キリンビールが立ち上げたクラフトビール会社「スプリングバレーブルワリー」の社長を務めるのは、発泡酒「淡麗」、缶チューハイ「氷結」、ノンアルコールビールテイスト飲料「キリンフリー」を生み出したヒットメーカーの和田徹氏。TREND EXPO 2016に登壇する和田社長によると、クラフトビールには今後の食トレンドのポイントが凝縮されているという。
スプリングバレーブルワリー 社長
嗜好性の高い洋酒の世界からマスマーケティングへ
――キリン・シーグラムご出身なんですね。
和田徹氏(以下、和田): 昔はビールよりも洋酒が好きだったんです。リキュールとかスピリッツとかワインとかウイスキーって、少し艶っぽいというかセクシーですよね。商品としての広がりがありそうで、楽しそうに見えました。
――マーケティング担当になられたのはキリンビールに異動してからですか?
和田: その前からです。28年間、マーケティング畑にいます。市場を知るために、入社して3年くらい営業をやり、その後はずっとマーケティングをやっています。
――キリンビールへの異動は、自ら希望されたんですか?
和田: いいえ、たまたまそういう話が来たんです。洋酒は嗜好度の高いジャンルなので、面白いけれどビールのような派手なことはできませんでした。マスマーケティングで市場構造をがらりと変えるようなことや、多くの人たちの生活を変えるようなことができるチャンスだと思って、異動を快諾しました。
――ターニングポイントになった商品は?
和田: キリンビールに異動して最初に手掛けた「淡麗」ですね。今や知名度は90%以上あり、誰でも知っている商品です。発泡酒という新たな市場を作るんだという思いで開発し、その通りになりました。多くの人の生活を変えたということを実感できた商品です。目指す方向が間違っていなかったと確信でき、その自信があったので次の「氷結」ではもっとバットを長く持って、振り切れたんだと思います。
――「氷結」を作ろうと思ったきっかけは?
和田: 当時のチューハイは、おしゃれなイメージがまったくなかったんです。ヘビードリンカーのおじさんが飲むイメージでした。けれど、チューハイは飲み物としてのポテンシャルが非常に高い。飲みやすいお酒を作って、若いOLの方とか学生が人前で堂々と飲めて、それがかっこよく見えるような、これまでのチューハイというカテゴリーを様変わりさせるようなアプローチができるんじゃないかと思いました。コンサバ案から革新的な案まで幅をもって開発していくなかで、一番革新的な案でバットを振り切りましたね。既存のフォーマットを一回忘れて、これからの新しい時代のチューハイの原型を作るつもりでした。