VR(仮想現実)は、PlayStation VRが発売されたり、有名な企業が販促に活用し始めたりするなど、現在もっとも注目されている技術のひとつだ。とはいえ、そのキラーコンテンツの形はまだ茫洋としているのが現状だろう。VR対応ゲームに力を入れているコロプラが考えるキラーコンテンツとは? TREND EXPO TOKYO 2016に登壇する同社の小林傑氏に聞いた。

小林 傑氏<br>コロプラ Kuma the Bear開発本部 VRコンテンツ開発グループマネージャー
小林 傑氏
コロプラ Kuma the Bear開発本部 VRコンテンツ開発グループマネージャー
大学卒業後、2012年に入社。複数のスマートフォンカジュアルゲームの開発担当を経て、プロジェクトマネージャーとして「ほしの島のにゃんこ」の開発・運営に携わる。2015年よりVRコンテンツ開発に携わり、現在はVRコンテンツ開発グループのマネージャーとして日々研究や新しいコンテンツ開発に励んでいる
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――まず、コロプラに入社したきっかけを教えてください。

小林傑氏(以下、小林): 大学では電気電子工学科で学んでいましたが、プログラミングやゲームとは縁がありませんでした。

 コロプラを知ったきっかけは、大学の友人に誘われてコロプラの「コロニーな生活」を遊び始めたことでした。位置情報を使ったゲームで、実際の移動距離がゲーム内通貨となるため、移動が多いほどゲーム内通貨が多く手に入って有利になるんです。それまで大学から遠距離に住んでいてあまり授業に出てこなかったような友人が、ゲームにハマって1限から授業に出てくるようになり、留年が危ぶまれていたのに無事卒業して就職できたんです。

 この、「ゲームが人生を変える瞬間」を目撃したのが、コロプラに興味を持って入社するきっかけでした。

――入社してからはどんな仕事を担当しましたか?

小林: ちょうどコロプラがスマートフォンアプリを開発しはじめた時期で、プレイ時間が5~10分程度の手軽に楽しめるようなゲームを開発するチームに加わりました。プログラミングやゲーム作りについて学びながらゲームを開発していくという感じでした。

 そして入社2年目に、「ほしの島のにゃんこ」という子ども向けでいままで携わってきたゲームよりも規模が大きめのゲーム開発を任されました。そこでプロジェクトマネージャーなどを経験しました。

――その次がVRコンテンツですか?

小林: 「ほしの島のにゃんこ」の運営をしていたときに、今度はVRをやってくれと言われました。まだOculus Riftの開発者向けキットが出たころで、VRについてはよく知りませんでした。

 会社から、VRが次のプラットフォームになるかもしれないと言われていました。社内では「the射的!」というスマートフォンアプリのVR版が研究されていて、それを体験したときは「すごいな」と思いましたが、開発者向けのVR用HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が不格好だったこともあって、当時はVRに対して懐疑的でした。

――VRチームではどんな取り組みをしてきたのでしょう?

小林: まず、スマートフォンアプリで人気が高かったRPG「白猫プロジェクト」の世界をVRで再現するということで、「白猫VRプロジェクト」の開発に取り組みました。

 その後、Oculus Riftの正式発売に合わせて「Fly to KUMA」を手がけました。「Fly to KUMA」は、VR空間の中で物体を移動させるインターフェースの研究をしていて、その成果から生まれたパズルゲームです。PlayStation VRにも対応しました。

 現在はVRチームのマネージメント、VR用HMDを作っている各メーカーさんとの交渉、開発中タイトルのディレクションなど、VRチームに関わることなら何でもやっています。

VRのキラーコンテンツを常に考えている~コロプラ 小林傑氏(画像)
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VRゲームは体験性とゲーム性の両立が課題

――VRでないゲームの開発とVRゲームの開発の両方を経験されてきたわけですが、両者の大きな違いは何でしょうか?

小林: VRではまず“体験”が大事だと考えています。後ろから何かが迫ってくる迫力や、物をつかんで動かすといった、VR空間内で味わえる“体験”が素晴らしい。

 しかしゲームとして“ゲーム性”を強くしようとすると、“体験性”が薄れがちです。逆に“体験性”を強くしようとすると、“ゲーム性”が薄れやすい。この体験性とゲーム性のバランスを考えて開発するところが、VRではないゲーム開発との大きな違いです。

 今はまだ、体験性とゲーム性のどちらかに重点を置いて開発したらいいのか悩んでいます。体験性の強いコンテンツだと短時間体験しただけで終わってしまうし、ゲーム性の強いコンテンツだとVRである必要性が弱い。長時間没入できて“コレが遊びたいからHMDを買う”となるようなキラーコンテンツは、この体験性とゲーム性の両輪がそろったものだと思います。そうしたコンテンツは来年から出てくるでしょう。

――VRコンテンツの開発を通じて、現在のVR業界について問題を感じている部分はありますか?

小林: 例えばハードウエアなら、HMDの無線化ができないかと思います。ケーブルがついていると動きが制限されるので。HMDの解像度も人間の目の能力に比べればまだまだ低い。

 しかし一番の問題は、まだ問題点の議論が始まっていないことです。もう少し時間がたってVRが普及してくれば、広く一般のユーザーさんからVRはこうあるべき・こうして欲しいといった要望が出てくるでしょう。そうした問題提起と議論があってこそ、これからの進歩があるのではと思います。

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――これから、どんなVRゲームを考えていますか?

小林: 色々なジャンルにチャレンジしようと思っています。格闘、パズル、スポーツなど色々なゲームを作ってきましたが、それをさらに広げて、例えばレースゲームやFPSゲームなどを作りたいと考えています。

 現在のVRコンテンツは小規模で開発期間も短いものが中心です。今後はPCゲームやスマートフォンゲームのように、基本プレイ無料でゲーム内課金アイテムがあり、長期間遊べるようなVRゲームが間違いなく出てくるでしょう。そのための準備も進めていきます。グラフィックなどにこだわったハイエンドなVRゲームもやっていきたいと思います。

(構成/湯浅英夫、写真/シバタススム)

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