甘えを排除して、リリースできるタイトルを厳選

――その社内改革に取り組まれて半年近くたちましたが、成果はいかがでしょう。

松井氏: 成果は出てきていると思います。例えば、あるゲーム開発部門では「前代未聞」というキーワードをビジョンの1つに掲げ、その方向に沿った開発姿勢に変化してきています。これまでなら従来のゲームから発想した企画であっても、きちんとした内容の企画なら、数値目標を達成するためにゲーム開発を進行させていたと思います。

 しかし、改革後は、自分たちが掲げた「前代未聞」というビジョンにそぐわない企画は(成功する可能性があっても)ことごとくリジェクトされるようになりました。数値目標達成のためだけに余計な時間を使わなくなりましたし、ビジョンにそぐわない企画は視点を変えて考え直すという体質に変わってきたのです。

――ビジョンに縛られ自主規制することで、提案する企画本数が減り、結果としてチャレンジできる可能性が減ったりはしませんか。

松井氏: 自主規制によって起案する数が減るという事態は避けるべきことです。ただ、今回は逆でした。起案すべき軸(ビジョン)が明確になったため、改革前よりも逆に提案数が増えたんです。これは喜ぶべきことです。

 もう一つ、「チャレンジする数を絞り込みすぎていないか」という懸念もありますが、これまでの開発体制が普通の状況ではなかったのかもしれないという考えに至りました。以前は、ゲーム企画を起案して制作を始めたら、意地でも作りきってリリースしようという意識が強すぎたと思っています。

 協業している他のゲーム会社の様子を聞くと、起案から最後まで生き残ってリリースできるゲームの数(割合)はDeNAの感覚よりももっと少なかったのです。我々の場合は「ここまで作ったんだからリリースしようよ」という意識があって、それが甘えにつながっていました。ずっとお客さんに遊んでもらい続けられる自信があるタイトルだけに絞って出さなければならない、という普通のゲーム会社なら当たり前のスタンスに変わってきました。

 ただ、ベンチャー気質というのか、元来のネット企業ならではの良い部分も必要です。何もかもギチギチに官僚的に運営しても、そこからミラクルは生まれないでしょう。普通なら大手ゲーム会社はチャレンジしないだろうという内容の企画であってもチャレンジできる感覚は持っていたいです。

再出発のDeNA、eスポーツで事業連動も(画像)
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