コーディネーターを務めたITジャーナリスト・佐野正弘氏
コーディネーターを務めたITジャーナリスト・佐野正弘氏

 あらゆる機器をインターネットにつなげる「IoT(モノのインターネット)」。すっかりなじみのワードとなったが、これから新しい展開を迎えようとしている。そこで来る「IoT 2.0」時代をテーマに、メーカー、キャリア、サービス・プロバイダーと立場の異なる3社がTREND EXPO TOKYO 2016に集い、専門セッション「『つながる』の、その先へ。“IoT 2.0”の幕が上がる!」を展開した。

 これまでのIoTは、「モノがインターネットにつながるということばかりにスポットが当たってきた」と、切り出したのは、モデレーターを務めたITジャーナリストの佐野正弘氏。「重要なのはモノがインターネットにつながることによって、どんな新しい価値を生み出すか、なのです」と力説した。それが本当の意味でのIoTの時代、「IoT 2.0」の幕開けだという。

村上 臣氏 ヤフー 執行役員 CMO(チーフ・モバイル・オフィサー)
村上 臣氏 ヤフー 執行役員 CMO(チーフ・モバイル・オフィサー)

 ではそもそも「IoT」とは何か?

 ヤフー執行役員CMO・村上臣氏はそれを、「ネットのサービスや技術を、何らかのリアルなものにくっつけたもの」と説明する。同社ではIoT製品やWebサービスを連携させるアプリ「myThings」を提供している。このアプリは、例えば「防災速報を受信したら、部屋のスピーカーを鳴らす」など、異なるサービスや機器同士をつなげるハブの役割を果たす。現在約50の製品、サービスに対応しているという。

 「2020年には一人あたり10個くらいのIoT機器を持つようになるといわれているが、そうなると管理が大変。そこでいろんなIoT機器やサービスが連携できる仕組みを考えた」と村上氏は語る。

白石奈緒樹氏 シャープ IoT通信事業本部 IoTクラウド事業推進部長
白石奈緒樹氏 シャープ IoT通信事業本部 IoTクラウド事業推進部長

 一方、家電をIoT化するには、まだ超えなければならない大きな課題があると指摘するのは、シャープのIoTクラウド事業推進部長・白石奈緒樹氏だ。

 「一つ目はコスト。ネットにつながるとその分高くなるので、それだけの価値をお客さんに届けなければならない。二つ目は買い替えサイクル。家電製品は10~15年と長いサイクルで使うものだが、その間ずっと価値を提供し続けられるか。三つ目はいろんなメーカーの製品が混在する中で、どうやって価値を提供するか、です」

 これらの課題解決に欠かせないのが、人工知能(AI)とクラウドだという。必要な進化をクラウドで実現するなど、コストに見合った家電の提供を目指している。

德弘徳人氏 NTTドコモ R&Dイノベーション本部 移動機開発部長
德弘徳人氏 NTTドコモ R&Dイノベーション本部 移動機開発部長

 開発中の新たなSIM「eSIM」について紹介したのは、ハード、ソフトの両面からデバイス開発に携わっているNTTドコモの移動機開発部長・德弘徳人氏だ。従来のように後付で、使用する機器ごとにSIMを入れ替えるのではなく、「eSIM」ははじめから機器の中に実装されることになるという。このSIMを外から書き換えることでこれまでと同様の働きを可能にする。

 「『eSIM』を実装した製品を海外に出荷すれば、外から現地のキャリアの情報にSIMの情報を書き換えることができるようになる」と德弘氏は解説する。

つながることでどんな価値を提供できるのか?

 後半のトークセッションでは、それぞれの立場から、今後IoTがどう広がっていくのか、その際の課題について語られた。

 「IoTの機器で一番初めに盛り上がるのはスマートホーム関連だと思っている。セキュリティやシャープの『ホームアシスタント』のような仕組み、さらに『Amazon Echo』のような、ECとつながるデバイスに注目している」と村上氏は語る。

 それに対し白石氏は、「異なるメーカーのクラウドをどう連携するかが肝になる。家電とクラウドの連携は進んでいるが、メーカーの垣根を越えてそれをつないでいく仕組みが必要」と現状について解説した。

 ドコモ德弘氏は「最初から家電にeSIMが組み込まれていれば、ネットにも直接つながる」と自社製品をアピール。その実現には家電の通信費を消費者に納得してもらう必要があるため、白石氏は「これまで“売り切り”で販売していたビジネスモデルを変えることになる」と指摘した。一方で「ビジネスモデルの変革を進めるのだけがIoTなのかな」とも。

 德弘氏は「ただつなげばいいわけではなく、対価を払ってもいいと思える新しい価値の提供が必要」と話し、「通信料を払うというのではなく、サービスの一部としてパッケージングしていかないといけない。どういうサービスでどう価値を提供するかが重要」とまとめ、セッションは幕を閉じた。

IoT2.0時代が到来!「つながる」の先にある可能性(画像)
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(文/太田百合子、写真/中村宏)

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