文章の順番を入れ替えるには、大きな手間がかかる。前後の内容の整合性も確認する必要があるので大変なのだ。その点スライドは、いわばカードなので、入れ替えはとても簡単だ。整合性にもある程度は留意する必要があるが、文章の入れ替えよりは、はるかに楽だ。
PowerPointで構成を組み替えるには、2つの方法を覚えておくとよいだろう。内容から考えるなら、「アウトライン」モードに切り替えるとよい。タイトルやテキストが表示されるので、読みながら順番を替えていける(図1)。
また、表示を「スライド一覧」に切り替えると、スライドが小さく表示される。このモードでも、ドラッグでスライドの順番を自由に入れ替えられる。写真や図、グラフなどを採用したスライドの入れ替えにはこちらのモードがお勧めだ(図2)。
順番を入れ替えながら、不要なスライドが見つかったら削除していく。また、グラフがずっと並ぶなど、メリハリがない場合には見た目の変化も心がけて変更していくとよい。
前章で説明したプレゼンの全体像を示すアジェンダや位置を示す図は、順番の入れ替えが完了して、構成が固まってから作るようにする。
タイプ別の構成の作り方
プレゼンには、大きく分けて2つのタイプがある。商談や会議などでのプレゼンは、10~20分相当のスライドを用意すればよいだろう。5~8枚程度が目安だ。正味の時間が50分程度でも説明する時間は20分前後が望ましい。残りの時間は相手の意見を聞いたり、コミュニケーションに充てる。
このタイプでは、スライドの枚数が少ないので、「スライド一覧」で全体を見渡しながら順番を考えていく(図3)。
説明会や講演、授業などのスライドは、時間いっぱいまで一方的に説明することになる。このケースでは「アウトライン」モードに切り替えて、必要な内容を片っ端から箇条書きにしていく(図4)。要素が出そろったら、順番を考えたり、「Tab」キーを押してスライド内の箇条書きに切り替えたりする。
どちらの方法でも、スライドの構成と枚数を決めてから、各スライドの内容を作り込んでいくのがコツだ。
内容の詳細を書くのではなく、どのスライドで何を伝えるかを考慮して、まずは大枠を作っていく。この手順を踏まないと、やたらに詰め込んだスライドとスカスカのものが混在するなど、全体の構成がイマイチになりがちだ。
ちなみに、スライドの枚数は説明3分で1枚を目安にするとよいだろう。30分の説明なら10枚用意する。話し上手なら枚数は少なくてもかまわないが、口下手なら逆に多めに作ると安心だ。
テーマと配色を決めるノウハウ
プレゼンのスライドは、“読ませる”より“見せる”のが特徴なので、デザインやビジュアルにも気を使っていきたい。PowerPointは、まったく白紙の状態からデザインを作成することもできるが、あらかじめ用意されている「テーマ」と呼ばれるデザインテンプレートを使うのが手軽だ。
内容が完成した後でもテーマを切り替えると見栄えをがらりと変更できる(図5)。配色は、完成後に切り替えてもほとんどの場合問題ない。各テーマごとにいろいろな配色のバリエーションが用意されていて、見た目の印象を変えられる。もっとも、濃い色の塗りつぶしを薄い色に変えるのはかなり大変だ。「新しい配色パターンの作成」でできなくはないのだが、最初から目的に近いデザインのテーマを選ぶほうが楽だ。
テーマも配色も変更可能、ただしチェックは入念に
ただし、デザインのテーマを切り替えると、飾りによっては、文字が重なるなどして見づらくなるケースがある(図6)。テーマに合わせて内容を作り上げたら、後で変更しないのが安心だ。もし変更した場合には、すべてのスライドでレイアウトが崩れていないか子細にチェックしよう。説明の文字がはみ出していて、見えなかったりするとプレゼン資料として失格だ。
テーマの選び方はプレゼンの成否を大きく左右することもある。プレゼンの目的や内容と照らし合わせながら入念に決めよう。
テーマによっては、スライドに飾りがデザインされている。見た目に格好良く感じるものだが、気軽に使わずに本当に必要かどうかを、もう一度考えてみよう。
そもそも、スライドで見せたいのはキャッチや箇条書き項目、グラフ、写真などだ。そこに無意味な飾りがあって、目を奪われてしまうなら、本末転倒だ。説明を聞かずに「何の図だろう」と考えている人が1人でもいたら失敗につながる。
また、飾りがある分だけスライドの有効エリアが狭くなる。文字やグラフなどを重ねるとデザインが台無しになるし見づらいものだ。特別な理由がないなら、大きな飾りの入っているテーマは使うのを避けたほうがよい(図7、図8)。
プロジェクターで投映すると、パソコンの画面に比べて全体のコントラストが落ちるのが普通だ。薄い水色や黄色などはほとんど白に見えてしまう。従って、微妙な色合いは無意味だと思ったほうがよい。また、文字の読みやすさを重視するなら、背景を黒や濃い色にして文字を光らせたほうがよい(図9)。光っている文字は膨張して読みやすくなる。背景が白で文字が黒など、紙で見やすい配色は、投映すると背景が明るく光るために、文字や図形の形がつぶれやすいのだ。
逆に、タブレットやテレビは画像が見やすい。大画面テレビなどのディスプレイで表示するなら、パソコンと同様に淡い色もチェックできる。見やすさはこちらのほうが上だが、画面の縦横比には注意したい。一般的なテレビは、16対9のワイドが普通なので、スライドを作る段階で合わせておくべきだろう。
使わないほうがよいテーマ
このような淡い背景に文字の色が薄いテーマは、敬遠したほうが無難だ(図10)。しかもタイトルが細い書体なのもいただけない。
パソコンで作成しているときは、とてもセンス良く見えるのだが、プロジェクターで遠く離れた位置から見ると読みづらいのだ。
また、カラーで印刷しても読みにくく、ファクシミリで送信すると文字がつぶれてしまうことも。
個人的には、背景は無地か布地のようにパターンが気にならないデザインや、グラデーションなどを使うようにしている。背景に強い柄が入っていると文字が読みづらくなるケースが多いからだ。