VRの浸透で流通各社の戦略にも変化が

 ところで、なぜ今、VRの活用が活発化し始めたのか。「バーチャルリアリティー」は1990年代にもブームになったが、一過性のものだった。当時のVRは、コンピューターの性能の限界から映像の質が悪く、VR空間での自由度も低かったからだ。それが今、再び注目されるようになったのは、やはりVRで体験できる世界のリアリティーが著しく現実に近づいたからだろう。

バンダイナムコエンターテインメントAM事業部の小山順一朗エグゼクティブプロデューサー
バンダイナムコエンターテインメントAM事業部の小山順一朗エグゼクティブプロデューサー
[画像のクリックで拡大表示]

 VRの市場動向などに詳しい野村総合研究所コンサルティング事業本部ICT・メディア産業コンサルティング部副主任コンサルタントの山岸京介氏は、「今度こそVRは定着するのではないか」と言う。「VRコンテンツ自体の制作は、従来の映像制作技術の延長線上であり、あまり難しくない。それでいて、映像を見ている人には、従来の映像よりも深い実感を与えられる」(山岸氏)。

 マーケティングツールとしてのVRの活用がすでに始まっているのは旅行業界や不動産業界、ブライダル業界などだが、「今後は家電量販店などにも広がるのではないか」と山岸氏は話す。現状、家電などはリアルな店舗で実物を確認し、ネットで注文するという人が増えているが、VRで実物と同等のものを確認できるようになれば、すべてがネットで完結するようになる。近年、流通各社で活発な、リアル店舗をショーウインドウにしてネットで稼ぐという戦略は、VRの登場によって見直しを迫られるかもしれない。

 山岸氏によると、実際、米eBayが、スマートフォンと簡易VRビューワーを組み合わせたVRでネットショッピングができるサービスの実証実験を行ったところ、被験者に好評で、そのまま本サービスに移行したという。今回紹介したIKEAも、VRから商品を購入できるようにしている。リアル店舗が少ないIKEAにとって、今後重要な販促ツールになる可能性が高い。

野村総合研究所コンサルティング事業本部ICT・メディア産業コンサルティング部副主任コンサルタントの山岸京介氏
野村総合研究所コンサルティング事業本部ICT・メディア産業コンサルティング部副主任コンサルタントの山岸京介氏
[画像のクリックで拡大表示]

 ただ、現時点では、VRはゲームなどに関心が高い先進的な消費者に注目されているだけにすぎない。今後、誰でも利用する当たり前の技術になるには、VR未体験の人たちに、そのリアリティーや効果を体験してもらう機会を増やす必要がありそうだ。「イオンが『イオンSIM』を始めて格安SIMが市民権を得たように、ショッピングモールや量販店など、一般の人が多く訪れる場所で体験できるようになると一気に広がる可能性は高い」と山岸氏は見ている。

【特集】“ヒットを作るVR”~マーケティングに有効か?

 【第1部】JALやH.I.S.が導入
 旅のプランの決め手はVR
 【第2部】メルセデスと蔦屋書店が協業
 クルマも遊園地もVRに入っちゃう
【第3部】IKEAはキッチンを再現
 VRで式場選びも家具選びも失敗しない
 【結論】活用法はゲームだけじゃない!
 消費者の購入活動にVRが大きく影響する
→特集のトップに戻る


(文/平野亜矢=日経トレンディネット)