AIがあろうがなかろうが、工夫しないと生き残れない

栗俣: 先日、わが子の友だちと話していたら「なぜ大人は天気予報をテレビで見るのかが不思議だ」と言われたんです。「携帯に聞けば分かるじゃん」と。なるほど、と思いました。

山田: 携帯電話というのを手に入れたことによって、生活が変わりましたよね。待ち合わせも、「何時にどこ」と事前に約束していたのが、今はもう待ち合わせすらせずに電話をして「今ここにいるから来て」というやりとりをするようになりました。技術が発達することによって人間の生活が変わるというのを自分でも体験してきましたし、仕事でもそういうことを記事にしてきました。これから世の中がどんな風に変わるのかをシミュレーションするのが、面白いというか好きなので「(実際にそういう未来に)なるかどうかは分からないけれど、取りあえず考えてみよう」という感じで描いていました。

元IT記者の漫画家が考える「AIとビジネスの共存」(画像)
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栗俣: 僕が一番好きなエピソードは『人間の仕事』(第59話。コミックの6巻に収録)。結末にある「人間らしい仕事ができるすき間」という言葉がずっと心に残っています。人間の仕事はこの先どのように変わっていくと思いますか。

山田: 「人間の仕事をAIが奪うから失業する」「この業種が危ない」という話はよく聞きますよね。自動運転が普及するとタクシーの運転手はいらなくなるという人もいたりする。でも、未来のタクシーの運転手の姿というのはあると思うんですよね。話術に長けた運転手だったり、占いができたり、何でもいいですが、運転はしないけれども運転手でいるという工夫のしようはいくらでもあると思います。大道芸みたいな気分でタクシー運転手をやっていくという可能性もあるわけです。

 「こういう芸をやっています。あなたの移動時間をちょっとハッピーなものにしませんか」と。乗った人がマジックを見て、「ああ面白かった。ありがとう」と言って、普通の自動運転よりちょっと高めのお金を払うとか。まあ、本当にそうなるかというのは別だけど、考え方としてはあると思います。

第59話「人間の仕事」のひとコマ
第59話「人間の仕事」のひとコマ
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 AIがあろうがなかろうが、工夫しないと結局生き残れないわけですよね。出版業界も同じだと思いますが、新しいテクノロジーがやって来たのに見て見ぬふりをして、自分たちが今まで築いてきたものをずっと同じようにやっていくのであれば、最終的には消えてしまうのは仕方がないと思います。AIは関係ないんです。

 どんな業種であれ、「工夫しよう」という気持ちがまず必要。だから、人間の仕事というエピソードでいうと、「トイレ掃除はロボットに任せればいい」というのが一般的な考え方かもしれません。でも「花を置いたらみんなが安らぐんじゃないか」とか「必要以上にきれいだと嬉しい」とか、そういうことに気付くのは人間だと思います。掃除をするためにつくられたロボットにはできないこと。

 業種ではなく、自分の仕事がどういう価値を持つかというのを考えて、そのために創意工夫していくということが、これからAIが出てくる時代において、大事になってくると思います。