虎ノ門の多様性のカギは「新橋」

 虎ノ門エリアの特徴は単に住宅が多いだけではない。暮らすためには物販、飲食、子育て関連施設などさまざまな要素が必要になるし、そもそも多様性が担保されていてこそ都市だろう。

 「ハイクラスなオフィスはもちろん、住宅、サービスアパートメント、商業施設、カンファレンス、ホテルそのほかの施設をトータルに整備し、徒歩圏内でなんでもそろう、世界のグローバルプレイヤーに気持ちよく過ごしていただける地域を目指している」(森ビル広報室)。前述した通り、子育て支援施設、スパなども計画されており、生活に必要なモノは網羅されている。

 多様性は自ら作り出すだけではなく、ほかの地域、組織などとの連携でも生まれる。地域との連携では、森ビルがかつて六本木ヒルズを開発する際、隣接する麻布十番の商店街などと協働したことは有名だが、虎ノ門ヒルズの場合は新橋がそうした存在になるという。猥雑な雰囲気のある繁華街・新橋がある点が多様性に寄与すると考えているというのだ。

「海外からの来訪者は新橋の路地裏の焼き鳥屋に大喜びする。すぐ近くに、自分たちと異なる街があるのは大きな魅力。断絶するのではなく、共存共栄を図っていきたい」(前出・平野氏)

 再開発で大規模な商業施設ができると近隣の個人店を中心とした商店街や飲食店街が消滅するケースは少なくないが、これはパイを取り合うと考えるがため。取り合うのではなく、異なる魅力をアピールし、回遊できるようにすればパイは増やせるはずなのだ。

 実際、六本木ヒルズ誕生後の麻布十番は都心の下町として外国人観光客も含めて来訪者が増えている。虎ノ門ヒルズと新橋が同様の関係になれば、暮らしの楽しみが増える。虎ノ門ヒルズで眺望としゃれたフレンチを楽しんだあと、新橋の路地裏で二次会という楽しみ方ができるのは虎ノ門ならではだろう。

 歴史のある地元と連携、その良さを生かした街づくりを模索している点も大きなポイントだ。例えば、虎ノ門ヒルズエリアに隣接する愛宕山は都心とは思えないほどの濃い緑に覆われたエリア。この景観を生かし、再開発に当たっては緑のラインを創出する計画がある。新虎通りから桜田通りを横切って赤坂までを並木道にしようというもので、実現すれば歩いて楽しいという価値も加わる。

 それ以外にも新虎通りエリアマネジメント協議会、一般社団法人新虎通りエリアマネジメントを通じて地元でのゴミ拾い、打ち水、街バル開催など地道な連携も行われており、人的交流も進みつつある。

新虎通りでは地元でのゴミ拾い、打ち水、街バル開催など地道な連携も行われている
新虎通りでは地元でのゴミ拾い、打ち水、街バル開催など地道な連携も行われている
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