ポイント(5)“シブいビル探しゲーム”を楽しむ

 この本で紹介しているシブいビルを続けて見ると、日常、街を歩いていても“これはシブいビルに違いない”という勘が働くようになる。鈴木氏も新宿のデパートで食事をした際、西口の駐車場喚起筒のモザイク模様を発見して「シブい」と直感。近くに行ってあちこちを確認した結果、多くの箇所に共通してそのタイルが張られていることが分かり、調べてみると竣工から50年を経ているタイルだったという。「今は物件情報をネットで調べることができるので、自分のテリトリーでそれらしきビルを見かけたら、住所で築年数を調べることもできる。調べたら1970年代の建築で『あ、本当に渋かった!』という喜びがあるんです。お金もかからないし、SNSで情報交換をして楽しむこともできます」(鈴木氏)。

 ちなみに“シブいビル”を見つけるコツは、「最近の建物では見かけない」ものに注目することだそうだ。例えば階段が見せ場となっているデザイン、モザイク模様の装飾、スキップフロア、踏板の間が空洞になっている「ストリップ階段」(現在では危険なため作れないという)などがその代表。特に窓が角丸っぽいデザインの場合、シブいビルであることが多いそうだ。

「現存するシブいビルの多くが、1964年の東京五輪前に建てられたもの。2020年までには当時を上回る規模の開発が進むでしょうから、今ある古いビルの多くがその前後に解体されてしまう可能性が高いのです。シブいビル探しゲームができるのは、もしかしたら東京五輪前の今が最後のチャンスかもしれません。解体するのは簡単ですが、どれももう、今ではもう作ることができないもの。残しておくことで、ビル自体の価値が上がる場合もあります。この本がシブいビルの持つ価値に多くの人が目を向けるきっかけになればうれしい」(鈴木氏)

(文/桑原恵美子)