名作コンテンツに共通する「三幕構成」の知られざる本質とは?(画像)
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『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第41回。

 古今東西を問わず、多くの名作コンテンツには、ある共通する構造が存在するのをご存じだろうか? いわゆる「三幕構成」と呼ばれるもので、その名の通り、一つの作品が大まかに「一幕/二幕/三幕」と3つのパートに分かれる構造のことだ。

 一幕は、いわゆる「問題提起」のパート。「○○とは××なのか?」といった問いや大いなる謎、主人公の行動の目的などが提示され、それによって観客は自然と物語に引き込まれていく。

 二幕で描かれるのは、「問題の複雑化」。一幕で設定された問題に、さまざまな角度から揺さぶりがかけられる。問いや謎は一筋縄ではいかない様相を呈し、主人公の前に立ち塞がる障害や対立、葛藤などが描かれていく。

 そして迎える三幕は、「問題の決着」だ。一幕で設定された問いや謎、主人公の目的に対する答えや一つの着地点が提示される。

 映画やドラマはもちろん、小説やマンガ、ゲームなどあらゆるジャンルの名作コンテンツは、こうした「始め/中/終わり」という三幕構造でできているといっても過言ではない。こうした物語の構造について最初に言及したのは、一説によると古代ギリシアの哲学者アリストテレスではないかともいわれている。

 さらに興味深いのは、三つの幕の作品全体に占める割合がほぼ「1:2:1」となる点だ。一幕=25%、二幕=50%、三幕=25%の割合になるのである。例えば、2時間の映画の場合、一幕は最初の30分間、二幕が中盤の1時間、そして三幕が最後の30分間に該当する。

 この「1:2:1」という比率は、作品の時間や長さが違っても基本的には変わらない。全体が30分間だろうと1時間の作品であろうと、比率は不思議と「1:2:1」になるのだ。なぜ、その割合に収斂(しゅうれん)するのかはよく分からないが、不朽の名作と呼ばれる作品を分析すると、ほぼこの割合と合致するのである。

 三幕構成は良い脚本を書くためのテクニックとして論じられたり、一方で凝り固まった伝統的スタイルのように見られたりすることもある。だが、私はむしろ、

「三幕構成は“現象”である」

と捉えている。「黄金比」や「万有引力」のように、理由までは分からないものの確かに世の中に存在する法則や自然の摂理のようなものと理解している。

 もちろん、名作の作り手が全員、三幕構成を意識しながら作品を創ったわけではない。しかし、事実として、時代を超えて語り継がれる名作は、おおむね三幕構成という構造上の特徴を有しているのだ。三幕構成が多くの観客にとって心地よく、心が揺さぶられる最もオーソドックスな形式であることは間違いないだろう。

 初めて三幕構成を知った人は、「多種多様な優れた作品が、本当に共通した構造を持つものなのか?」と疑っているかもしれない。そんな人にこそ、試しにお気に入りの作品を経過時間や内容、各要素の配分などをメモしながら見直してみることをおすすめしたい。三幕構成の構造にほぼ当てはまることに驚かされるはずだ。

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