ゲームを通じて受けた人付き合いにおける“予防接種”

――今、プレーしているのは格闘ゲームが中心ですか?

歌広場: はい、ほぼ格闘ゲームです。きっかけはゲームセンター。小学6年生くらいからよく行くようになったんです。当時、学校などでは、小学生がゲームセンターに行くのは「あまり良くないこと」とされていたんですが、僕はその「あまり良くないこと」がしたかった。小学校で児童会長とかやっていて、周りから見るときちんとした子供だったと思いますが、だからこそ「周りの人が求めているものと僕がやりたいことが違う」と思い始めていたんです。一般的には中学とか高校でくる反抗期が小学6年生くらいにきたんでしょうか。家出をしてみたり学校をサボってみたりもしましたね。

 ゲームセンターにおける当時の花形は、やはり格闘ゲームでした。『ストリートファイターII』とか『バーチャファイター』を大人に混ざって遊ぶのが楽しかった。

 ゲームセンターに通っていると年上の知り合いが増えるんです。向こうはこっちを対等に見ているわけではなかったでしょうが、僕には大人の知り合いが増えることがうれしかった。今考えると、ゲームそのものより、「大人に混ざって同じことをする」のが楽しかったんだと思います。

 今でも僕にとっての「ゲーム」は「誰かと楽しむもの」です。1人でプレーできるものも多いので、1人で楽しむ人も多いでしょうが、僕が好きなのは誰かと戦う格闘ゲーム。相手がいて初めてプレーできる。こうしたゲームを通して、僕は人と付き合ううえでの“予防接種”を受けたと思っているんです。

金爆・歌広場淳「人生の大事なことはゲームセンターで学んだ」(1)(画像)
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ゲームは自分も相手も楽しまなくちゃ

――“予防接種”というのは?

歌広場: 教訓のようなものですかね? ゲームはただ勝てばいいものではないんです。この画面の向こう側には実在の人がいて、その人がお金を入れてくれないとゲームが成立しないというのは、ゲームセンターで学んだとても当たり前で大事なことだと思います。

 ゲームセンターに通い始めて僕はメキメキと強くなったんですが、ある日、周りの人が誰も僕と対戦してくれないことがありました。「だってつまんねぇんだもん」と。「え? なんで?楽しくないの?」って聞き返したら、「100円入れてもいいけど無駄になるだけだから」と言われました。

 当時の僕は父とやった『ファミスタ』同様、また勘違いをしていて、相手から100円を巻き上げることをゲームだと考えていたところがありました。その100円で相手を楽しませようという気持ちはなかったし、「勝てばいい」だけで自分たちが楽しもうという気持ちも多分ありませんでした。

 思い返せばハメ技をやったり、確かに相手につまらない思いをさせていました。当時はまだ文化が未成熟だったから、ハメ技を見つけること自体が一つの功績のように思われていたところもありました。でも、システム的に100%反撃が不可能なら、それはプレーヤーとしての強さでもなんでもない。

※ハメ技:システム上の不備をついて相手が完全に反撃不能な状態に追い込んで勝ちをもぎ取ること


 子供だったからと言えばそれまでですが、相手に対する配慮が全くできていませんでした。この出来事をきっかけに「ではどうすれば一緒にいる人が楽しんでくれるのか?」「どうすれば自分の強さを認めさせられるのか?」ということを考えるようになりました。

――ある意味、“本当の強さ”を求めるようになったんですね。

歌広場: はい。そのためには自分がやりたいことだけをやっていてはダメだし、どんな最強のプレーヤーも台の向こうに相手が座って対戦してくれないとそれを証明できないということです。実社会にもこれに似たことは結構あると思いますが、僕は割と幼いうちにそれをゲームから学びました。

 学ぶことが抜群に多かったから自然と格闘ゲームにハマっていったし、それ以外のゲームを遊ぶ必要が僕にはなかったですね。「行ってはいけない」と言われていたゲームセンターで、格闘ゲームを通じて僕はかなり多くのことを学ばせてもらいました。

◇  ◇  ◇

 ゲームは「誰かと共に楽しむもの」と語り、これを通じてさまざまな人付き合いの教訓を得たという歌広場淳さん。次回、話題は「コミュニケーションツールとしてのゲーム」という、さらにディープな方向へと進んでいく。9月17日掲載の第2回もお見逃しなく。

(文/稲垣宗彦、写真/酒井康治)

【ゴールデンボンバー・歌広場淳さんインタビュー記事】

・「人生の大事なことはゲームセンターで学んだ」(1):この記事
・「格闘ゲームは相手を深く知れるから楽しい」(2):9月17日公開
・「eスポーツは過渡期だから面白い」(3):9月18日公開


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