“ブランド失墜”から復活の兆し

 ソニーは、数年前まで、かつてのブランド力を失いかけていた。それは、ソニーが闇雲にシェアを追った時期とも重なった。ソニーらしい製品が消え、価格競争に巻き込まれ、その結果、ソニー製品がたたき売られた。

 海外では、アップルの「iPod」の登場以降、全世界で高いシェアを誇っていた「ウォークマン」が低迷。液晶テレビでは、サムスンやLG電子などの韓国勢との価格競争に明け暮れた末に敗れた。さらに、リーマンショックの影響がのしかかり、海外の販売会社は、慢性的な赤字体質となっていた。

 国内市場でも同様だ。2011年7月の地デジへの完全移行に伴い発生したデジタルテレビの特需は、機能よりも価格が優先され、ここでも付加価値を前面に打ち出す、ソニーらしい戦い方はできなかった。ソニーによると、2010年度には4兆3000億円にも達した国内コンシューマAV/IT市場は、2012年度以降は約2兆円と、半分の規模で推移し続けている。そのなかで、付加価値を訴えきれないソニーは、自らのポジションを確立できないままでいた。

 だが、ここにきてソニーは、その存在感を着実に回復しつつある。例えば、欧州。ソニーによると、ソニーマーケティングの玉川勝会長が率いたソニーヨーロッパは、3年間で、液晶テレビのシェアを4%から12%に、コンパクトデジカメは14%から24%に、デジタル一眼カメラでは24%から33%に拡大させた。

 日本においても同様だ。4Kテレビで市場をリードする一方、40型以上の液晶テレビでは市場シェアは24.5%で2位、ミラーレス一眼カメラでは24.8%のシェアで2位と、いずれも4人に1人がソニー製品を選択。そして、携帯オーディオでは53.0%のシェアを獲得して首位を獲得している(いずも、2015年1~12月、BCN調べ)。

 国内外ともに、成功の要因となっているのは、販売施策の軸を高付加価値製品へとシフトさせたことだ。河野社長は、「テレビ市場を例にあげれば、技術が進化しても単価下落が激しく、結果として業界全体が成長しないということを繰り返してきた。数で業界全体を伸ばすシナリオは描きにくい。いまこそ大切なのは、使って楽しくなるような顧客体験価値を提供すること。ソニーならではの新たな価値の提案が必要だ」と語り、国内においては、ソニーならではの提案ができる「4K」「α」「ハイレゾ」の3つ製品に絞り込んだ徹底訴求を展開してきた。

 ソニーの液晶テレビ「ブラビア」は、Android搭載モデルへとシフト。HuluやNetflixなどを通じた新たなテレビ視聴を提案している。クックパッドとの連携では、フルHD画質のレシピ動画を見られるAndroidTV対応レシピアプリを提供し、テレビならではのアプリの活用方法を提案した。現在、4Kブラビアのネット接続率は約70%に達しており、「新たな顧客体験価値を提供することで、テレビを再定義している」という。技術面からの訴求にとどまらない、新たなテレビの視聴提案が鍵だ。

 また、デジタルカメラ「α」では、ソニーが持つイメージセンサーの強みを生かし、高感度、高解像度、そして読み出し速度の速さを活かし、暗所での鮮明な撮影や、決定的瞬間を捉えた映像など、これまでのカメラでは撮影できなかったような画像を楽しむことができることを訴えた。

 さらに、ハイレゾオーディオでは、ウォークマンを軸に、スマホで音楽を聴いたことがない若年層や、音楽を長年楽しむ余裕がなかった中高年層に対して、ハイレゾならではの高音質を訴求してみせた。

 このように、ソニー製品だからこそ訴求できる付加価値にフォーカスした明確なメッセージが、ソニーのシェア回復につながってきたといえる。

Androidを搭載したテレビの最上位モデル「X9350Dシリーズ」。4Kやハイレゾにも対応する
Androidを搭載したテレビの最上位モデル「X9350Dシリーズ」。4Kやハイレゾにも対応する
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AndroidTV対応の「クックパッド」アプリの画面イメージ
AndroidTV対応の「クックパッド」アプリの画面イメージ
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