野球などのスポーツ事業との協業も視野に

――eスポーツに対する取り組みについて教えてください。

松井氏: eスポーツについては他のゲーム会社も話題にしていますし、DeNAとしてもスポーツ事業がありますから、ゲームと組み合わせてやっていこうという話を社内で積極的にしています。ただ、eスポーツ向けゲームを開発するのか、eスポーツチームを作るのか、リーグを作るのかなど、選択肢が増えているので、戦略をきちんと立てたいと思っています。個人的には、DeNAが持つスポーツチームと組み合わせた何かをしたいですね。

――ということは野球、マラソン、バスケットなどと組み合わせるということでしょうか。

松井氏: そうしたスポーツチームと連携した何かができればと思います。ただeスポーツに対してプレーヤーが本当に何を求めているのか見えてこないと、何をすればいいか判断が難しいです。プロゲーマーや関係者向けのソリューションはそれに合わせて一緒に作っていけるのですが。

――『逆転オセロニア』は、結構eスポーツっぽい要素がありますね。

松井氏: そうかもしれませんが、eスポーツを意識して作ったわけではないですから。開発者たちに言わせると、「eスポーツ向けのゲームを作るなら、オリンピックタイトルになるようなものを作るつもりじゃないとイヤだ」と(笑)。今のゲームの延長線上のまま、グローバルで成長していくというストーリーは、現時点では描いていません。本当にやるなら、最初からオリンピックを狙って作りたいというのが開発者たちの思いですね。

 モバイルゲームにはそれ単体でマネタイズするタイプと、それ以外もセットでマネタイズするタイプがあると思います。中国や韓国、北米ではプレーヤーの文化が違いますし、eスポーツ市場の構成(誰がどのようにお金を払うのかという流れ)も結構バラバラだと思っています。日本に至っては、eスポーツ市場がまだまだ立ち上がっていませんから、何をどう作るという明確な方向性は見えていません。eスポーツチームを作ってリーグも立ち上げるとか、どこかのリーグに所属するというだけであれば、そう遅くないタイミングでできると考えていますが、その先が何につながるのかが見えていないと思うんですね。

 YouTuberという存在が広まったのも、「自分も何かできそう」という身近さに、子どもたちが憧れているからではないでしょうか。eスポーツのプロプレーヤーのプレーをどのような状況で見れば「俺もなりたい」と日本の子どもたちが思ってくれるのか、正直まだ分からないです。自分のプレーとの差がすごくあれば尊敬してもらえると思うのですが、それだけで感じてもらえるのか……。

 プロ野球選手やプロサッカー選手のように、プレーだけでなく人となりや、ステータス、そういったもの含めてトータルでやっぱりすごいと感じてもらえるようになれば、eスポーツは文化として成立すると思います。ゲーム開発側やeスポーツ興行側の都合それぞれだけで動いてもあまり盛り上がらないのではないか、という気がしています。

――スタープレーヤーが必要というわけですか。

松井氏: そう思いますね。“ニワトリと卵”ではないですが、さまざまなモノが掛け合わされて、徐々に作られていくものです。とりあえず我々も動いてみますが、プロプレーヤーを作ってそこでおしまい、というふうにならないように、育て方やマネジメント、プレーヤーに何を提供できるのか、ということまでコーディネートしていかなければならないでしょう。

 野球やバスケ、マラソンなどのプロスポーツ選手を活用する方法も、うまくいけば面白いですが、最初の施策をはずしてしまうとすごく痛いじゃないですか。周囲の動きから遅れないようにしつつも、拙速に進めて「もっと選手を大事に使ってくれよ」とファンに思われないように、慎重に動きたいですね。

――2018年はどのように展開したいですか。

松井氏: 再定義をしてから開発を始めたゲームは、2018年末~2019年初めにやっと出始めるスケジュールです。そういう中で、2018年は、ビジョンに沿った企画開発に注力する時期になると考えています。

 新規IP開発やプラットフォーム事業も新たに見ていく立場になったので、全体を一緒に展開するような、いわゆるメディアミックス的な動きも考えています。マンガやアニメ、ゲーム、それ以外のコンテンツや商材などを含めて、いろいろな形でお客様に触ってもらえるようにしたいです。そうした連動性のあるオリジナルのゲームタイトルやキャラクターを作っていこうと現在仕込んでいます。その1つでも人気が出れば、その後も自信を持っていろいろなことができるようになると思います。

 大手ゲーム会社が培っているブランドやオリジナルIPは、ゲーム会社としてとても大事です。我々もゲーム事業を十何年も続けていますが、そういう“大事なもの”がないんですよね。IPを開発すると決めて、やり続ける覚悟が足りていなかったんだと思っています。これからは、その覚悟を持って事業を進めていきたいです。

ディー・エヌ・エーの松井毅執行役員
ディー・エヌ・エーの松井毅執行役員
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日本ゲーム産業史
ゲームソフトの巨人たち
日本ゲーム産業史 ゲームソフトの巨人たち


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