eスポーツは選手の背景を知った上で応援するべし

――eスポーツには観戦の楽しみがあるということは、今までゲームに興味がなかった人にも知ってもらいたいところです。

歌広場: eスポーツのプロ選手たちはエンターテインメントしてくれるんですよ。プロになることで、それぞれのバックストーリーが透けて見える主人公の集まりになり、ドラマを次々と生み出してくれる。eスポーツはそういう選手の背景を知ったうえで見るとさらに楽しさが倍増すると思います。

 会社帰りのビジネスパーソンが「ちょっと寄っていく?」とスポーツバーでサッカーの観戦をするように、「eスポーツバー」でゲームを観戦する――何十年かかるか分かりませんが、そんな時代がきてほしいと思います。実際はそう遠くない気もするんです。

金爆・歌広場淳「eスポーツは過渡期だから面白い」(3)(画像)
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実力差がある相手と戦うには2つの“情”がいる

――最近はゲーム好きなタレントさんたちのeスポーツ大会などもあり、ゲームに関心がなかった人たちも目にする機会は増えているかもしれません。歌広場さんはプロが出場する大会に挑戦する一方で、こうした大会にも出場して優勝もされています。対戦時に心がけていることはありますか?

歌広場: 僕の経験から言って、ゲーム、特に格闘ゲームは実力が近い人同士で戦うときに自然と生まれるものがたくさんあります。一方で、実力が離れた人が同じ舞台で楽しく戦うには、必要なものが2つあると思っています。

――その2つとは?

歌広場: “愛情”と“同情”(笑)。どっちも“情け”なんですが、その2つがないと、実力で劣る側は本当につまらない思いをすることになるんですよ。

 前回、僕が幼いころに地元のゲームセンターで体験した出来事を話しました。ゲームセンターで一番強くなったけれど、僕とやってもつまらないと言われて対戦相手も失ってしまった。そのときの僕には、愛情も同情もなかったんですよ。

 2つの情けを持って戦うと、終わった後に「すっごく楽しかった」って言ってもらえる。その言葉を聞くと僕は「よっしゃ!」って思います。誰も遊んでくれなくなってしまった中学のころより、確実に僕は成長しているっていうことですから。「強いのは分かったけど面白くない」なんて言われるより、100倍いい。僕としては「楽しませよう」と思ってプレーしているわけですから。

 だからと言って“接待プレー”ではありません。ちゃんと試合になっているんです。例えば、相手が「A」という技を出してきて、それを僕が「B」という技で撃退する。それが3回続いたとしますよね? ゲームを知っている人なら次は攻撃パターンを変えてくるだろうと読みますが、あまり上手じゃない人は4回目も「A」を出したりするんです。それなら僕はその人をある意味信用して4回目も同じ攻撃が来ると判断する。そうしたやり取りがあってこそ、「楽しかった」って思ってもらえるんです。

 そうは言いながら、実際には僕がやりたいことがぜんぶ裏目に出てコロッと負けてしまうことだってあります。僕は勝手に「教えるポジションにいる」と思い込んでいたところが、逆に教えられる、そんなこともあるんです。

――「格闘ゲームはコミュニケーションツールだ」とおっしゃるゆえんですね。逆にすごく強い人と対戦するときはどうですか?

歌広場: 相手がすごく強い場合は、相手や自分が何をやっているのか分からない状態になるんです。実力が違いすぎると何で自分が劣勢に立っているのかすら分からないことがある。さっきの言語の話に例えるなら、「相手が話す言語が理解できなかった」という状態です。

 言語での会話なら後で何と言えば良かったのかを調べるように、格闘ゲームの試合でも振り返って、「この場面ではこういう技があったな」と試合中には見えなかった選択肢、取り得た行動のバリエーションを探します。そうすると、また同じようなシチュエーションになったとき、前と違うリアクションが取れるし、相手も「変わってきたな」と感じてくれるはず。そこでまた一つコミュニケーションが成立するんです。それだけ相手に近づいた、僕自身が強くなったということが分かるのが楽しいところです。