これほど期待に応えてくれたVRタイトルはない!
今回選んだコースは「ニュルブルクリンク 24h」、車種は「ポルシェGT3」。これだけでも、筆者がどういう人間かなんとなく分かるだろう。
ではスタート。ニュルは走り慣れたコースゆえ(もちろんゲームで)、容赦なく思いっきりアクセルを踏み込む。アップダウンとタイトなコーナーが連続するハードなコースは、VR(仮想現実)性能を試すにはうってつけだ。
おおっ……ハンドルから伝わる振動が、普通のコントローラーでは味わえないほどリアル。手から腕、肩へと“ブルブル”が上昇してくる。アクセルワークで気を許すと簡単にリアタイヤが滑り始め(すごいぞポルシェGT3)、ひとたびコースを外れれば、カウンターを当てるハンドルの重みに背中や腹の筋繊維が硬直する(ううっ、コースに戻れない)。うってかわって、長い直線コースでは風景がどんどん後ろに流れる加速感が爽快この上なし。これほどの“全身体験”は、恐らくVR効果によって生み出されるのだろう。視界の下に見えるハンドルを握る“自分の手”が、ぐるぐる回転動作を続け、妙に気持ち悪い。スピンして壁に激突した瞬間などは、「あわわ、修理代が……」と一瞬ビクッとしてしまうほど、グランツーリスモの世界に入り込める。
昨年からVRゲームが本格化し、いくつかタイトルを体験したが、グランツーリスモ SPORTほど期待に応えてくれたタイトルはなかった。シリーズをやり続けてきたからこそ、その価値がよりいっそう理解できたのかもしれない。
――テレビに映し出された、どこかで見たようなレースゲームの画面を前に、ゴーグルを付けてカラダを揺らし続ける筆者を、家族はまた冷ややかに見つめるだろう。構うもんか、欲望に忠実に生きてやる。
でも、「今度こそ終わりにするから……」。
(文・写真/酒井康治、写真/赤坂麻実、島徹)