たった170坪で世界最大の遊園地

 バンダイナムコエンターテインメントの「VR ZONE Project i Can」もまた、VRによってスペースの制限を取り払った例だろう。こちらは2016年4月15日~10月10日まで、お台場ダイバーシティ東京に期間限定で開設されたVRアミューズメント施設だ(関連記事:「怖さで絶叫、膝はガクガク、ナムコのVR施設が楽しい!」「VRで体験 ガンダムとザクの戦闘に巻き込まれる」)。

ナムコが開設したVRアミューズメント施設「VR ZONE Project i Can」。広さは165.26坪(約545.4平方メートル)
ナムコが開設したVRアミューズメント施設「VR ZONE Project i Can」。広さは165.26坪(約545.4平方メートル)
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 VR ZONEでは、165.26坪のスペースに8種類ほどのアクティビティーマシンが並んでおり、崖が切り立つ雪山をスキーで滑り降りたり、殺人鬼が潜む廃病棟から脱出したり、機動戦士ガンダムの手に乗ってザクとの戦いに巻き込まれたりといったVR体験ができる。

クルマも遊園地もVRに入っちゃう(画像)
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クルマも遊園地もVRに入っちゃう(画像)
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スキーの滑降体験ができる『スキーロデオ』。雪山を超高速で滑り降りるゲーム。プレーヤーには右のようなVR映像が見える。ヘッドセットのマイクが呼吸を拾い、息が白く見える
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ガンダムの手の上に乗れる「ガンダムVR『ダイバ強襲』」。右がザクとの戦闘中のVR映像

 最大の特徴は、VRゴーグルやヘッドセットといったVR用のデバイスに、振動モーターやダンパーなどを内蔵した床や椅子などの装置を組み合わせていることだ。雪山を滑降すれば足に強い負荷がかかり、ガンダムの手の上に乗ればグラグラと揺れる。視覚や聴覚に揺れなどの体感が加わることで、没入感は数倍になる。従来のアミューズメント施設のものとはまったく異なるアクティビティーマシンに、体験希望者が殺到。体験費用はマシン1台が1回につき1000円前後、体験には事前の予約申し込みが必要にもかかわらず、1カ月先まで予約が埋まる事態になった。

 VR ZONEのプロジェクトを主導するバンダイナムコエンターテインメントAM事業部の小山順一朗エグゼクティブプロデューサーは、VR ZONEを「たった170坪弱のスペースに作った世界最大の遊園地」と表現する。個々のアクティビティーマシンは数メートル四方に収まる程度の大きさながら、ひとたびVR用のデバイスを装着すると、そこは広大な雪山や廃病棟などに変わる。

 従来のテーマパークは、乗り物などを設置し、それらが動くようにしなければならないため、広いスペースが必要だった。当たり前だが、雪山なら雪山、廃病棟なら廃病棟を作らなければならない。アトラクションを設置したり入れ替えたりするにも大きなコストと手間がかかる。だが、それらをVRで実現できるなら、どんなアトラクションも狭いスペースに設置できるし、撤去や入れ替えも簡単になる。

 「現実のすべてを再現する必要はない。過去の経験を呼び起こすようなポイントさえ押さえれば、体が自然と反応し、リアルに感じられる」(小山氏)。VR ZONEでは、VRについてあまり知らなくても、リアル型脱出ゲームなどには慣れ親しんでいる20代、30代がカップルで来場するケースも多く、VRには若い世代に訴求力があることが分かったという。

 メルセデス・ベンツのMercedes-Benz Lifestyle LoungeやバンダイナムコのVR ZONEのように、空間の制限を取り払うVRのメリットは計り知れない。クルマの販売はショールームの外へ、エンターテインメント施設はテーマパークの外へ飛び出し、どこにでも“出張所”を作れるようになるからだ。見込み客を振り向かせたければ、自ら動いて見込み客に会いに行ける――、VRで顧客とのタッチポイントを増やす企業は今後も増えそうだ。

【特集】“ヒットを作るVR”~マーケティングに有効か?

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 旅のプランの決め手はVR
 【第2部】【第2部】メルセデスと蔦屋書店が協業
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 【第3部】IKEAはキッチンを再現
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 【結論】活用法はゲームだけじゃない!
 消費者の購入活動にVRが大きく影響する
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(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト、平野亜矢=日経トレンディネット)