2018年2月9~25日まで、韓国・平昌を中心に熱戦が繰り広げられている冬季五輪。その会場では、サムスン電子などが次世代の通信技術「5G」や「VR」(仮想現実)などの先端技術を活用したさまざまな体験ができるパビリオンを展開している。競技会場の1つである江陵(カンヌン)を訪れ、実際に体験してみた。

 冬季五輪で熱い視線が送られているのは試合だけではない。五輪会場内にはスポンサー企業が展開するパビリオンが用意されており、自社の製品や技術を熱心にアピールしている。

平昌2018冬季五輪の会場の1つとなっている、江陵のアイスアリーナ。筆者が訪れた2月12日は日本選手も出場したフィギュアスケート団体の決勝が行われていた
平昌2018冬季五輪の会場の1つとなっている、江陵のアイスアリーナ。筆者が訪れた2月12日は日本選手も出場したフィギュアスケート団体の決勝が行われていた
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サムスンは毎回、選手に五輪モデルを提供

 中でもひときわ大きなブースを構えているのが、地元・韓国のサムスン電子である。サムスンは1998年の長野冬季五輪から現在に至るまで、無線通信機器カテゴリーのワールドワイド公式パートナーとなっている。そのサムスンが、五輪会場の1つである江陵で展開しているのが「Galaxy Olympic Showcase」だ。

サムスンが五輪会場内に設けている「Galaxy Olympic Showcase」。Gear VRを活用したVR体験や、サムスンの最新製品などが体験できる
サムスンが五輪会場内に設けている「Galaxy Olympic Showcase」。Gear VRを活用したVR体験や、サムスンの最新製品などが体験できる
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 Galaxy Olympic Showcaseの見どころの1つは、サムスンがこれまでの五輪で提供してきた携帯電話端末の数々。サムスンは長野五輪から、大会に参加する選手に向けて自社端末を提供しており、それらの歴代モデルを振り返ることができるのだ。

サムスンが提供してきた歴代の五輪モデルも展示。写真は2002年のソルトレイクシティ五輪のときのもの
サムスンが提供してきた歴代の五輪モデルも展示。写真は2002年のソルトレイクシティ五輪のときのもの
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 今回の平昌五輪では、サムスンは現在の最新モデル「Galaxy Note8」の平昌五輪向け特別モデル「Galaxy Note8 PyeongChang 2018 Olympic Games Limited Edition」を参加選手に提供している。パビリオン内ではその特別モデルも展示していた。

 これはGalaxy Note8の背面パネルに五輪のマークが入ったもので、壁紙やアイコンなども五輪仕様。あくまで非売品とのことだが、一般人でもGalaxy Note8ユーザーであれば同じ壁紙やアイコンなどに変更できるテーマをダウンロードできるという。

五輪参加選手に提供されている「Galaxy Note8 PyeongChang 2018 Olympic Games Limited Edition」。背面に五輪ロゴがあしらわれた非売品だ
五輪参加選手に提供されている「Galaxy Note8 PyeongChang 2018 Olympic Games Limited Edition」。背面に五輪ロゴがあしらわれた非売品だ
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壁紙やアイコンも五輪仕様。Galaxy Note8ユーザーなら同じテーマをダウンロードできる
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月面浮遊もできるVR体験コーナーが充実

 もう1つの見どころは、サムスンのスマートフォンとVRゴーグル「Gear VR」に、さまざまな体感装置を組み合わせたVR体験コーナーである。

 VR自体は、日本でも展開されているイベント「Galaxy Studio」などで既に体験できるもの。ただ、今回は冬季五輪会場での実施ということもあり、コンテンツの内容も冬季五輪に合わせたものが多数用意されているほか、スキーやスノーボード、スケルトンなど、冬季五輪の競技に合わせたVRコンテンツの充実度も非常に高い。

VRコンテンツも冬季五輪に合わせ、スキーやスノーボードなど、ウインタースポーツ関連のものが多くを占めていた
VRコンテンツも冬季五輪に合わせ、スキーやスノーボードなど、ウインタースポーツ関連のものが多くを占めていた
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こちらはマッサージしているように見えるが、スケルトンのVR体験コーナー
こちらはマッサージしているように見えるが、スケルトンのVR体験コーナー
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 また今回のイベントに合わせて、VRを活用して月面での浮遊体験を味わえる新しいコンテンツも初披露。宇宙服さながらの服装に着替え、ヘルメットをかぶり、ハーネスを付けて宙づりになって体験するという非常に本格的な内容で、現在のところ平昌五輪の会場だけでしか体験できない、貴重なものだ。

平昌五輪で初公開となる、月面浮遊体験ができるVRコンテンツも用意。宇宙服のような衣装に着替えて体験する、本格的な内容だ
平昌五輪で初公開となる、月面浮遊体験ができるVRコンテンツも用意。宇宙服のような衣装に着替えて体験する、本格的な内容だ
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 ちなみにサムスンは平昌五輪の開催に合わせて、仁川空港にもGalaxy Studioを設置していた。こちらではGear VRを活用したいくつかのコンテンツのほか、日本で販売されていないサムスン製のWindows MR対応VRヘッドセット「Odyssey」も実際に体験することができる。

韓国の空の玄関口、仁川空港にもGalaxy Studioを設置
韓国の空の玄関口、仁川空港にもGalaxy Studioを設置
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こちらには日本では販売されていないWindows MR対応のヘッドセット「Odyssey」も用意。サムスンの有機EL技術を生かし、解像度が高くより明るく鮮明なVR体験ができるのがポイントだ
こちらには日本では販売されていないWindows MR対応のヘッドセット「Odyssey」も用意。サムスンの有機EL技術を生かし、解像度が高くより明るく鮮明なVR体験ができるのがポイントだ
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KTブースではタブレットで5Gを体験

 もう1つ、韓国企業のパビリオンとして注目されていたのが、地元の大手キャリアで平昌五輪のローカルスポンサーとなっているKTのブースだ。

韓国の大手キャリアの1つであるKTのパビリオン。5Gを主体とした展示がなされていた
韓国の大手キャリアの1つであるKTのパビリオン。5Gを主体とした展示がなされていた
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 KTのブースが力を入れているのは、次世代のモバイル通信技術「5G」に関する取り組みの数々。5Gは最大20Gbpsもの通信速度を実現し、なおかつネットワーク遅延が非常に少ないなど、現在主流の4Gよりも高い性能を実現できるとされている。商用サービスの開始は2019~2020年ごろとされているが、KTはサムスン、米インテルと共同で、平昌五輪の会場内でいち早く5Gの試験サービスを提供している。

パビリオン内では5Gで実現する都市の姿をインタラクティブに体験できるコーナーなどを用意
パビリオン内では5Gで実現する都市の姿をインタラクティブに体験できるコーナーなどを用意
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 そのKTのパビリオンでは、5Gのネットワークが提供されることで、都市や人々の生活がどう変化するかを、VRやAR(拡張現実)などのさまざまな最新技術も交えてアピールしていた。中でも注目なのは、実際に5Gのネットワークを体験できるデバイスの展示だ。パビリオン内にはサムスンが開発した5G対応のタブレットが多数並んでおり、それらを用いて4Kの映像などが快適にストリーミングできる様子を見ることができた。

5Gの通信に対応したサムスン製のタブレットも初披露。KTのパビリオンだけでなくアイスアリーナにも展示されており、大容量を生かした新しいスポーツの楽しみ方を提案していた
5Gの通信に対応したサムスン製のタブレットも初披露。KTのパビリオンだけでなくアイスアリーナにも展示されており、大容量を生かした新しいスポーツの楽しみ方を提案していた
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サムスン製タブレットの背面。アンテナサイズの影響もあってか、一般的なタブレットよりやや厚い
サムスン製タブレットの背面。アンテナサイズの影響もあってか、一般的なタブレットよりやや厚い
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画面右上に「5G」のアイコンが表示されており、5Gで通信していることが確認できる
画面右上に「5G」のアイコンが表示されており、5Gで通信していることが確認できる
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 これまで、日本をはじめいくつかの国で5Gに関する実証実験が行われた際には、小型のコンテナくらいのサイズがある非常に大きな端末を使っていた。しかし今回用意された5G対応タブレットは、やや厚みがあるものの、通常のタブレットと変わらないサイズ感を実現している。ネットワークだけでなく、デバイス面でも5Gの商用サービスに向けた準備が着々と進められている様子を見ることができた。

 ただサムスンの関係者によると、今回用意されたタブレットの詳細は「非公開」とのこと。サムスン製のチップが用いられているとのことだが、それがどの部分のチップを指すのかは明かされず、機能や性能を詳しく確認することはできなかった。

サムスンはなぜ5Gに力を入れるのか

 今回、サムスン ネットワーク事業部 常務である申東洙氏に、サムスンの5Gへの取り組みについて、グループインタビューで話を聞けた。

サムスンの5Gへの取り組みについて、記者の取材に答えたサムスン ネットワーク事業部 常務の申東洙氏
サムスンの5Gへの取り組みについて、記者の取材に答えたサムスン ネットワーク事業部 常務の申東洙氏
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 日本ではスマートフォン、海外ではそれに加えてテレビや冷蔵庫など、IT・家電機器を提供するメーカーとして知られるサムスン。だが申氏によると、それだけ多くの機器を手がけているがゆえに、各機器を接続するネットワーク事業にも力を入れるようになったとのことだ。

 5Gではスマートフォンだけでなく、より多くの機器がネットワークに接続すると考えられていることから、サムスンとしても一層注力していきたいという。中でも現在、力を入れているのは、28GHz帯という非常に高い周波数帯を使い、世界各国のキャリアと共同で進めている5Gの実証実験である。

 5Gでの高速通信を実現するには、広い帯域幅を持つ非常に高い周波数帯を用いる必要があるが、サムスンでは28GHz帯の活用を重視しているとのこと。「よい役割をすると予想している」(申氏)というものの、高い周波数帯は直進性が強いなど、4Gで利用している周波数帯とは異なる特性を持つため、実証実験で技術課題を見つけ、それを解消していく取り組みを進めているそうだ。

 申氏によると、5Gにおけるサムスンの強みは、ネットワークだけでなくチップセットや端末など、すべてを自社でそろえられることだという。その強みを生かして世界各国のキャリアと共同で5Gの実証実験を実施しており、米国では最大手のベライゾン・ワイヤレスと、5Gを固定回線向けに活用し、光回線の代わりにラストワンマイルを提供するサービスの実証実験を展開。商用サービスに向けた準備を共同で進めているという。

 このほか、韓国ではKTやSKテレコムといった現地の大手キャリアと5Gに関する実証実験を、日本ではNTTドコモやKDDIと5Gのハンドオーバーに関する実証実験を共同で実施している。秋には欧州のキャリアとも実証実験を行う予定とのことで、世界的に5Gによるネットワーク事業強化を図りたい考えのようだ。

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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