑賞すると、体の動きに合わせて映像も変化する
椅子に座ってVR映像を鑑賞すると、体の動きに合わせて映像も変化する
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 もうひとつのPOWERFUL EXPERIENCE USING YOUR BODY AND BRAIN!は、VRヘッドセットと再生用のハードウエアを背負っての体験となる。まるで映画やアニメの世界に入り込んでしまったような高い現実感が味わえるという。今回は「GOLD RUSH VR」ということで、かつての西部開拓時代を背景に宝探しをするという内容。ユニークな点は手に持ったコントローラーで映像内の岩などをつかんで投げられること。近くにある岩だけでなく、遠くの岩を吸い寄せるといった操作も可能だ。つかんだ岩を宝箱などにぶつけると金貨などが飛び出す仕掛け。映像も美しく、VRに没入できる。また場面を変える際に乗るトリムは、洞窟などを疾走するするのだがこちらのリアリティーはかなりのものだった。権利関係をクリアして人気の映画やアニメで実現できたら話題を呼びそうだ。

VRゴーグルを装着した人が何やら必死に投げているのが分かる
VRゴーグルを装着した人が何やら必死に投げているのが分かる
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参加者が見ているVR映像。落ちている丸い岩などをつかんで宝箱に投げて当てると金貨が獲得できる
参加者が見ているVR映像。落ちている丸い岩などをつかんで宝箱に投げて当てると金貨が獲得できる
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 このほかソニーらしい展示だったのが「MUSIC WITH ANY SURFACE UI」だろう。これは先日のMobile World Congressで発表された「Xpeia Touch」を活用したデモ。Xperia Touchは短焦点の小型プロジェクターで、テーブルなどにアプリの画面を投射すると、その画面をタップするなどしてアプリが操作できる。平面であればあらゆる場所がユーザーインターフェースになるというわけだ。今回の展示では、3台のXperia Touchを連携させて、ピアノやドラムをテーブルに表示。テーブルが楽器に早変わりするデモを紹介していた。

Xpeia Touchを3台並べて、幅の広いピアノを平面に再現。ちゃんと両手で弾けるし、激しく指を動かしても遅延はほとんどなかった
Xpeia Touchを3台並べて、幅の広いピアノを平面に再現。ちゃんと両手で弾けるし、激しく指を動かしても遅延はほとんどなかった
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家電はまだまだ生活を便利に豊かにできる

 続いてパナソニックのブース。人々の日々の暮らしを新しい発想の家電で変えていこうというのが大きなテーマだ。同社が新規事業の創出を目指して始めた「Game Changer Catapult」活動から8つの事業アイデアを展示した。1年の準備期間を経て、ようやく展示にこぎつけたという。

 注目は「CaloRieco」(カロリエコ)で、おかずなどの具材や調理方法を短時間で識別して、カロリーや三大栄養素の含有量を計測する。糖尿病の患者の食事などカロリーや成分を管理する必要のある食事を作る人にとっては、喉から手が出るほど欲しい製品とのこと。現時点のプロトタイプは電子レンジほどの大きさだが、将来はさらなる小型化、あるいは電子レンジへの内蔵を検討しているようだ。また、日々の計測内容を蓄積して、その結果から推奨のレシピを提案するといったサービス事業の展開も視野に入れている。

「CaloRieco」は、料理を作った後で栄養素などが計測できるデバイス。現時点では電子レンジ程度の大きさで、電子レンジと同じように料理を入れて計測する
「CaloRieco」は、料理を作った後で栄養素などが計測できるデバイス。現時点では電子レンジ程度の大きさで、電子レンジと同じように料理を入れて計測する
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計測結果の画面。カロリーと三大栄養素のバランスなどが分かる
計測結果の画面。カロリーと三大栄養素のバランスなどが分かる
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 お気に入りの洋服を洗浄から乾燥までしっかりケアできる専用デバイスが「MonStyle」(モンスティール)だ。専用デバイスは、お気に入りの洋服一着だけをハンガーにかけて洗浄するため、縦長のユニークな形状をしている。最大の特徴は大切な洋服を傷めないことに加えて、自分の好きな香りやUVカットといった機能を追加できること。その日の気分によってどのような香りや機能を追加するかを選ぶ楽しさを提供することで、洗濯が持っている“面倒な家事イメージ”を変えたいという。専用デバイスは家庭用を想定して開発しているが、ホテルに設置するなど、今後のビジネス展開を模索中のようだ。

MonStyleの専用デバイス。ハンガーにかけてお気に入りの一着のケアができる。縦長の独特の形状もユニークだ
MonStyleの専用デバイス。ハンガーにかけてお気に入りの一着のケアができる。縦長の独特の形状もユニークだ
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自分の好きな香りやUVカットといった機能を追加する成分が入ったパーツ。細長い形状で高級な文具を思わせるデザインが目を引く。これを専用モジュールにそのまま挿入して使う
自分の好きな香りやUVカットといった機能を追加する成分が入ったパーツ。細長い形状で高級な文具を思わせるデザインが目を引く。これを専用モジュールにそのまま挿入して使う
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 「Bento@YourOffice」にも注目。これは既存の冷蔵庫に、スマホアプリなどで簡単に決済できるスマートペイ機能、登録した利用者だけが開け閉めができるスマートロック機能、庫内の温度などをモニタリングする機能の3つを追加できるソリューション。こうした機能を備える完成品としての冷蔵庫を作るのではなく、既存の冷蔵庫に追加できる“後付けモジュール”として開発したのは、早期の事業化を目指したためだという。既に、首都圏を中心にオフィス向けの弁当配送サービスを手掛けるAIVICKと提携し、実証実験を始めている。AIVICKのサービスでは、会員企業に弁当保管用の冷蔵庫を設置し、その冷蔵庫にBento@YourOfficeの機能を追加。弁当の予約受発注や決済、温度管理などに利用し、有効性の検証や仕様の確定に役立てる計画だ。とにかくスタートアップ並みに早期に事業化したいというのが関係者の意気込みだ。

Bento@YourOfficeの概念図。冷蔵庫に3つのモジュールを後付けにするのがポイント
Bento@YourOfficeの概念図。冷蔵庫に3つのモジュールを後付けにするのがポイント
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スマホアプリで注文したときに発行される2次元コードで支払いも簡単
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利用者だけが冷蔵庫のドアを開けられる。内部には温度などを測定するセンサーがある
利用者だけが冷蔵庫のドアを開けられる。内部には温度などを測定するセンサーがある
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(文・写真/渡貫幹彦=日経トレンディネット)