自分のショップや会社のために商品を買い付けるのが通例のバイヤー業において、“お店を持たない”フリーランスのバイヤーとして全国を縦横無尽に駆け回る山田遊氏。国立新美術館のミュージアムショップや「Tokyo's Tokyo」「once A month」をはじめ、多くの人気セレクトショップのバイヤーを請け負ってきた。TREND EXPO TOKYO 2016に登壇する山田氏にモノを売るための方法論を聞いた。
「センスというものには昔も今も自信がありません」
――この夏は山田さんがプロデュースされた花火のセレクトショップ「fireworks」が企画する「小さな花火大会」で大忙しだったそうですね。これはどんなイベントでしょう?
山田遊氏(以下、山田): お申し込みいただいた店舗や会場に我々が出向いて、近所のみなさんに集まっていただき、fireworksの手持ち花火で遊ぶイベントです。今年は申し込みが過去最高で、全国20カ所以上の会場で開催しました。
――こうした「お客さんにとってうれしいこと」をどうやって見つけるのですか?
山田: 「お客さんになりきってみよう」というのを頭の中でよくやります。例えば店の内装を決めるときは、女性の視線の高さで中腰になって眺めたり、自分がおばあちゃんだったら、こういうモノも面白いんじゃないかなあと気持ちを想像してみたり。花火もそうです。「子どものとき、たくさん買ってしまって、最後はまとめて燃やしていたな」「子どもだったらあんなパック売り、欲しくないよな」「やりたい花火だけ欲しいよな」といった1個1個の記憶とか、他の消費者もそうだったに違いないという感覚を積み上げていきます(※1)。
――バイヤーというと「センス」が肝要なイメージがあります。山田さんはどうやって培われたのでしょうか。
山田: センスというものには昔も今も自信がありません。バイヤーは芸術家ではなくてビジネスパーソンなので、感覚的な部分よりも、経験や知識の積み重ねこそが大事だと思っています。前職ではまったく経験がないのに、いろんな仕事を投げられて、それを全部自分でやらなくてはいけなかったので、経験値を濃密に稼げたのがよかったのかもしれません。
――バイイングしたくなるような強力な商品は、どこで見つけられるのですか?
山田: 普通バイヤーさんは合同展示会やメーカーさんとの商談、ネットでモノを見つけることが多いと思いますが、みんなと同じツールで探していたら、結局はみんなと同じモノしか見つけられません。僕は5年くらい前、ある老舗のお店さんと仕事をしたときに、「もっとモノを作る上流に行かないと、いいモノや新しいモノが見つけられない」と気づきました。以来、産地を回って買い付けをすることも多くなりました。