
社長兼CEO
初日の基調講演、第2部は単行本『TSUTAYAの謎』の著者である川島蓉子氏が、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)社長兼CEOの増田宗昭氏が考えていることなどを聞くトークショーだ。
まず川島氏が「増田さんの中で、最新のトピックスはなんですか?」と質問すると、増田氏は銀座に蔦屋書店を出店することだという。それも単なる書店ではなく、「世界一のアートの本屋」とのこと。増田氏はなぜ今「アートの本屋」を目指すのか――。
“3つのこと”しかやらないことにした
増田氏は自身の会社であるCCCを「企画会社」だと表現する。そのうえで「これからは“3つのこと”しかやらないことにした」というのだ。
「1つめは、創設時からやっていることですが、人の幸せを作る『プラットフォーム』を企画すること。初めは僕らが企画会社だと言っても、誰も評価してくれるわけがない。だから、作品としてTSUTAYAをつくりました。その次に、『データベース』が人を幸せにできることが、Tカードをやってきて分かった。これが2つめです」。

ifs未来研究所 所長
増田節はさらに続く。
「人を幸せにするためには、『ライフスタイル』をお薦めできる集団にならないといけない。これが3つめです。でも世の中にはライフスタイルを提案する人がたくさんいるので、ジャンルを絞ってやっていくことにしました」
結果、絞り込んだものがアート。アート市場は、日本では小さい。だからこそこのジャンルの1番になりたいと考えたからだという。また、外国人から見れば、日本の文化は絶対に見直されるはず。そうした人が集まる銀座に出店し、CCCグループの全エネルギーを集中させ、トップを目指す。
ここで川島氏が“ライフスタイル提案”について質問を浴びせた。
「増田さんがライフスタイルを定義すると、どういう言葉になりますか」
増田氏の答えはこうだ。
「新しい生活様式の提案です。世の中一般に普及しているものでも、そのお客さんにとって新しければいい。“これが世界初の生活提案だ”と仰々しいことをやらなくてもいいんです」
究極のエゴは大衆も満足させる
「増田さんは『次の企画』を語るときが一番楽しそうですね」と川島氏はいう。増田氏のアイデアや企画は、どうやったら生まれてくるのだろうか。
「遊ぶしかない。市場を見るのも大事だけど、もっと自分を見たほうがいい。自分がしたいことや感動するものを知ること。それを極めて極めて極めまくって、それを提示したら、(自分と)類似する人がきっと喜ぶはず。いってみれば、それは究極のエゴ。しかし、究極のエゴは大衆も満足させるんじゃないかと思っています」
さらに、人は自分が知っていることでしか物事を考えられない。だが、それでは時代を変えられず、当たり前のものしかできないと、増田氏は考えている。
「まず自分が何を知らないのかを、自分の時間を使って徹底的に知ろうとするべき。そうしないと次のアイデアは思い浮かばない。自分が何を知らないのかが分かれば、次にやるべきことが分かるのです」
TSUTAYAから始まり、蔦屋書店や図書館、Tカードなど多彩な事業展開を見せてきたCCCグループ。気心の知れた川島氏との掛け合いで、そのトップである増田氏の膨大なアイデアの源泉を垣間見ることができる楽しいトークショーとなった。
(文/河原塚英信、写真/中村宏)