人工知能(AI)とIoTを組み合わせた「AIoT」というビジョンを打ち出し、クラウドと連携した「人に寄り添う」家電を目指すシャープ。シャープが描くIoTの理想形とは、一体どのようなものなのだろうか。IoT通信事業本部 IoTクラウド事業推進センター所長の白石奈緒樹氏に話を聞いた。
IoTに取り組むきっかけはクラウド
――かつてはザウルスなどの開発を手掛ていたそうですね。
白石氏: はい。ザウルスシリーズの後、同じチームを引き連れて、KDDI向けの携帯電話やスマートフォンなどの開発も手掛けていました。ザウルスチームは非常に強力なソフト開発力を持っており、現在のAIoTの取り組みでも活躍してもらっています。
――PDAやスマホの開発から、どのような経緯でIoTに取り組むこととなったのでしょうか。
白石氏: スマホ以降はテレビや自動車など、さまざまな分野の技術に取り組んでいました。そうこうしているうちに、シャープの多くのカテゴリーで、クラウドーー当時は「サーバー」と言っていましたがーーに接続する製品が生まれるようになってきたのです。
当初は、PCのソフト開発の延長線上でサーバー側のソフトも開発できたのですが、クラウドの進化と共に大きなパラダイムシフトが起きました。そのため、ソフト面で新しいクラウド環境に対応できなくなる部署が増えていたんです。この状況を解消するべく、各部署のクラウドを束ねて管理する組織を作ったのが、現在の部署の前身です。
――クラウドへの取り組みが、なぜIoTへとつながっていったのでしょう?
白石氏: 昨年にシャープがカンパニー制へ移行した際、私の所属する組織がテレビや白物家電、通信などと一緒のカンパニーに位置付けられたのです。そこでクラウドの時のように、他の分野でもソフトウェアの分野で困ったことがあれば助けることはできないかと、当時の社長である高橋興三氏に相談したところ、「できるなら助けてやってくれ」と言われたんですね。
それを錦の御旗だと思い、さまざまな部署を訪れて話をしました。今、クラウドを使って商品開発をしている人たちに、共通の価値を提供すれば便利なのではと考えたのです。特に今後は、音声対話技術の重要性が増すと感じていました。そこで、組織を横断してメンバーを集め、集中的に開発する「緊急プロジェクト」を活用し、音声対話の基礎技術を開発。それをクラウドに載せることで、幅広い製品で使えるようにしました。
この音声対話技術を活用したのが「ともだち家電」(現在の「ココロプロジェクト」)です。対話しながら利用でき、なおかつ機器同士が連携する家電製品の土台を作ったことが、IoTへの取り組みへとつながりました。