VRの本格普及には500ドルを切るハードが必要

――もう1つの柱である「VR」についてはいかがでしょうか?

國光氏:  VRのマーケットは、順調に成長してきていると思っています。VRの市場規模は、ヘッドマウントディスプレー(以下HMD)の普及台数と連動しますが、2016年末時点では、PlayStation VR(PS VR)が100万台ぐらい、HTC ViveとOculus Riftが併せて70万台ぐらい。それが、2017年の末には、PS VRが200万台を超え、HTC ViveとOculus Riftが200万台ぐらい、合計400万台と言われていますから、2倍以上には伸びてきている。

 それに伴って、ゲームソフトも、売り上げが1億円を超えたタイトルが2016年末が15本、2017年末は38本と、こちらも2倍以上に増えています。

 では、本格的にVR市場が立ち上がってくるのはいつごろか? 僕は2つの壁を乗り越えなければいけないと思っています。1つはハードの壁です。性能面でも、価格面でも適切なハードが出てくる必要がある。現在のハイエンドVRは、HMDがコードでつながっていて、HMDの動きを検知するセンサーを設置する必要があります。しかもセンサーが検知できる、ある程度のスペースが必要になるなど、セッティングが絶望的に面倒くさい。

 なので、求められるのは、今のHTC Viveのクオリティーで、センサーレス、コードレスのスタンドアローン型HMDの登場です。HMDをパカッとはめたらすぐにプレーができる使い勝手の良さで、なおかつ価格が500ドルを切る。家庭用ゲーム機の歴史を見れば分かる通り、ハードが売れるのは500ドルを切ったとき。それが300ドル台に入ってくると一気に普及する。

 VRが最初に市場に登場したときは、HMDが約1000ドル、それをつなげるハイエンドPCが2000ドルぐらいで、3000ドルぐらいかかりました。それが、ググッと価格が下がってきていて、ハイエンドではないですが、Oculus Go(オキュラス ゴー)が199ドルで手に入るようになってきました。

Oculus Go
Oculus Go
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――実際に、500ドルを切る、センサーレス、コードレスのスタンドアローン型HMDが登場するのはいつごろになりそうでしょうか?

國光氏:  2018年末から2019年の頭ごろだと思います。現在も、“惜しい”ハードはたくさん出てきています。例えば、Oculus Goは、完全スタンドアローンで199ドル。ただし、コントローラーが片手なので6DoF(Six Degrees of Freedom=3次元において剛体が取り得る動きの自由度)が取れない。

 中国だけで発売された「Vive Focus」もスタンドアローン型ですが、価格が600ドル超と高いのと、コントローラーが片手。マイクロソフトのMR「Windows Mixed Reality」は、コードレスなんだけれども、PCは必要です。

 このように全体的にあとちょっとのところまで来ている。実際、Oculusは既に「Santa Cruz」という、コードレスでPCも必要ないスタンドアローン型の次世代機を発表していて、開発キットを今年提供すると言っているので、ハードの問題は来年に向けて解決していくのではと見ています。

――もう一つの壁は?

國光氏:  ソフトですね。ゲームの歴史を振り返ると、面白いゲームはたくさんは必要ないんです。1本のどうしてもやりたくなるゲームがあれば、ユーザーは飛びつく。スマートフォンゲームでいえば『パズル&ドラゴンズ』、Nintendo Switchであれば『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。1本のキラーゲームが出てくることが、市場の立ち上げには欠かせないのかなと思います。

――キラーゲームは出てきそうですか?

國光氏:  Switchは任天堂と一部のゲーム会社しか作っていなかったけど、VRのゲームは、世界中のデベロッパーが、「VRならではの面白さ」に挑戦しているので、そのうちキラータイトルが出てくるのではと、僕はポジティブに考えています。そして、僕らが作っているゲームがキラータイトルになるのが一番の理想。

 ゲームの歴史はシンプルで、今まで見たことがない「Wow!」という驚きの体験にユーザーはお金を払ってきた。VRが始まって2~3年ほどたちますけど、かつてのWiiを超えるような「Wow!」は既にあると思うんです。もちろん、酔いやすいとか疲れるとかいろいろな問題点はあります。でも、「Wow!」という興奮は提供できるので、ゲームクリエイターが頭を使って、トライ&エラーしていくと、ユーザーに刺さるゲームが必ず作れると思います。