あくまでもハイエンドでVRのヒット作を作りたい

――gumiとしてもバーチャルYouTuberなどによって生まれるスマホVRの市場にも力を入れていくのですか?

國光氏:  いいえ。あくまでもインキュベーション事業です。僕らは、VRでは「自社によるゲームコンテンツの開発」「インキュベーション事業」「米国でのファンド」と3つのことをやっていますが、本命は、あくまでもVRのハイエンドなところで大ヒットゲームを作ることです。

 僕の中で、VRでヒットするジャンルについては、確信めいたものがあります。大きく3つあるのですが、1つはMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game=大規模多人数同時参加型オンラインRPG)。『ソードアート・オンライン』のように、仮想の世界に入って、モンスターやドラゴンとパーティープレーで戦っていくというのは、絶対にみんなが求めていると思う。既に発表していますが、(子会社の)よむネコでガチで取り組みます。最初は、4人ぐらいで戦うMORPG(Multiplayer Online Role-Playing Game=複数プレーヤー参加型オンラインRPG)になりますが、将来的には本当のMMORPGを作っていきたい。

 2つ目は、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(『PUBG』)』のようなオープンワールドでのサバイバルゲーム。『PUBG』までいくとVR酔いをしてしまう気もしますが、オープンワールドでのガンシューター系は確実に受けると思います。

 3つ目は、マルチプレーの『Minecraft』。(VRイラストレーションアプリの)『Tilt Brush』もそうですが、VRの中でクリエーションをすることがすごくはやっている。人とコミュニケーションしながらVR空間でものを作っていく楽しみは確実にあると思っています。

 ただ、VR内の実在感をどのように出していくかとなど細かい調整は難しくて、チャレンジングなことは結構多い。それをつぶしていきながら、将来の目標として、この3つを作っていきたい。

『エニグマスフィア~透明球の謎』。子会社「よむネコ」が手がけるVR脱出ゲーム。プレーヤーは、地球の破壊を企てる地球外生命体の巨大プラントに潜入し、さまざまな仕掛けや謎を解きながら、動力源の「球体(スフィア)」をすべて壊して脱出を図る。写真上は、梅田ジョイポリスの『エニグマスフィア』コーナーの様子
『エニグマスフィア~透明球の謎』。子会社「よむネコ」が手がけるVR脱出ゲーム。プレーヤーは、地球の破壊を企てる地球外生命体の巨大プラントに潜入し、さまざまな仕掛けや謎を解きながら、動力源の「球体(スフィア)」をすべて壊して脱出を図る。写真上は、梅田ジョイポリスの『エニグマスフィア』コーナーの様子
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『エニグマスフィア~透明球の謎』のプレー画面
『エニグマスフィア~透明球の謎』のプレー画面
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――さきほどのバーチャルYouTuberの登場などは、VRに興味を持つ人が増えて、ハードの普及を後押しするなどマーケットの下地を作る上で重要だけれども、gumiとしてはあくまでもVRのゲームを自らが作ってヒットを出すことを目指しているわけですね。

國光氏:  僕がVRをやると言った3年ぐらい前は、日本にスタートアップ企業もないし、投資してくれる会社もなかった。市場がなければ誰もVRを作らないから、新しい市場自体を作っていかなくてはと思ってインキュベーションを日本、韓国、北欧で始め、米国でファンドを立ち上げました。

 最初の2年間はインキュベーションや米国での投資がほとんど。昨年、ようやく市場が温まってきて、僕らも「こういうものを作ったらいい」というのが見えてきたので、いよいよスタジオでVRゲームの開発をスタートした感じです。今年の年末から来年に向けて500ドルを切るハイエンドのスタンドアローン型HDMが出てくるタイミングで、弊社のVRゲームも順調にいけば出てくる。それが、キラーゲームになってくれると、業界をリードしていけるんじゃないかなと考えています。

――先手を打ってきたことは、今後、有利に働きますか?

國光氏:  僕は先行逃げ切りになると思っています。VRって技術とノウハウの塊なんですよ。例えば、VRで手がものに当たったときの表現はコントローラーを「ブルッ」と震わすだけなんですが、実際に当たったような感覚をどう出していくかは難しい。しかも、1個1個をすべて細かく作り込んでいくわけにはいかないので、ある程度モジュール化していく必要があります。そのほかにも、マルチプレーだったら、接近戦でどう同期させるのかなど、僕らも解決していない部分は結構あります。そういったノウハウの部分がすごく多いので、先行したところがかなり有利。そのまま逃げ切るといった形があるんじゃないかと思っています。

――株式市場でgumiは注目企業の一つですが(笑)、今期の業績、来期の展望はいかがですか?

國光氏:  今期については今のところ発表している四半期ベースは悪くないと思います。VRについていえば市場自体も順調だし、ARでは、Ingressの次世代版『Ingress Prime』や『Harry Potter:Wizards Unite』が出てくるので、2018年も盛り上がりそうです。

 これまで、新しいテクノロジーが出てくると、そのテクノロジーじゃなきゃできないゲームや遊び方が生まれて、エンターテインメントは進化してきたと思う。弊社も、今後、ゲーム事業は引き続きしっかりやっていきつつ、VRやAR、その先で言うとブロックチェーンとか、新しいテクノロジーじゃなきゃできない体験を作ることに、挑戦し続けたいと思っています。

VRは先行者が勝つ gumiが狙うハイエンドでのヒット作(画像)
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日本ゲーム産業史
ゲームソフトの巨人たち
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